Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

N01028cover_o_20200422135301

「Winny」も「天才プログラマー」も「金子勇」も盛り込んで検索ワードを意識しすぎな小説が、2020年4月24日にインプレスR&Dから出版されることになった。

 

インターネットウォッチの紹介記事

インプレスR&Dのリリース

PRタイムのプレスリリース

 

これは、壇弁護士の事務室のスピンオフブログ「アターニアットロー」を時系列に整理して、小説として書き直したものである。

執筆中は、当時のあれこれを思いだしては、怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり大変であった。

ブログからの移植という割には、出版まで数年かかっている。

途中で担当者も出版社も複数回変更された。ヒロインを登場させろとか、さび前の歌みたいに結末を最初に書いてインパクト勝負だとか、金子の内心を描いてないから小説として成立してないとか、業界人が読みもせずに業界風を吹かす発言にはヽ(#`Д´)ノな感じであった。
しかし、Winny事件や金子勇という人物について事実をそのまま伝えるという、根本のところはぶれずに書けたと思う。

ところで、この小説、元が無償で公開されてるんだからブログ見たらいいじゃんと言われかねない。しかし、既にアターニアットローを見た人でも楽しめるようにいろいろ工夫しているので、そう言わずに、小説版も見て欲しい。

Winny事件は、現在、映画化の企画もあるようである。私の役を誰がやるのかをいつも聞かれるが、私は知らない。。。。というより、その質問が多すぎて辟易している。

最後に、出版の際には紙面の都合で乗せれなかった方々にスペシャルサンクスをば(追加予定)。

坂和宏展(弁護士)さん 彼の「小説を読みたい」という一言がなければ、途中で止めてたと思う。ありがとう。

山本祐規子(元ロースクール生)さん ゲラの確認、示唆に富む指摘ありがとう。

 

【販売サイト】

ネクストパブリッシング

 

amazon

楽天

 

honto

Winny税込1,760(2020/04/22時点)

 

紀伊國屋書店

アップルブックス

ブックウォーカー

Reader Store

グーグルプレイ

BOOKLIVE

 

| | コメント (0)

2022/10/28

勝手にPR~変タイ寿司

神奈川県川崎市は溝の口にあるタイ料理のアレンジを取り込んだお寿司「変タイ寿司」がうりの「すがひさ」がEXILE MATSUこと松本利夫さんのYoutubeちゃんねるで取り上げられていた。MATSUが川崎市市民文化大使に就任した関係であろう。

すがひさの大将とは、フェイスブックのお友達であるので、今回は頼まれてもないのに勝手にPRである。

 

 

「変タイ寿司」というとなんかテレビ受け悪そうだから、名前変えようかなと言ってたので、「タイ前寿司」とかを提案したが、結局、短くて解りやすい「変タイ寿司」で続けることにしたようである。

この変タイ寿司は、食べるとびっくりするくらい違和感がなくて、一部のものはこういう食べ方は実は古い江戸前であったんじゃないの?とかバンコクでは普通にあるんじゃないの?と言いたくなるような味である。

とある弁護士が、友人から食った物ないもの食わせろと言われて大将に無理言ってひねり出されたものとは思えない。

ここの大将、普通の寿司握ってるときも、小手返しとか縦返しとか寿司によって握り方がごちゃごちゃである。

大将自身の所作の変態さも見逃せない。

いつもは、普通のお寿司で、3日だけ変タイ寿司なので予約必須である。

繰り替えずがステマではない。

| | コメント (0)

2022/10/25

しょせん他人事ですから ~って掛け軸をいいっていう依頼者はおらんくね?

 

先日、しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~ 1 の紹介記事を書いたところ第2巻を献本いただいた。

1の紹介記事

 

というわけで、今回も律儀に紹介記事である。

第二巻も芸能人パカ弁の清水陽平弁護士の監修である。

清水弁護士のコラム付である。

今回は、芸能人の誹謗中傷を巡っての闘いのようである。

実は、この手の仕事をしていると、芸能の仕事をしている人からの相談もある。

ただ、実際は、第2巻に出てくるような超ポジティブな芸能人は、どこにおるねん??である。

大抵の芸能人は、あんなメンタルモンスターではない。

むしろ、ボロボロな状態でお会いすることが多い。

事件が終わって、依頼者が元気に活動しているのを見るととても嬉しい。

全く連絡のない元依頼者をネットを見ていて「1回くらいその状態で事務所に挨拶に来いや!」と言いたくなることもある。

 

ただ、それが普通なのかも知れない。

人生において、どん底のときに会うものが、弁護士なのであるから。

 

というわけで、宣伝しておいたので第3巻もお待ちしております。

 

| | コメント (0)

2022/10/15

Silent

Silentというドラマが評判のようである。

高校卒業したころから聴力が落ちて聴覚障害者になった主人公の冬ソナな話しのようである。

 

ところで、聴覚障害者というと、私の事務所には日本で初めて聴覚障害者でありながら司法試験に合格した弁護士がいる。

私の弁護士としての姿勢に最も影響を与えた人物である。

ハンディキャップがあっても人の為に闘うべきこと、また、闘えることを身を以て教えてくれた。

というわけで、私は、日常的にカタコトな手話を使う機会があったのである。

 

で、このドラマは、ジャニーズの若手俳優がする手話が評判なので拝見した。

高校卒業するまで喋れたんだったら、今でも喋るくらいは出来るやろ?これは、むしろ、後々のための伏線か?

とかいうのは、彼の端正なルックスの前では野暮なようである。

 

ドラマの手話のシーンに出てくる日本語のスーパーと、手話で表現している内容が微妙に違っていたりいるのだが、私的には両者のニュアンスの違いが面白い。

この点については、手話を解説している動画がYoutubeにもあるので是非見て、そのニュアンスを感じ取って欲しい。

私的には、大阪で使われる手話とドラマで使われる手話が少し違っているので、それを調べながら見ている感じである。

 

というわけで、いつもの勝手宣伝である。ステマではない。

| | コメント (0)

映画『Winny』

Winny事件を題材にした映画のプレスリリースがあった。

2023年3月に公開される予定である。

公式サイトも出来たようである。

640

東出さんや三浦さんの演技はそれぞれのアプローチで素晴らしく、「演技という世界のアスリート」と呼ぶに相応しいものであった。

 

公式サイトには私の名前が結構でているようであるが、映画の主人公として自分の名前を見るのはとても奇妙な気持ちで、同性同名の他人を見ているというのが偽らざる気持ちである。

私にとって、Winny事件は実際に体験したことであり、決して幸せなストーリーでは無い。ネット史上最大の事件かどうかは人の評価なので私にはわからない。

まわりの興奮に乗り損ねている私がいる。

そして、私に、東出さんや三浦さんのサインをもらってくるよう頼んでくる奴がでてきたことを少し面倒くさく思っている。

 

| | コメント (0)

2022/09/01

第24回WILL

Will_20220901125401 

 

今年もWillの季節がやってきた。というわけで、宣伝である。

Willとは、少年犯罪被害当事者の会のイベントである。

少年犯罪の被害者の遺族が中心となって結成された会で、私が司法修習生のときにはじまったのでもう24回である。

事件はいつか終わる。人々の記憶からも消えて行く。でも、子を思う親の心は消えない。

だからwillは続いていく。

少年犯罪被害当事者の会
大阪 大阪
20210日(土)午1時から
大阪⻄区ター(大阪市⻄区北堀江 4-2-7
大阪メトロ千日前線・⻑堀鶴見緑⻄⻑堀駅3号・7号出口から徒歩3分
500円
200人(先着順※新型コロナ感染症拡大の状況により、人数制限する場合があります。
少年犯罪被害当事者の会事務 代表 るり子 TEL 06-6478-1488

| | コメント (0)

2022/08/31

しょせん他人事ですからって取材で言った奴って凄くね?

タレント弁護士の清水陽平先生が監修の

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~

のコミックが発売された。

出版記念ということで、私も一冊献本頂いたので、お礼に宣伝である。

タイトルにもなっている「しょせん他人事ですから」は、清水先生への取材の際清水先生がおっしゃったのが切っ掛けだそうである。

というわけで、依頼者に寄り添わない、相手の嫌なことを喜んでする、ほぼほぼサイコパスな弁護士は、清水先生がモデルなのかも知れない。

いや、実際の清水先生は、もっとミーハーなのでちょっとだけちがうか。

わざわざ、オビに主人公と角度あわせたような顔写真入れる清水先生に感涙である。

Obi

 

それは、さておき、このコミック、弁護士ものにありがちな「んなわけあるか!」がほとんど無いかなりリアルな内容である。

ないことも無いか。コミックではパラリーガルの人が登場しているが、パラリーガルというのが何物か不明である。ちなみに、パラリーガルが弁護士を遮って自分の意見を言いだしたら、その日に解雇しない方が不思議なレベルの話しではある。ただ、これは弁護士の奇異さを際立たせるための演出なんだろう。

ちなみに、個人的には、謎の専門用語を語って、「ネットに強いのにそんなこともわからねぇのか!」という相談者があるあるであった。

ホントにこういう相談者は多い。私も「日本語で説明してもらえます?」と一度言えたら良いのにと苦笑である。

一般の方にはもちろん、弁護士が見てもとても楽しめる内容になっている。

 

ところで、清水先生を出たがりって削って、本の売れ行きはともかく本業の機会ロスになるのではないかって?

気にしない気にしない。それそこ、しょせん他人事ですから。

お粗末。

| | コメント (0)

2022/08/13

ふくまてれび

お盆休みの中、1つの動画を拝見した。

 

 

ここに出てくる福間貴斗さんという人は、大阪市福島区で将棋バー「ルゥク」を経営している人である。

ルゥクには何度か行かせてもらったが、彼は、いつも周りに気を配り、笑顔が絶えず、誰とでもそつなくコミュニケーション出来る、男前である。私にはない要素をたくさん持っていている。もはや、うらやましくなりようもない。

こういう奴にはせめて将棋くらいは勝ちたいのであるが、彼は将棋も強い。元奨励会なのだから当たり前なのだが、駒落ち指導対局でもあまり緩めてくれない。これはすこし不満である。

この動画は、いつもそつない対応で自分を見せようとしない彼が少しだけ本心を覗かせてくれるものであった。

私は、何気なく見ていたが、彼が述べた一言

なんで報われないんだろう

に心を打たれた。

 

私は、彼が努力をしていないから報われなかったと言っているのではない。そんな訳はない。

努力なんて人の何倍もしているだろう。当たり前のことである。今更、言うまでも無い。

人一倍の努力をしても、夢がかなわなかったのである。

世の中には、自分がいかに努力したかを語りたがるおっさんが沢山いる。

しかし、自分でペラペラしゃべれるようなのに大した奴はいない。

彼が、自分のした努力に触れず、なんで報われないんだろうと淡々と言った姿に、彼が積み上げてきた努力や苦悩や経験したものの重さを感じたのである。

もしこの世に神がいるとしたら、神とはとっても不平等を愛している存在のようである。試練を与える割には結果を与えることを忘れがちである。

ただ、確かに、努力が報われた人生は素晴らしい。

しかし、報われなければ人生に意味が無いのではない。現に、彼の姿には尊敬の言葉しかない。

たとえ報われなくとももがいていく人生も捨てたものではない。そう思った。

 

| | コメント (0)

2022/05/21

護送金と電子計算機使用詐欺罪

 山口県阿武町が誤って振り込んだ臨時特別給付金4630万円の一部をオンライン決済サービスで決済代行業者の口座に振り替えた事案で、男性が電子計算機詐欺容疑で逮捕された事案が話題となっている。

 なんで振り込んだの?という疑問はおいておいて、この事件で何罪が成立するの?ということが議論されているのを良く見る。しかし、弁護士であってもけっこうおかしなことを言っているので驚いている。

 というわけで、現時点で日本一詳しい疑律の解説を試みることにした。

 

まず、この手の、人の金を勝手にした系の罪は、横領、業務上横領、背任、窃盗、占有離脱物横領、詐欺、電子計算機使用詐欺の成立を検討する。強盗や恐喝は暴行・脅迫が必要なのであまり考えない。

次に、この手の罪は、銀行債権をどうこうして利益を得たかという話しと、銀行の管理している現金をどうこうして利益を得たかということを別途考えなくてはいけない。

ちなみに、もし、委託信任が無くても債権であっても成立する横領罪があれば、本件の処罰に一番ぴったりなのであるが、そんなけしからん罪は現行法には存在しない、で、それぞれ、ちょっとずつ無理な解釈をどう埋めるかが問題になるのである。

まず、業務上横領と背任は、大ざっぱに言えば人の為に業務に従事する者の犯罪なので、単に誤振込された事案では難しそうである。


(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。


(背任)

第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 ただし、誤振込されても、返金義務を負うのでその範囲で事務処理をするとか言いだしたら背任になる。

 本件では、背任で起訴するのは検察にとってハードルが高いであろう。

 


(横領)

第二百五十二条
 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

 次に、業務上横領と横領は、物についての罪である。銀行預金は物ではないので、現金を物と考えることになるが、一般には銀行にある現金を預金者が占有しているとは考えられていない。なんでもありの刑事裁判所もさすがに物と債権の区別を混同することはない。

 

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

(遺失物等横領)

第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

 窃盗であるが、他人の財物とあり、これも有体物と考えられている。特殊詐欺でクレジットカードを受け取って不正にATMから出金したような場合に、銀行が占有する現金に対する窃盗罪を認めるのが一般的である。で、現金は銀行が占有しているので占有離脱物横領も認めにくい。

 


(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
 
 詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させることを要する。1項は財物で、2項は不法な利益を得ることを要する。詐欺罪は、有体物に限られないのである。ただ、人に対する欺罔行為であることを要するので銀行の窓口から不正に出金したような場合は銀行に対する詐欺罪を認めることが多い。
 ただ、銀行口座は自分のなのに銀行を騙したことになるのか?という疑問があるかもしれない。
 この点、民事的には、最判平成8年4月26日が、振込を受けたものと振り込んだ者との間に、法律関係が無いような場合でも、銀行との関係では振込を受けたものの預金となるという(これは荒すぎる説明か?)を認めている。
 じゃあ、自分の預金の権限の範囲だから詐欺にならないじゃないかとおもうかもしれないが、そこは血に飢えた刑事裁判所である。最判平成15年3月12日(刑集57巻3号322頁)が過誤払いされた預金の詐欺罪を認めているのである。
 銀行にとって,払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは,直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。これを受取人の立場から見れば,受取人においても,銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として,自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には,銀行に上記の措置を講じさせるため,誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。社会生活上の条理からしても,誤った振込みについては,受取人において,これを振込依頼人等に返還しなければならず,誤った振込金額相当分を最終的に自己のものとすべき実質的な権利はないのであるから,上記の告知義務があることは当然というべきである。
 そうすると,【要旨】誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求することは,詐欺罪の欺罔行為に当たり,また,誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから,錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する

要するに、自分の預金であっても、銀行の忖度したいお気持ちのために告知義務があって、その告知義務に反して払い戻しを受けた場合は詐欺であるということのようである。

私は、これは刑事と民事の逆転現象であって、ここまで処罰の対象にするのは反対である。

そもそも、過誤払いのときに、送金者に振込返すとか、窓口で引き出して振込人に渡す等の行為にまで犯罪とされるべきではない。上記の平成15年判決を見る限り、これらの行為まで処罰することにならない理由が全くわからない。

そして、現在、人に対するものであることを要すると思われていた偽計業務妨害の「偽計」について、人に向けられる必要はないとした高裁判決があるので、機械を通じて間接的に人の意思に反するような処理をさせた場合にも2項詐欺を認めるという構成を裁判所が言いだしてもさほど驚きはしない。

ただ、本件で詐欺罪で起訴する可能性は少ない。そこで無理するなら電子計算機使用詐欺で無理した方がハードルが低いだろうというのが一般の感覚だからである。

 

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

この電子計算機使用詐欺はもともと、機械に対して騙すという行為は観念しにくいので立法された法律である。

偽造テレフォンカードをつかった様な場合、人を騙したわけではないし、利益を得ただけで窃盗をしたわけでもないので処罰できないのではないかという問題があり(なお、最判平成3年4月5日は変造有価証券の罪をムリクリに認めているので不可罰というわけではない)、機械に対する詐欺のような行為を行って利益を得る行為を処罰するために昭和62年改正で規定されたのである。

で、作ったはいいけど、携帯時代の到来とともに、どこに行くのか解らない規定になっている。

この電子計算機使用詐欺は電子計算機を誤作動させることを念頭に規定されているが、恐ろしく条文がややこしい。

 

 {

   { 人の電子計算機に

     { 虚偽情報

       or

      不正な指令

      }

     を与えて財産権の

     { 得喪

       or

       変更

      }

     に係る不実の電磁的記録を作り

    }

   or

   { 財産権の

     { 得喪

       or

       変更

      }

     に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の様に供して

   }

 }

 財産上不法の利益を

  { 得

    or

    他人にこれを得させた

   }

という構成になる。

 

本件では、不実の電磁的記録を作るか、虚偽の電磁的記録を供する場合に該当するかが結構問題になりそうである。

本件は、他人のキャッシュカードやオンラインバンキングを使うことが問題になっているわけではない、誤って大金を振り込んでしまったので、返金して欲しい者がいるということであり、そういう人の気持ちを振り込まれた側の銀行が忖度することを法的にどう評価するかである。 

一般には虚偽とは、真実ではない場合をいうので、自己の正当な権限で送金した場合は含まないと考えそうである。不実というのも、事実ではないという場合に該当するので、自己の正当な権限で送金した場合は含まないと考えそうである。

とすると、電子計算機使用詐欺は成立しないというのが素直な解釈であり、今後の立法により解決すべしということになりそうである。

しかし、「不正な指令」は背景事情を含め総合的に考えると言う立場をとり、さらに、「不実」とは背景事情を知っていたら銀行が対応を拒否したかもしれない場合を広く含むとか「虚偽」は銀行が忖度できないような事情を広く含むという見解をとれば本件で電子計算機利用詐欺罪の成立が可能となる。

 

以上をふまえて私見である。

「不正」と「不実」は、機械の銀行職員やさらに向こうの誤振り込みしたおじさんかおばさんのお気持ちまで含めて総合衡量するという立場であれば罪の成立が可能かも知れない。しかし、そういうものまで虚偽とか不実に含めるのは構成要件を過度に曖昧にさせるので反対である。
 

電子計算機使用詐欺罪の成立を認める立場の方で、平成15年判決をパラレルにするという人が多いが、通知義務を認めながら通知しなかった点に欺罔を認めるのであれば、ATMで引き出して、振込人に手渡す行為も処罰の対象になりかねない。しかし、本件だけを有罪にする理屈を提示している人は皆無である。私は、平成15年最高裁を含めても、相手は機械なのだから誤った振込みがあった旨を通知すべき信義則上の義務なんてものは無いし、通知する方法はないと思っているので、電子計算機使用詐欺は成立しないという立場である。

そして、不可罰がおかしいというのであれば、立法で解決するのが民主主義であり法治国家と思っている。

 

ただ、血に飢えた刑事裁判所がそう考えるかは別の問題で、本件で電子計算機使用詐欺を認める可能性は高いと思っている。

 

で、この男性であるが、何百万円どころか自分の人生までベットしてのギャンブルになったようである。ただ、かなりのハイリスク・ローリターンということは否めない。

| | コメント (1)

2022/01/24

コインハイブ事件最高裁判決

ウェブサイトを閲覧した人のパソコンの処理能力を利用して、仮想通貨(暗号資産)のマイニングをする「コインハイブ」(Coinhive)のスクリプトをサーバに保管したことが不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に該当するかが争われた事件で、最高裁判所第一小法廷(山口厚裁判長)が2022年1月20日、2審の東京高裁判決(栃木力裁判長)を破棄し、無罪とした横浜地裁判決(本間敏広裁判長)の判断が確定することになった。

私は、もともと、平野先生のファンで

コインハイブ事件高裁判決@判例時報

を記事にしたり、学会で取り上げたり、いろいろ追っかけみたいなことをしているが、実は、高裁で逆転有罪判決となったことに憤りを覚えて上告審に弁護人として参加していたので、この事件については、まぁまぁ、事情通である。

 

判決文は既に、裁判所のホームページにアップされている。


原判決を破棄する。
本件控訴を棄却する。

はあまり見慣れない主文である。被告人の無罪が書いていないのに違和感があるかもしれないが、1審が無罪なので控訴を棄却したら無罪なのである。

今回の最高裁判決は、

反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。


また,不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。

と基準を示している。

反意図性については、一般の使用者が認識すべきという基準で1審2審につづいて肯定している。

しかし、裁判所が一般人の考えを理解することは出来ないだろうし、ソフトウェアクリエイターにとって裁判所の語る一般人は起訴されてみないと何を考えているか分からない人なので萎縮的効果たっぷりである。実際に、裁判所が語る一般の使用者とやらは他人にとても厳しい人のようである。

私はこの基準に不満である。

他方、最高裁は、不正性については否定している。社会的に許容し得ないとは言えないらしい。一般の使用者が認識するべきものと社会的に許容出来ないものってそんなに異なるのか?という疑問はさておき、社会的に許容し得ないかという基準も非常に予測困難である。実際に、ほぼ同一の基準で職業裁判官の判断が分かれたようなあやふやなものである。社会とは人によってとらえ方がまちまちなようである。

というわけで、コンピュータウイルスの罪は、起訴されて有罪かどうかがわかる

10万円ガチャ罪

になったのであるが、有罪かどうか予想困難なのは検察も一緒なので、今後、ウイルス罪が謙抑的に運用されるようになったらがんばって弁護した甲斐があったというものである。

 

今、私の心の中にあるのは、無罪になったことへの安堵感と、主任の平野敬弁護士や若手の先生方の勝利への飽くなき執念を見せてもらえた喜びと、事件が終わったことの一抹の寂しさが入り交じった複雑な思いである。

もちろん無罪という結論は何よりも重要である。

人の人生が代わる瞬間の喜びは何物にも代えがたい。私は、未だこれに勝るものを知らない。

しかし、それは一瞬のことである。今後、このような喜びを感じる機会が無いかも知れないと考えると少し寂しいのである。

もしかしたら、無罪に向けて闘っている時間が、自分にとっては貴重な時間だったのかもしれない。

これは、もはや、ジャンキーの世界である。

今回の最高裁無罪判決で、幸運にも簡裁無罪、地裁無罪、高裁逆転無罪、最高裁逆転無罪、再審無罪という異なる無罪を経験することができた。刑事専門弁護士というわけでもないのに貴重な経験である。

やはりジャンキーの世界である。

無罪弁護ロイヤルストレートフラッシュということで、酒の席での話題に使わせてもらおうと思っている。

| | コメント (0)

2021/12/19

10年

12月19日が来た。

2011年12月19日にWinny事件の最高裁決定が出て、もう、10年になる。

いつの間にか10年である。最近のような気がする。

事件のことを思い出しながら、今日という1日を過ごしたいと思う。

 

| | コメント (0)

«じょいんとあくしょん