Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

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「Winny」も「天才プログラマー」も「金子勇」も盛り込んで検索ワードを意識しすぎな小説が、2020年4月24日にインプレスR&Dから出版されることになった。

 

インターネットウォッチの紹介記事

インプレスR&Dのリリース

PRタイムのプレスリリース

 

これは、壇弁護士の事務室のスピンオフブログ「アターニアットロー」を時系列に整理して、小説として書き直したものである。

執筆中は、当時のあれこれを思いだしては、怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり大変であった。

ブログからの移植という割には、出版まで数年かかっている。

途中で担当者も出版社も複数回変更された。ヒロインを登場させろとか、さび前の歌みたいに結末を最初に書いてインパクト勝負だとか、金子の内心を描いてないから小説として成立してないとか、業界人が読みもせずに業界風を吹かす発言にはヽ(#`Д´)ノな感じであった。
しかし、Winny事件や金子勇という人物について事実をそのまま伝えるという、根本のところはぶれずに書けたと思う。

ところで、この小説、元が無償で公開されてるんだからブログ見たらいいじゃんと言われかねない。しかし、既にアターニアットローを見た人でも楽しめるようにいろいろ工夫しているので、そう言わずに、小説版も見て欲しい。

Winny事件は、現在、映画化の企画もあるようである。私の役を誰がやるのかをいつも聞かれるが、私は知らない。。。。というより、その質問が多すぎて辟易している。

最後に、出版の際には紙面の都合で乗せれなかった方々にスペシャルサンクスをば(追加予定)。

坂和宏展(弁護士)さん 彼の「小説を読みたい」という一言がなければ、途中で止めてたと思う。ありがとう。

山本祐規子(元ロースクール生)さん ゲラの確認、示唆に富む指摘ありがとう。

 

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2021/01/07

彼岸過ぎまで

先日、三重県志摩市の飲食店で禁止されているヒガンフグの皮を提供したことで、女性客が食中毒の症状を訴えたという記事を見た。

記事

ただ、ふぐというと何となく危ないというだけで、どのように規制されているのか良く分からない人が多いと思われる。

そこで、日本で数少ないふぐ処理登録者(ふぐ調理師)兼弁護士の私が解説してみたい。

 

まず、食品衛生法は有毒食品の販売等を禁止しており有毒部位を含むふぐも有毒部位を含むので6条の禁止対象に該当するとされている。

これに反すると営業取消しや罰則もある。


食品衛生法
第六条 次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの。ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。
第五十五条 都道府県知事は、営業者が第六条、第八条第一項、第十条から第十二条まで、第十三条第二項若しくは第三項、第十六条、第十八条第二項若しくは第三項、第十九条第二項、第二十条、第二十五条第一項、第二十六条第四項、第四十八条第一項、第五十条第二項、第五十条の二第二項、第五十条の三第二項若しくは第五十条の四第一項の規定に違反した場合、第七条第一項から第三項まで、第九条第一項若しくは第十七条第一項の規定による禁止に違反した場合、第五十二条第二項第一号若しくは第三号に該当するに至つた場合又は同条第三項の規定による条件に違反した場合においては、同条第一項の許可を取り消し、又は営業の全部若しくは一部を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる。
第七十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
 第六条(第六十二条第一項及び第二項において準用する場合を含む。)、第十条第一項又は第十二条(第六十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
この「人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。」がポイントで、適切なふぐを適切に処理して可食部位のみとしたふぐについては対象外となる。

フグの衛生確保について

昭和58年12月2日環乳第59号

各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長宛

厚生省環境衛生局乳肉衛生課長通知

1 フグについて、これまでに得られた知見等を基に可食部位等を明らかにしたことに伴い、今後は、次に掲げるフグ又は部位は、食品衛生法第6条第2号本文に該当し、かつ、同号ただし書に該当しない食品として販売等が認められないものとして取り扱われたいこと。ただし、(1)から(4)までに掲げるものにあっては、個別の毒性検査によりその毒力がおおむね10MU/g以下であることを確認した部位のみを販売等する場合は、この限りでないこと。

(1) 局長通知の別表1及び別表1の2に定める可食部位以外の部位(同通知別表1に掲げる種類のフグの卵巣及び皮であって、同通知別表2の塩蔵処理が行われ、又はその原料として用いられるものを除く。)

(2) 日本の沿岸域、日本海、渤海、黄海及び東シナ海で漁獲されるフグであって、局長通知別表1及び別表1の2に掲げる種類以外の種類のフグ

(3) 岩手県越喜来湾及び釜石湾並びに宮城県雄勝湾で漁獲されるコモンフグ及びヒガンフグ

(4) (2)の海域以外で漁獲されるフグ

(5) 一般消費者に対して未処理で販売されるフグ

S

で、ヒガンフグの皮は可食部位ではないので、食品衛生法違反で営業停止ということになるのである。

ふぐの皮は人気のようであるが、皮まで食べれるふぐはハリセンボン系の食える訳ねぇを除けば数種類しかない。

というよりフグのサメ皮引くのってホントたいへんなのよ。。。

 

ところで、ヒガンフグを私は食べたことがないが、フォロワー400万超の人気youtuber「気まぐれクック」でも取り上げられてることから、愛知県周辺では結構とれるフグのようである。

 

ふぐの毒は種類や部位や季節や個体によって毒量に差があるため、皮なら大丈夫と油断していたのかもしれないが、落とし穴は意外とこういう所にある。

ヒガン食って、自分がネハンに行っては元もこもない。

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2020/12/25

袴田事件最高裁決定

袴田事件について、最高裁第3小法廷が、再審を認めなかった高裁の決定を取消したとの報道を目にした。

知らない人もいるかもしれないが、袴田事件とは、1966年に静岡で発生した強盗殺人放火事件で死刑判決を受けた袴田さんが冤罪を訴えて再審請求している事件である。

1981年に申立した第1次再審請求は地裁、高裁、最高裁と再審を認めなかったが、2008年に申立てた第2次再審請求は弁護人の努力の甲斐あってか2014年3月27日に死刑及び拘置の執行停止並びに裁判の再審を命じる決定がなされたのである。しかし、検察がこれに即時抗告して2018年6月11日に高裁が再審決定を取り消す驚きの決定をした。そこで、弁護側が最高裁に特別抗告を申し立てていたのである。

今回の決定は、さっそく裁判所のHPに掲載されている。

決定は、再審で何が争われていたか良く分かるものとなっている。

争点は、公判開始後の1967年に味噌製造工場の味噌タンク内で発見された血染めの「5点の衣類」に関する鑑定とみそ漬け実験の是非である。
要するに、判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」は袴田さんが犯人である証拠か否かである。

最高裁の多数意見は、本田教授の鑑定については信用性に乏しく新証拠とはならないものの、5点の衣類が発見された当時の実況見分調書等には血痕の色について「濃赤色」、「濃赤紫色」、「赤褐色」等の記載があるにもかかわらず、本当に犯行後からみそに漬かっていたのなら発見された時点では血痕は変色しているはずであるとして、高裁にその点について審理をするために高裁に事件を差し戻すというものである。

これについては、林景一、宇賀克也の両裁判官の反対意見があるが、これは、本田鑑定の信用性を肯定するとともに、再審事由ありと認められるのであるから、差し戻しをせずに再審決定をするべきというものである。

意見の違いはあるものの、高裁決定が誤っているということについては、第三小法廷が満場一致のようである。

ちなみに、知ったようなことを言ってるが、私は、この事件には関与していない。

私は、心の病にかかっていてろくに会話出来ない状態の袴田さんにお目に掛かって心を痛めた1人である。

私の私見は、メイラード反応以前に、衣類の件だけでも、知る限りツッコミどころ満載なので、さっさと再審決定して、少しでもでも袴田さんが安らかに暮らせるようにするべきと思っている。しかし、あの高裁決定が覆されたことについては、一方的に我がことのように喜んでいるところである。

同時に、冷静にこの決定を読んだとき、高裁決定程度の狂った判断をする裁判官は日本では珍しくとも何ともないなという、暗雲垂れ込める印象ももったところである。

この件、ニュースにも多く取り上げられているようである。

ただ、高裁で再審開始決定を取り消した大島隆明裁判官も、検察官の立場からの法医学を実践されておられ私自身も痛い目にあったことのある鈴木廣一教授等にもまったく触れられていないのは少し不満である。

袴田さんが失ったものを考えたとき、この最高裁決定は決してバンザイだけではないはずである。被告人がもっとも安易に扱われる刑事司法。被告人の人生を歪めても誰も責任をとらない刑事司法。

日本のチート刑事司法の構造を理解するには、もう少し踏み込んだ理解が必要である。

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2020/12/22

実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書

日本弁護士連合会から、「実効的な発信者情報開示請求のための法改正等を求める意見書」が2020年12月18日付けで総務大臣及び法務大臣宛てに提出された。

これは、発信者情報開示制度があまりにも不味い点について改善を求めるものである。

日弁連は、これまで、

消費者の救済のための発信者情報開示制度に関する意見書(2010年)

プロバイダ責任制限法改正についての要望書(2013年)

「プロバイダ責任制限法検証に関する提言(案)」に対する意見書(2013年)

と事あることに、発信者情報開示制度の問題点を指摘し、被害救済の為に実効性あるものとするよう改善を提言してきた。

もはや、私のライフワークになろうとしている。

しかし、通信の秘密を教義とする総務省はまったく応じようとしない。

 

テラスハウス事件を切っ掛けに、注目を受けた発信者情報開示制度の問題点であるが、

総務省は、テラスハウス事件のすこし前から「発信者情報開示の在り方に関する研究会」という審議会を開催して、先日、最終とりまとめ案を出した。

最終とりまとめでは、新しい手続きを創設するという方向が示されている。

これは、被害者があまり関与しない方向の非訟手続きのようである。

しかし、研究会の議論をみても、その新しい手続きとやらで、誰がどのような方法で発信者を特定していくのかわからない。

研究会の委員の方々は、確実に発信者を特定できる方法と情報というのが予め分かっていて、発信者が容易に特定できるとでも思っているかもしれない。しかしながら、確実に発信者を特定できる情報などない。そこをなんとかして特定の可能性を高めていくのが開示関係実務のノウハウである。私には、裁判所が、携帯電話会社が経由プロバイダであることを予想して、送信先IPアドレスや送信先URIを特定するためにdigを打ったり、ウェブのソースコードをレビューする姿は想像できない。

その他にも従前の手続きとの関係がどうなるか明確に議論されていないし、送達制度を議論しているものの送達条約非加盟国の法人に対してどうやって発令するかは議論されていない。

正直、問題点の多い手続きの改善のために、さらに問題点の多い手続きを新設しようとしているだけな気がする。例えるなら、穴だらけのほうきじゃゴミに困ると言われて、まったく機能しない大型掃除機を持ってきたが、掃除機が粗大ゴミにしかなってないというところか。

私には、総務省が各所からの批判の矛先を他に向けようとして、新しい制度を創設しようとしただけにしか見えない。

研究会では、パブリックコメントの結果を発表している。

私もパブリックコメントを出している。私が所属する弁護士有志のサイバー法研究会「電子商取引問題研究会」は九州の弁護士有志からなる「九州IT法研究会」と連名でパブリックコメントを出している。

私は、審議会で議論されている内容と実務がかなり乖離しているので、実務の観点からかなり指摘したはずである。しかし、結果発表を見る限り私の指摘の半分くらいが無視されていた。

今回は、名誉毀損が中心に議論されていたが、発信者情報開示は名誉毀損だけのものではない。

通信の秘密教団がいつまでも使えない制度にこだわれば、最後はブロッキング立法化の黒船が到来するだけである。

そのときに、教団はどうするつもりなのだろうか?

というか、前のブロッキング立法化の議論の際に、総務省が通信の秘密をあっさり売り渡そうとしたことを、私は今も怒っている。

 

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2020/10/08

第22回WiLLのご案内

今年も、WILLの季節が来た。

WILLとは「少年犯罪被害当事者の会」が1年に1度開催する、少年犯罪被害者に関するシンポジウム?である。

私が修習生のときに第1回があり、今年で22回である。

今年はコロナの影響でyoutubeでオンラインシンポジウムのようである。

 

今は、WILLと言っても、ITが専門の私がなんの関わりがあるのかと聞かれる。

それでいい。事件は忘れ去られていくものである。

しかし、子を思う親の心は消える事が無い。それがWILLをつづけていかなければならない理由なのだと思う。

 

<第22回WILLのパンフレット>

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★ とき 2020年10月10日土曜日午後 1 時から配信予定 (後日録画も公開予定)
★ 配信方法 YouTubeで動画を配信します

★主催 少年犯罪被害当事者の会
★後援 大阪府・大阪市
★お問い合わせ 少年犯罪被害当事者の会事務局代表 武 るり子
TEL 06-6478-1488

 

 

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2020/09/23

タトゥー事件最高裁決定の解説

ガマンの判決医業の遺業タトゥー裁判控訴審逆転無罪判決タトゥー事件最高裁判決と取り上げ続けている裁判であるが、

最高裁決定が裁判所のHPにアップされていた。

裁判例

というわけで、前に言っていたとおり、解説してみたい。

といっても、この事件、医行為とはなんぞや?という論点1つである。

検察官は、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と主張していて、

1審裁判所もそのように解釈して、さらに、「医師が行うのでなければ皮膚障害等を生ずるおそれがある」として彫り師を有罪とした。

この基準「おそれ」で足りるのがポイントで、刑事司法の世界では、ろくな立証がなくても裁判所が机上の空論で「おそれ」を認定してしまうのである。

ところで、「医者以外の者がやれば犯罪になる行為とは何?」という問に対して、

「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為」と答えられても、

「じゃあ、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為ってなんですか?」

となるであろう。実際には、保健衛生上危害を生じるおそれある行為なんて様々である。

これでは、何が処罰の対象かはわからない。

最高裁は、

医師法17条は医師の職分である医療及び保健指導を,医師ではない無資格者が行うことによって生ずる保健衛生上の危険を防止しようとする規定であると解される。したがって,医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解するのが相当である。

と判断した、医行為というのは、医師の職分との関係を必要とするということで、平たくいえば、治療や保健指導と関連性がないとダメということである。その上で単に医師の職分と関係あればいいというわけではなく、保健衛生上の危険を防止するという法の趣旨から、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為という限定を加えている。

1審の基準と最高裁の基準は、それ自体を定義とするか限定に用いるかで全く非なるものである。

さらに最高裁は、

方法や作用が同じ行為でも,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況等によって,医療及び保健指導に属する行為か否かや,保健衛生上危害を生ずるおそれがあるか否かが異なり得る。また,医師法17条は,医師に医行為を独占させるという方法によって保健衛生上の危険を防止しようとする規定であるから,医師が独占して行うことの可否や当否等を判断するため,当該行為の実情や社会における受け止め方等をも考慮する必要がある。

ある行為が医行為に当たるか否かについては,当該行為の方法や作用のみならず,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況,実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で,社会通念に照らして判断するのが相当である。

と判断した。

ただ、社会通念というのがくせ者で、裁判所が社会通念といったら、有罪の為のむりくり解釈を言いだす場合もあるのであるが、今回はそうならなかった。

最高裁は、

 被告人の行為は,彫り師である被告人が相手方の依頼に基づいて行ったタトゥー施術行為であるところ,タトゥー施術行為は,装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって,医療及び保健指導に属する行為とは考えられてこなかったものである。

また,タトゥー施術行為は,医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって,医師免許取得過程等でこれらの知識及び技能を習得することは予定されておらず,歴史的にも,長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり,医師が独占して行う事態は想定し難い。このような事情の下では,被告人の行為は,社会通念に照らして,医療及び保健指導に属する行為であるとは認め難く,医行為には当たらないというべきである。

タトゥー施術行為に伴う保健衛生上の危険については,医師に独占的に行わせること以外の方法により防止するほかない。

と認定して無罪を認定した。

要するに、入れ墨は、医師が独占するようなものではないので、医師法ではなく他の法律で規制するべきということである。

そして、この判決には草野裁判官の補足意見がついている。そこでも注目するべきは、

 タトゥーに美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者もおり,さらに,昨今では,海外のスポーツ選手等の中にタトゥーを好む者がいることなどに触発されて新たにタトゥーの施術を求める者も少なくない。このような状況を踏まえて考えると,公共的空間においてタトゥーを露出することの可否について議論を深めるべき余地はあるとしても,タトゥーの施術に対する需要そのものを否定すべき理由はない。以上の点に鑑みれば,医療関連性を要件としない解釈はタトゥー施術行為に対する需要が満たされることのない社会を強制的に作出しもって国民が享受し得る福利の最大化を妨げるものであるといわざるを得ない。タトゥー施術行為に伴う保健衛生上の危険を防止するため合理的な法規制を加えることが相当であるとするならば,新たな立法によってこれを行うべきである。

という意見である。タトゥーを個人の人格的利益と関連づけて考えているのである。

ところで、入れ墨は、身体に対する侵襲を伴うので、同意傷害の論点が存在する。この点については、草野裁判官の補足意見でも、

最後に,タトゥー施術行為は,被施術者の身体を傷つける行為であるから,施術の内容や方法等によっては傷害罪が成立し得る。本決定の意義に関して誤解が生じることを慮りこの点を付言する次第である。

同意傷害とは、同意下で、人に傷害を負わせた場合傷害罪が成立するのか?仮に傷害罪を一切否定したら、ヤクザの指つめはどうなるのか?という古くて解決されてない論点である。補足意見はそこに一石を投じたわけである。

というわけで、最高裁は、弁護人の主張に対してまさかの満額回答である。

最高裁から酷い判決をくらい続けている私からすれば、この判断は驚きしかない。

そもそも、この事件は高裁の西田裁判長が弁護人満額回答の逆転無罪を下しているのであるが、私は、その2週間前に別の事件で西田裁判長に酷い判決をくらっている。同じ裁判長でもこれである。

亀石弁護士と、私の間にある、高い壁はなんなのだろうか。

美?

そういう自虐ネタをしたくなるが、特に邪意は無い。

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2020/09/19

あなたの不正入試の入学検定料が戻ってくるかもしれません。

なんか、ア○○○事務所のCMみたいなことやってるが、私の事務所の話ではない。

 

NPO法人消費者機構日本というのは、いささかうさんくさい名前ではあるが、国も認める特定適格消費者団体である。

特定適格消費者団体とは、消費者の利益のために訴訟提起することができる団体で、多くの消費者被害を生む事件などで、個々の消費者が闘うのは大変なので、みんなの為に闘いを背負って立つ団体である。

その中の1つである消費者機構日本は、東京医科大学の不正入試について、入学検定料の返還義務を確認する訴訟を提起し、該当者に入学検定料等の返還義務があることの確認判決を得ている

というわけで、該当者であれば、入学料等を返還してもらうことが可能となったわけで、消費者機構日本は、そのことをホームページで公報している。しかし、過疎化したホームページなので世間ではこのことがあまり知られていない。これが訴訟の予算はあるが、広告の予算がない特定適格消費者団体の悲しさである。

このブログも過疎でいえば大差ないが、ささやかながら周知のお手伝いである。

心当たりある方は、下の画像リンクから消費者機構日本に連絡されたい。

追記 この記事は企業案件ではありません。タイアップ等は別途お待ちしております。

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2020/09/18

タトゥー事件最高裁決定

昨日、タトゥー事件で上告を棄却したというニュースが飛び込んで来た。

タトゥー(入れ墨)の施術は医師免許が必要か――。最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は医師法違反事件の上告棄却決定で、医療行為に当たらず医師免許は不要とする初判断を示した

タトゥー事件は、入れ墨が医師法に反するかが争われた事件で、このブログでも、ガマンの判決医業の遺業タトゥー裁判控訴審逆転無罪判決と注目してきた裁判である。

まだ、裁判所のHPに決定はアップされていないので、その内容を論じることはできない。アップ次第検討を試みたい。

現在、ニュースを見る限りでは、最高裁は、「医行為」を「医療や保健指導に属する行為」のうち、医師が行わないと保健衛生上の危害を生じる行為と医療関係の行為に限定している。私は、1審が医行為を「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と解釈したのは、保健衛生関係けしからん罪に拡大解釈するものであって、そんなトートロジーが罪刑法定主義に堪えるものではないと考えているので、最高裁が上告を棄却したことは結論的には賛成である。

最近、第1小法廷というか山口厚元東大教授のそっくりさんが、いろいろと失望させてくれるような判断を連発している中で、第2小法廷が理性ある判断を示したことについては驚きですらある。

今回の決定については、新しい分野の刑事弁護に臆することなくチャレンジした弁護士、多くの支援者、そして、1審で泣いても2審で泣いても最後まで戦い抜いた彫り師本人がいる。

今は、彼らの努力を賞賛し、すばらしい結果をもたらしたことを我がことのように喜びたい。

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2020/08/26

コインハイブ事件高裁判決@判例時報

コインハイブの呼出しコードをサーバに蔵置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件の高裁判決が2020年2月7日にあった。

東京高等裁判所第11刑事部(栃木力裁判長、上岡哲生裁判官、髙橋康明裁判官)は、不正性の要件を満たさないとして無罪とした地裁判決(横浜地判2018年3月27日)を破棄して、罰金10万円の罪を認めた。

高裁が有罪を認めたロジックのおかしさについては他でも書いてるので、今回はそういうのを解っていることを前提の記事である。

 

この判決が、判例時報2446号71頁に解説付きで掲載されているのを見つけた。

判例時報とは、日本でもっとも有名な判例紹介雑誌の1つである。

判例時報では、誰が解説を書いたかは明らかにされていない。コインハイブ事件判決でも「仮名」である。

ただ、この仮名さん。どこから裁判の情報を知ったのか解らないが、解説がなかなか香ばしい。

高裁判決のもっとも狂った判断と言われている、「賛否両論は被告人の不利益に」理論であるがこれについては仮名さんはアプリオリに大賛成らしい。

しかも、

賛否が分かれている点は社会的許容性を基礎付ける事情と言うよりもむしろ否定する方向に働くものと第一審段階で見切るのは必ずしも容易ではないけれども

と、地裁判決に対して謎のマウンティングである。

さらには、

総じて言えば、本件では第1審が迅速に疑問を提起し控訴審が適切に解明を試みており、社会的信頼を保つ意味合いからも刑事裁判が有用に機能しているとも言えよう

と、事件解決したかのように解明と言いだし、さらに、高裁判決のおかげで刑事裁判制度が機能しているといわんばかりの最高金賞である。

私には、この仮名さんが、なぜ、高裁判決マンセーな自己万能感満タンでこの判決の解説をしなければならなかったのかは解らない。

ただ、私は、こんな傲慢な考えをしている者が、刑事司法の中枢にいるとは思いたくはないので、解説を書いた仮名さんが、「判決を書いた裁判官ご本人」ではないと信じたいところである。

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コインハイブ事件の評釈

コインハイブの呼出しコードをサーバに蔵置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件の高裁判決が2020年2月7日にあった。

不正性の要件を満たさないとして無罪とした地裁判決(横浜地判2018年3月27日)を高裁は破棄して罰金10万円の罪を認めた。

高裁が有罪を認めたロジックのおかしさについては他でも書いてるので、今回は解っていることを前提にする。

この判決が、判例時報2446号71頁に掲載されているのを見つけた。

そして、気分が悪くなった。

判例時報とは、日本でもっとも有名な判例紹介雑誌の1つである。

誰が解説を書いたかは明らかにされない。コインハイブ事件判決でも「仮名」である。

ただ、この仮名さん。どこから情報を仕入れたか解らないが、なかなか香ばしい。

もっとも狂った判断と言われている、「賛否両論は被告人の不利益に」理論であるが、

賛否が分かれている点は社会的許容性を基礎付ける事情と言うよりもむしろ否定する方向に働くものと第一審段階で見切るのは必ずしも容易ではないけれども

と、上から目線で語り、おまけに地裁判決に対して謎のマウンティングである。

さらには、

総じて言えば、本件では第1審が迅速に疑問を提起し控訴審が適切に解明を試みており、社会的信頼を保つ意味合いからも刑事裁判が有用に機能しているとも言えよう

と、高裁コナン君が事件解決したかのような語りで、さらに、刑事裁判制度が機能していると高評価である。

私には、この仮名さんが、高裁判決マンセーな自己万能感満タンで解説をしなければならなかったのか解らない。

ただ、私は、こんな傲慢な考えをしている者が、刑事司法の中枢にいるとは思いたくはないので、解説を書いた仮名さんが、「判決を書いた裁判官ご本人」ではないと信じたいところである。

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2020/07/29

ろくでもない判決

自分の性器のCADデータを支援者に配ったとして、わいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪に問われたろくでなし子の事件の判決が先日あった。

通常、上告を棄却するときはぺらぺらな決定を送ってくるだけなのであるが、なぜか、最高裁は弁論を開かず判決期日を指定したため、何をしたいのかということが噂になっていた。

参考 刑事訴訟法

第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。

上告棄却ならペラペラ一枚で終わるはずだが、なんでか、最高裁は、わざわざ、判決を期日を指定して、上告を棄却判決をしたのであった。

最一判令和2年7月16日

提供の動機、経緯に芸術性、思想性が認められるという弁護人の主張については

行為者によって頒布された電磁的記録又は電磁的記録に係る記録媒体について,芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の有無・程度をも検討しつつ,同条のわいせつな電磁的記録又はわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するか否かを判断するに当たっては,電磁的記録が視覚情報であるときには,それをコンピュータにより画面に映し出した画像やプリントアウトしたものなど同記録を視覚化したもののみを見て,これらの検討及び判断をするのが相当である。

とガン無視である。

しかし、下級審で、わいせつ性が認められたのは、性欲を刺激するという理由のはずである。これを前提にすると、周辺事情を取捨して、画像だけで性欲刺激を判断するというのは、かなりワビサビがなく、とても男子中学生的な判断である。

次に、データの提供は、女性器に対する卑わいな印象を払拭し,女性器を表現することを日常生活に浸透させたいという思想によるという弁護人の主張に対しては

女性器を表現したわいせつな電磁的記録等の頒布それ自体を目的とするものであるといわざるを得ず,そのような目的は,正当なものとはいえない。 

と、ろくでなし子の活動全否定というより全人格否定である。

結局のところ、わざわざ、呼び出して宣告するような中身のあるものではなかった。

 

ところで、わいせつ罪は、社会法益に対する罪であるが、なぜ、刑事罰の対象になるかというと説明が難しい。

現最高裁判事と同名のそっくりさんである刑法学者の山口厚氏は、わいせつ罪の保護法益を以下に捉えるかは困難な問題であるとして、性的秩序・風俗をわいせつ罪の保護法益としている。

しかし、現在の日本において刑罰によって保護しなければならないような性的秩序とか風俗とはなにかと問われるともやもやである。

むしろ、明治時代に処罰法規が設けられたから、今も保護法益を正当化するためにいろいろ考えているという感じである。

次に、わいせつとはなんぞやというのは結構難しい問題である。

サンデー娯楽事件(最判昭和26年5月10日)①いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、②普通人の正常な性的羞恥心を害し、③善良な性的道義観念に反するものというが理由を示し、これが、現在もわいせつの定義とされている。

そして、著名なチャタレー事件(最大判昭和32年3月13日)では、サンデー娯楽事件を踏まえて、さらに性的道義観念に踏み込んだ判断をしている。

猥褻文書は性欲を興奮、刺戟し、人間をしてその動物的存在の面を明瞭に意識させるから、羞恥の感情をいだかしめる。そしてそれは人間の性に関する良心を麻痺させ、理性による制限を度外視し、奔放、無制限に振舞い、性道徳、性秩序を無視することを誘発する危険を包蔵している。

この性欲=獣=非道徳って、いつの時代のどこの話だというところであるが、その後の裁判例を見ると、普通人の性的な性的羞恥心や性的道義観念というのが時代にそぐわないと考えたのだろうか正面から検討されなくなり、現在は、性欲刺激的要件1本主義的な基準になっている。

私は、これは判例変更じゃないのか?と思うところであるが、裁判所は、令和の時代になっても、昭和20年代の道徳観念にしたがって、明治に規定された刑事規定を擁護しているということである。

で、何が性欲を刺激するかという話であるが、これまた、日本は独特である。性欲刺激されるのは性器に限られるとでも考えているのであろうか。しかし、男性器モチーフのおみこしは相当リアルでもおとがめなしなので具体的になにがわいせつかは私にも良く分からない。

 

ところで、わいせつに関する考え方程、国によって異なることはない。

例えば、米国では、有名なミラー判決で、米国最高裁は、①通常人にとってその時代の共同体の基準を適用して、その作品が全体として好色的興味に訴えているか、②その作品が明らかに不快な仕方で州法によって特定的に定義された性行為を描いているか、③その作品が全体として重大な芸術的政治的科学的価値を描いているかというミラーテストを示した。その結果、米国ではハードコアポルノに処罰の対象が限定されている。

また、ジェンキンス判決で、米国最高裁は、禁止が通常の性欲を刺激するだけのものにまで及ぶ限りで修正第1条に反するとしており、チャタレー事件やその後の日本の裁判例とは性欲刺激に対する評価がまったく違う。

ただ、米国では、キリスト教の道徳的な規制が結構ある(あった)。この点、性器さえ出さなければ変態プレイなんでもありの変態天国の日本とは大違いである。

 

で、脱線から戻って、ろくでなし子の事件であるが、自己の性器のジオラマにも起訴されていたがこちらは無罪で確定している。
検察も弁護人も敗者である。焼け太りという声も聞こえてきそうであるが、旦那と子宝と一部無罪をゲットしたろくでなし子の1人勝ちということでいいのでは?

というわけで、ろくでなし子とやまべんの動画でもどうぞ。

 

 

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