Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

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「Winny」も「天才プログラマー」も「金子勇」も盛り込んで検索ワードを意識しすぎな小説が、2020年4月24日にインプレスR&Dから出版されることになった。

 

インターネットウォッチの紹介記事

インプレスR&Dのリリース

PRタイムのプレスリリース

 

これは、壇弁護士の事務室のスピンオフブログ「アターニアットロー」を時系列に整理して、小説として書き直したものである。

執筆中は、当時のあれこれを思いだしては、怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり大変であった。

ブログからの移植という割には、出版まで数年かかっている。

途中で担当者も出版社も複数回変更された。ヒロインを登場させろとか、さび前の歌みたいに結末を最初に書いてインパクト勝負だとか、金子の内心を描いてないから小説として成立してないとか、業界人が読みもせずに業界風を吹かす発言にはヽ(#`Д´)ノな感じであった。
しかし、Winny事件や金子勇という人物について事実をそのまま伝えるという、根本のところはぶれずに書けたと思う。

ところで、この小説、元が無償で公開されてるんだからブログ見たらいいじゃんと言われかねない。しかし、既にアターニアットローを見た人でも楽しめるようにいろいろ工夫しているので、そう言わずに、小説版も見て欲しい。

Winny事件は、現在、映画化の企画もあるようである。私の役を誰がやるのかをいつも聞かれるが、私は知らない。。。。というより、その質問が多すぎて辟易している。

最後に、出版の際には紙面の都合で乗せれなかった方々にスペシャルサンクスをば(追加予定)。

坂和宏展(弁護士)さん 彼の「小説を読みたい」という一言がなければ、途中で止めてたと思う。ありがとう。

山本祐規子(元ロースクール生)さん ゲラの確認、示唆に富む指摘ありがとう。

 

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2023/10/26

生殖腺の人権

生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である人が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づいて、性別の取扱いの変更を却下された事案で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は25日、生殖不能手術要件は個人の尊重を定めた憲法13条に反し、無効とする決定を出した。

性同一性障害というのは、ときどき話題になるが、奥が深い話すぎるので今回は説明を割愛する。

で、性同一性障害に対応するため、日本では「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」というのを作っている。

そこでは、性同一性障害とは、以下のように定められている。


(定義)

第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。

そして、性同一性障害に対応して、心理学的な性に適合するように、家庭裁判所が、性別の取扱いの変更の審判をすることができることが定められている。


(性別の取扱いの変更の審判)

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。

 十八歳以上であること。

 現に婚姻をしていないこと。

 現に未成年の子がいないこと。

 生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。

 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。


しかし、この要件、単に主観的な要件だけでは無く、婚姻要件や、客観的な大工事など求めており、結構ハードルが高い。

このうち、婚姻要件については、最高裁判所第二小法廷は令和2年3月11日に

異性間においてのみ婚姻が認められている現在の婚姻秩序に混乱を生じさせかねない等の配慮に基づくものとして、合理性を欠くものとはいえないから、国会の裁量権の範囲を逸脱するものということはできず、憲法13条14条1項24条に違反するものとはいえない。

と塩対応であった。

今回は、大工事未了の方に対して却下決定がなされた事案であるが、最高裁は、憲法13条違反を認めた。

最高裁は、13条について具体的人権性を認めた。

憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているところ、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由(以下、単に「身体への侵襲を受けない自由」という。)が、人格的生存に関わる重要な権利として、同条によって保障されていることは明らかである。

最高裁は、憲法13条によって、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由が保障されているとした。最高裁は、肖像権やプライバシー権などでかなり微妙な言い方をしてきたが、最高裁が正面から憲法13条の具体的人権性を認めたのは初めてかもしれない。

本件規定が必要かつ合理的な制約を課すものとして憲法13条に適合するか否かについては、本件規定の目的のために制約が必要とされる程度と、制約される自由の内容及び性質、具体的な制約の態様及び程度等を較量して判断されるべきものと解するのが相当である。

最高裁は、憲法13条の合憲性判断基準については、アドホックバランシングを採用した。

アドホックバランシングを採用すると、親方日の丸のメンツと一個人の権利が比較されるので、負けというのが常道なのであるが、今回はそうならなかった。

そして、本件規定による身体への侵襲を受けない自由に対する制約は、上記のような医学的知見の進展に伴い、治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになったということができる。また、前記の本件規定の目的を達成するために、このような医学的にみて合理的関連性を欠く制約を課すことは、生殖能力の喪失を法令上の性別の取扱いを変更するための要件としない国が増加していることをも考慮すると、制約として過剰になっているというべきである。

と言う理由で生殖腺要件については憲法13条違反を認めた。

他方で、外観要件については、高裁で審理を尽くしていないという理由で破棄差し戻しとした。

とすると、大工事をしていない場合は、外観要件で却下という可能性も残っている。

今回の判決には、補足意見、反対意見が多数あり、

岡裁判官 補足意見 法改正においては立法裁量を合理的に行使してもらいたい。

三浦裁判官 反対意見 外観要件も憲法13条違反

草野裁判官 外観要件も憲法13条違反

宇賀裁判官 性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることは、幸福追求にとって不可欠であり、憲法13条で保障される基本的人権といえる。外観要件も憲法13条違反

このように、多くの裁判官が完全に一致しなかったことから、本件の背後の問題が難しいことがうかがわれる。それは、人の数だけ人格があるのに、法的な性は2つしかないことからくるのかもしれない。

今回の判決については立法の対応が不可欠である。ただ、福田村の村民みたいなマインドセットの人からの批判も多数ありそうであるので、立法は難航しそうである。今後の国会の対応に注目である。



ちなみに、最高裁が法令違憲を認めたのは、日本国憲法下で12件目であり、憲法13条違反を理由とする法令違憲はおそらく初である。

重い最高裁の扉をこじ開けたのは、𠮷田昌史、南和行という二人の弁護士である。

こういう事件の裏には、信念に従って闘いに身を投じる弁護士が必要なのである。

バイクで転けて杖をついていた姿からは想像できない格好いい姿であった。

 

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2023/10/04

記者会見のセオリー2

※この記事は、あくまでも緊急記者会見を実施する側の視点のみで書いたものです。被害者の気持ちとか、ファンの気持ちとか、タレントの立場とかを重視する方は読まないでください。

 

 

先日、ジャニーズ事務所が、性被害に関連して再度の記者会見を開いた。

 

記者会見の様子はYoutubeで配信されていて、これも今でも見れるようである。

 

 

 

前回の記者会見を総括した記事が一部の方に受けたので、今回も記者会見を総括してみたい。

1 会場の設営

 相変わらず、関係者とプレスの入口を分けるとか、カメラ席を後ろに記者席を前に設置すなど、記者会見のセオリーをキッチリ守っていた。

 今回は、弁護士は2人になってCCO(どっちの会社の?)の山田弁護士と木目田弁護士がタレント(社長)2人を挟む形で座っていた。

 通常は、弁護士を並べることが多い(こそこそやりとりしたい)ので、何か意図があるのかなと思ったが、カメラの画角以外に特に意図は無かったようである。

 

2 服装ついて

 今回は、前回より服の色調が揃っていた。山田弁護士だけネクタイが柄のストライプなので、特に示し合わせたのではないようである。

 ただ、記者会見で服装はそれほど気にしなくて良いというのは前回述べたとおりである。


3 司会

  前回は、PR会社の女性社員が司会をしていたようであるが、今回は、元NHKアナウンサーの松本和也氏が司会をしたようである。

  PR会社の社員とは違って、プロの司会者だからうまく仕切れると思って採用したのかもしれない。

  しかし、結婚式の司会と荒れる記者会見の司会は別物である。

  松本氏の仕切りは、望月記者らの会場の不規則発言に対して、マイクなしの発言に回答を許したり、司会が自分で反論を始めたりで、記者会見が終わってからも質問が続いたり、かなりしょっぱかった。

  私は、こういう荒れる会見の司会は会見に慣れた弁護士を使うのをオススメしているのであるが、それはこういうのが気になるからである。

  (追記) もしかして、指名NGリストがあってやましいとこがあるから彼はムキになって反論してたのかもしれない。

  ただ、それはそれでプロの仕事ではない。

 

4 話し方

 前回、東山氏のしゃべり方が芝居がかっていたのが気になったが、今回はだいぶん普通になっていた。前回の記者会見と違って気楽に話せたのがあったのかもしれない。

 ただ、意識的に声を低めにしていたようである。聞かれたくないことを答えるときには、声がより低くなる傾向が見受けられたので、自分を落ち着けるために意図的に声を低くして話していたのかもしれない。

 前回、素人が話すと「えー」とかが多いことを指摘したが、今回、木目田弁護士の話を聞いて、言葉の頭に「えー」とか「あのー」が多いのが気になった人もいるかもしれない。実際はあれが普通なのである。

 ちなみに、人はマイクを握るとき、緊張するとカラオケで握るときの握り方になる。それは、なぜか解らない。

 みんなカラオケでこんな握り方するのか~と微笑むのが良いかもしれない。

 彼らが用いていた用語であるが、最初から、喜多川・藤島とジャニー・ジュリーが人によってごちゃ混ぜになっていたので、今回はあまり練習してこなかったのかもしれない。そもそも、PR会社が仕切ると会見の形はこだわるものの発言内容にはあんまり考えないことが多いのでそういうものかもしれない。

 

5 話す内容

 またまた、細かいところを言っても仕方ないので、特に感じたことだけに絞りたい。

 

 藤島氏は、今回は出席せずにお手紙朗読になったようであるが、お手紙作戦は功罪両方なので、どっちが良いとは言い難いところである。

 ただ、お手紙をセレクトした割りには、記載内容に、自分のお話が多いなぁという印象である。

 こういう記者会見で、己の話を語っても同情は得られにくい。

 

 次に、記者会見に同席した木目田弁護士が、東山氏の児童福祉法違反の成否について、「それは違うと思います」からしゃべり出したのが気になった。

 木目田弁護士は、ヤメ検だし、テレビで言いたい放題に犯罪の成立をいう弁護士がいたので、反論したかったのかもしれない。突然、左手がバンバン動き出したのでよほど喋りたかったと思われる。

 ただ、知らなかったから共犯にならない。知っていたとしても幇助ではないという旨の説明はリスキーである。

 刑事罰にならなければ問題無いという印象を与えがちである。しかも、喋ってる内容にあまり説得力がない。

 「私の専門家としての見解ですが刑事罰はならないと思います。ただ、彼らは道義的な問題から逃げようとはしていません。彼の発言はそういう趣旨です」とさりげなくフォローして東山氏の発言にしてあげるくらいが良かったと思う。

 

 他には、元ジャニーズ事務所の従業員を新会社に移行させる旨の東山氏の発言が気になった。申し合わせてなかったのだろうが、結果的に全員移籍であっても「性加害行為を行っていないか、また、黙認していないか等を十分確認の上、適切な人材については」と言うべきところである。元ジャニーズの人達が今も問題の所在を十分理解していないなと感じた。

 

6 その他

 記者会見は2時間であった。1社1問に記者からは不満の声もあがっていたようであるが、記者の満足が記者会見の獲得目標ではないし、記者会見は責任追及の法廷ではないし、記者会見は真相究明の場所でもないので別に気にすることはない。

記者の質問も、自分の書きたい記事があってそれに沿う発言を求める質問が多かったので、聞いても聞かなくても記事の内容は変わらないと思われる。

記者会見というのは、発表事項を記事にしてもらって、一般の人に伝えることが主目的である。そもそも、ネットで公開している記者会見である。記者の意図がどうであれ、発信された情報は一般の視聴者に伝わるのである。

こういう場合に、記者にいつまでもつきあっても得られるものが無いので、時間はあの程度でいいと感じた。

 

 で、弁護士ならではの防御ラインと獲得目標の話である。

 まず、防御ラインであるが、

 東山氏自身の性加害について、東山氏は今回「セクハラをしたことはないです」と言い切っていた。

 前回は、途中で発言を変遷させてふにゃふにゃだったが、ここは練習して無いと断言して切り抜けれると判断して防御ラインに設定したのであろう。

 しかし、東山氏からの性被害が連日報道されている状況で、この防御ラインはなかなかリスキーな判断である。

 他方「セクハラはありません」で終わらせてしまったのは、質問している記者の準備不足であり、コタツ記事に慣れすぎである。

 もし、望月記者が質問したらどうなっただろうと思わせる内容だった。

 

 性被害を、知らなかったということ点について、

 一番知らなかったではすまない性加害認定の高裁判決について、みんなが口を揃えて、ジャニーさんが「弁護士が悪かった」と言ってたのでそう思ったという旨の説明をしていた。従前の発言との繋がりもあって、おそらくそこに防御ラインを設定するしかなかったのであろう。

 それでも、判決が出た以上は、疑われるようなことは止めさせるのが役員の責任と考えるのが通常である。この防御ラインはじり貧の疑いがある。

 また、弁護士が悪かったは、あの事件の代理人の某弁護士も了解したうえでの発言だと思うが、これまでいろんな件でお世話になっている弁護士先生を犠牲にするのは見ていてヒヤヒヤものであった。

 

 獲得目標については、

 今回は、タレントの活動継続とかなり割り切ったようである。 

 前回のまさかのゼロ回答から、資本は藤島氏とは別の別会社に移行、藤島氏は新会社の役員にならない、元ジャニーズ事務所は事業廃止、社名変更、藤島氏は相続税を支払う等てんこ盛りである。お土産たくさんなので今回はメディアやスポンサーサイドの理解も得られると判断したのであろう。

 たしかに、タレントの活動維持を考えるなら、ジャニーズのない綺麗な新会社にタレントの契約を移行させて、タレントには罪がないと報じてもらうのが一番であり、スキームの方向性には問題無いと思う。

 ただ、自らの性加害が報道されるジャニー氏の後継者の東山氏が新会社の代表取締役になるというのは、いつまでも東山氏による性加害の報道がされて、離れたスポンサーが戻る切っ掛けを失う危険がある。記者会見も東山氏の資質についての質問が多かった気がする。これは全体のスキームを台無しにするくらいかなりリスキーである。

 もしかして、藤島氏が、事業が全くの他人の手に渡るのが嫌で、東山社長に最後までこだわったのかもしれない。しかし、東山氏は、スマイルカンパニーに専念して、補償が終わってから、自己の処遇を検討するでもよかったのかもしれない。

 結局のところ、この点がひっかかって、記者には、元ジャニーズ事務所が、性被害を生む体質から完全に決別したとは見えなかったのかもしれない。前回の記者会見の後に見られた、あらかじめ仕込んでいたような報道は今回は見られなかった。

 

 最後に、重い十字架を背負い続けて補償のみを目的とする会社の社名を「スマイルアップ」にしたのは、誰のアドバイスか解らないが悪い冗談にしか思えない。

 

 以上が今回の記者会見の総括である。

 今回の記事を見て、戦略的思考に基づくPR活動に興味をもったお方は・・・・・

弁護士のためのPR(広報)実務入門

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【追記】

あの記者会見で、PR会社の人が「指名NGリスト」を作って会場に持参したようである。

   記事

ジャニー喜多川氏の性加害の問題をめぐりジャニーズ事務所が2日に記者会見を開いた際、事務所から会見の運営を任されていた会社側が、複数の記者やフリージャーナリストの名前や写真を載せて質問の指名をしないようにする「NGリスト」を会場に持参していたことが関係者への取材でわかりました。

望月記者が会場で必要以上に暴れていたもの、指名NGリストに気づいていたからかもしれない。

 

私の経験でいうと、PR会社は、こっち側のメディアリストとか敵側のメディアリストとかを作りたがるし、そういうのを作ったり、記事を仕込んだりするのが仕事ができる会社と受け取られがちである。

ただ、私が聞く範囲では指名NGリストまで作ることは少ない。指名NGリストがバレると炎上必至なので、間違っても会場に持ち込ませない。

私がNGリスト自体をNGと考えるのは、指名NGリストを作ると全員NGにしたくなるくらいのアウェイゲームを想定してるからである。

実際にNGリストは不要である。本当にNGな記者はなんとか理屈をつけて記者会見に入れないのがセオリーだし、それでも記者会見に来てしまったら公平に扱えばいいのである。

仮に、NG記者から変な質問が来たら、あまりに記者会見の趣旨に反した質問は、司会者で引き取ってしまえばいいし、1社1問なんだから1回答えれば済むことだし、そもそも、嫌な質問に答えるために記者会見の練習をして防御ラインの設定をしているのである。

もし、東山氏が望月記者の質問に耐えられないと判断したので、あえて一部の記者を指名NGにしたのであれば、そもそも、東山氏を新会社の社長にするというスキーム自体に無理があったことになる。

そこで獲得目標とスキームの整合性を再検討するべきだったのではないか?

 

私の経験上、クライアントはすぐに「バレなかったら大丈夫ですよね?」ということを聞いてくるが、自分達が思うより、こういうのはすぐにめくれるという良い教材である。

そして、バレたときのリスクも考えて対応するのが弁護士の考えるコンプライアンスである。

この記者会見は、CCOとして山田弁護士が出席していたのが、なかなかな皮肉である。

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2023/09/27

しょせん他人事ですから~という痕跡すらのこってないがな【勝手にPRシリーズ】

※ この記事はPRを含みます

 

180万部突破した、

「しょせん他人事ですから」

であるが、先日第5巻が発売されたようである。

白泉社から1冊頂いた。

もはや、勝手にPRと贈呈の意地の張り合いである。

5巻では、4巻から続くなりすまし被害についてのお話である。

今回は、泉弁護士という女性の弁護士が活躍である。

泉弁護士は、執務中はひっつめ髪の強面風である。

でも、こんな格好の女性弁護士はあまりいないような気がする。

お色気のアニマルだけに、ベルセルクなみの濡れ場を期待したが、

そういうのは無いらしい。

 

ちなみに、なりすましであるが、けっこう近い人が犯人というのが弁護士あるあるである。

私が経験した中では、捕まえてみたら、会社の上司だったということもある。

結構迷惑ななりすましであるが、コラムで清水弁護士が解説しているように、なりすましはぴったりの刑事罰がない。また、不法行為との関係でもなりすまし自体の違法性はみとめられ難い。

実は、なりすまし事案への対応は、弁護士の腕の違いが出るところなのである。

 

という訳で、第6巻もお待ちしております。

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2023/09/13

記者会見のセオリー

※この記事は、あくまでも緊急記者会見を実施する側の視点のみで書いたものです。被害者の気持ちとか、ファンの気持ちとか、タレントの立場とかを重視する方は読まないでください。



先日、ジャニーズ事務所が、性被害に関連して記者会見を開いた。

 

記者会見の様子はYoutubeで配信されていて、今でも見れるようである。

 

 

 

私は、記者会見にはうるさく、弁護士向けのPR実務入門なんて本まで書いている。

 

今回は、この本に沿って、記者会見を総括してみたい。

1 会場の設営

 関係者とプレスの入口を分けるとか、カメラ席を後ろに記者席を前に設置すなど、記者会見のセオリーをキッチリ守っている。

 FTIコンサルティングが入っているだけに当然と言えば当然かもしれない。

 

2 服装ついて

 記者会見の記事とかで自称専門家は服装を問題にすることが多いが、服装はそれほど気にしなくて良い。

 気にしすぎて、全く同じ格好の者が揃って滑稽な風景になることがある。今回は、東山氏と井ノ原氏が微妙に色違いの違うスーツを着ており、むしろ自然であった。これは芸能人としての矜持か?

 記者会見では高価な装飾品は御法度とされており、東山氏のつけていた腕時計のお値段がすこし気になった。しかし、私には値段が解らない。


3 お辞儀

 入場の又は挨拶の際には、45度のお辞儀をするというのがセオリーであるが、良く出来ていた。

 ちなみに、素人はスッと立つのも難しいのであるが、そこは芸能人である。

 

4 話し方

 東山氏のしゃべり方と使う用語が少し芝居がかってたこと以外は、話をする速さも、滑舌も問題無い。

 素人だと、えーとかが多いのであるが、そういうことも無かった。さすが芸能人である。

 ただ、当初、喜多川、藤島だったのが、途中でジャニー、ジュリーになったのは、緊張が解けたからだろうか。

 

5 話す内容

 細かいところを言っても仕方ないので、

 自身の性加害も報道されている東山氏が、その点を聞かれて、変遷して、曖昧な回答に終始したのが気になった。

 こういうのは真っ先に想定質問に入れて練習しておくことである。

 次に、記者会見に同席した弁護士が、「以後の記者会見は考えていません」と言ったのが気になった。

 この発言は不誠実な印象を与えるのでNGワードである。

 予定して無くても「今後、必要が生じれば、ご説明の場を設けます」と脊髄反射で答えるのがセオリーである。

 

6 その他

 記者会見4時間は長すぎる。長ければ誠実と言うわけでは無い。

 

 以上を見ると、記者会見としては良くできていたと私が言っていると思われるかもしれない。でも決してそうではない。

  

 私には、記者会見に際して最も重要な獲得目標と防御ラインの設定が気になった。

 獲得目標と防御ラインの設定は弁護士用語であるが、なんとなく解るだろうから今回は説明を省略する。

 防御ラインであるが、喜多川氏による性加害を黙認していなかったかという点について、

 「暴露本をみてうわさとしては聞いてたけど、聞けなかった」

 と口を揃えて言っていたので、そこに設定したのであろう。

 ただ、そうすると従前の「しらなかったんです」の藤島氏の動画からの変遷の理由が気になるし、裁判で性加害を認定されていることまでうわさというのは通じないところで、その整合性が気になるところである。

 これらの点について記者会見では合理的な説明はされていない。

 この点は、回答によっては、性加害を肯定していたととられかねない箇所であり、獲得目標とも関連するところであるが、防御ラインの設定が適切なのか気になるところである。

 

 次に、獲得目標であるが、こういう記者会見では、取引先や顧客の納得と取引の維持等に設定されることが多い。

 確かに、テレビや一部の雑誌などから、反省の姿勢が見えた等の報道がなされており、報道のタイミングと内容からメディアとの下交渉があったと感じた。さすが、テレビに強いジャニーズである。

 しかし、現在、ジャニーズ事務所所属のタレントを広告に起用することの見直す企業が連日報道されている状況であり、雪崩状態である。

 広告起用を見直す企業の多くは、同事務所の改革や再発防止の取り組みが不十分であることを指摘している。

 実は、今回の記者会見でジャニーズ事務所が示したのは、藤島氏の代表取締役継続、藤島氏の100%株主継続、ジャニーズの社名継続、タレントの移籍無し、企業の営業自粛無しの、まさかのゼロ回答である。これで取引先に納得してもらうのは難しいと感じていたところである。

 グルーミングカンパニーをスポンサードする会社ととられることはそれ自体企業にとってのリスクなのである。企業にとって、特に、海外に展開する企業にとって、この記者会見がどう理解されたのかは明らかであろう。

 もし、関係者がこの点を十分考えた上で、そういう企業には我が社の音楽は必要無いと考えていたのであれば、私は考えられない潔さである。

 

 以上が今回の記者会見の総括である。

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2023/08/31

第25回Willのお知らせ

今年もWillの御連絡をいただいた。

Willとは「少年犯罪被害当事者の会」が年に1回開催しているイベントである。

私が、犯罪被害者の事件をしていたのはずいぶん昔の話である。

こうやって連絡をいただけるのは嬉しいかぎりである。

なんだか、おじいさんな気分ではあるが、勝手にPRである。

 

「この苦しみは、いつまで続くのかー」矯正処遇に被害者の声、反省引き出す新制度に

○ 出演者: 太田達也氏 (慶應義塾大学教授) ・遺族
○ 主 催: 少年犯罪被害当事者の会
○ 後 援: 大阪府・大阪市
○ 日 時: 2023 年 10 月 14 日 (土) 午後 1 時
○ 会 場: 大阪市立西区民センター (大阪市西区北堀江 4 丁目 2−7)
大阪メトロ千日前線・⻑堀鶴見緑地線 西⻑堀駅 3 号・7 号出⼝から徒歩 3 分
○ 資料代: 500 円
○ 定 員: 200 人
○ 連絡先: 少年犯罪被害当事者の会 代表 武るり子 (電話: 06-6478-1488)

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【勝手にPR】映画「福田村事件」

映画「福田村事件」が明日から全国の劇場で公開である。

この映画は、Winny組から、東出昌大、木竜麻生、カトウシンスケが出演しているので、私的に激推しである。

 

福田村事件(ふくだむらじけん)とは、ちょうど100年前に、関東大震災後の際の流言蜚語により、香川県からの行商団が千葉県の福田村で地元の自警団に殺害された悲しい事件である。

 

監督は、ドキュメンタリー映画の巨匠「森達也」監督である。

飾らない人柄が魅力的な好人物である。

 

特に、この作品の木竜さんの演技が凄いといううわさなので、嫁入りを見守る父親の気分である。

しかし、私の一押しはキャストに名前が出ていない「坂下イシ」役の

「さいとうなり」さんである

 

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実は、さいとうさんは、いろんなところで拝見できる。

 

ローソンスイーツではシュークリーム担当である。

「恋愛ドラマな恋がしたいシーズン3」では、微妙なお立場である。

最近はインスタでも活躍中である。

 

というわけで、私は授業参観前の父兄の状態である。

この映画必見である。

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2023/07/06

10年

2013年7月6日に金子さんがこの世を去った。

今日で、ちょうど10年になる。

彼は、確かにこの世にいたのである。

映画や書籍で金子さんを知った人にも、すこしの時間だけ彼のことに想いを寄せてもらえれば幸いである。

 

実際の事件での情景や姿は、私の脳裏に映像の様に残っている。

初めて金子さんに会った五条警察の留置所での疲れたような顔も、逆転無罪になったときの笑顔も、亡き母を語るときの寂しそうな顔もである。

それは、映画にはなかった私だけのものである。

私は、その一つ一つを眺めながら1日を過ごしたい。

 

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2023/04/03

しょせん他人事ですから~っていう割には販売部数を気にしてますがな。。【勝手にPRシリーズ】

※ この記事はPRを含みます

 

135万部突破し、白泉社では、ヤングアニマルをお色気路線から法律コミックにした感のある、

「しょせん他人事ですから」

であるが、先日第4巻が発売されたようである。

白泉社から1冊頂いたので、勝手にPRである。

4巻では、3巻に引き続きドラゴン星川という暑苦しい弁護士が登場する。

彼が、

「私もプロですので絶対になんて明言することはありません」

と言うのであるが、これは、弁護士あるあるである。

私も、ありとあらゆる可能性があるのので、可能性はゼロではない。

同じ事件が100回あるわけではないので何%かは意味が無い

という説明をする。

他方、保田弁護士が、依頼者の少年に嘘をついたことを指摘するシーンがある。

依頼者の嘘に対する対応は、弁護士によって差が大きい。

刑事事件や少年事件を多く手がけてる人は、弁護士は、騙されてなんぼ的に結構何でも信じてしまう人が多い気がする。

人によっては、信じられないことを言ったら、すぐに、信じられないという弁護士もいる。

ちなみに、私は、依頼者が嘘をついてると解った瞬間、その場では相手にあわせつつも警戒心MAXになり、事件に対するモチベーションがMINになるタイプである。

第4巻では、汚嬢様風の泉弁護士も登場するが、これからどういう展開になるか楽しみである。

という訳で、第5巻もお待ちしております。

 

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2023/03/13

弁護士のためのPR(広報)実務入門─PRの考え方・平常時の活動から記者会見・ネット炎上対応まで

PRと弁護士、この二つは、えらく関連性が薄いという感じを受けるかもしれないが、弁護士は、謝罪会見とか不祥事の緊急対応でかり出されることが多いのである。

近時、弁護士が関わってる割には、稚拙な記者会見がyoutubeなどに溢れている。

そういうこともあって、私がPRプランナーの資格を取得したことや、PR実務研究会(仮)という研究会を作って研究を進めたことを切っ掛けに、弁護士目線のPR実務本を書籍にすることにした。

バックグラウンドの違うメンバーの目線をまとめたのでなかなか面白いものとなっている。

私は、Winny事件で得た逆境下でのPRのノウハウをできるだけ盛り込めたと思っている。

弁護士だけでなく、弁護士の戦略思考を知ることができる上で企業の方も必見である。

 

ちなみに、この本は、本文だけでなく、コラムも必見である。

私もすこしだけ関わらせてもらった

 

の裏話も少しだけ紹介している。

是非どうぞ。

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国破れて著作権法あり ~誰がWinnyと日本の未来を葬ったのか (みらい新書)

城所先生の新作が発刊された。

 

実は、城所先生は、私が本

を出版したとき、私の本を読むという長編の記事を書かれていたお方である。

Winny天才プログラマー金子勇との7年半』を読む①
『Winny天才プログラマー金子勇との7年半』を読む②
『Winny天才プログラマー金子勇との7年半』を読む③
『Winny天才プログラマー金子勇との7年半』を読む④
『Winny天才プログラマー金子勇との7年半』を読む⑤
Winny栄光なき天才:金子勇の悲劇を繰り返さないために(上)
Winny栄光なき天才:金子勇の悲劇を繰り返さないために(中)
Winny栄光なき天才:金子勇の悲劇を繰り返さないために(下)①
Winny栄光なき天才:金子勇の悲劇を繰り返さないために(下)②

今回の本は、この記事をまとめていろいろ追加した本となっている。

ここで書かれていることの多くは、私が、本を出そうとしたときに、金子さんにフォーカスするためにあえて書かなかったことである。

Winny事件とは、著作権法、刑事司法、ジャーナリズム、コンテンツビジネスの暗部が不幸な形に絡まって生まれた悲劇と言っても過言ではない。

そして、それは、当時も今も変わらない。

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