Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

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「Winny」も「天才プログラマー」も「金子勇」も盛り込んで検索ワードを意識しすぎな小説が、2020年4月24日にインプレスR&Dから出版されることになった。

 

インターネットウォッチの紹介記事

インプレスR&Dのリリース

PRタイムのプレスリリース

 

これは、壇弁護士の事務室のスピンオフブログ「アターニアットロー」を時系列に整理して、小説として書き直したものである。

執筆中は、当時のあれこれを思いだしては、怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり大変であった。

ブログからの移植という割には、出版まで数年かかっている。

途中で担当者も出版社も複数回変更された。ヒロインを登場させろとか、さび前の歌みたいに結末を最初に書いてインパクト勝負だとか、金子の内心を描いてないから小説として成立してないとか、業界人が読みもせずに業界風を吹かす発言にはヽ(#`Д´)ノな感じであった。
しかし、Winny事件や金子勇という人物について事実をそのまま伝えるという、根本のところはぶれずに書けたと思う。

ところで、この小説、元が無償で公開されてるんだからブログ見たらいいじゃんと言われかねない。しかし、既にアターニアットローを見た人でも楽しめるようにいろいろ工夫しているので、そう言わずに、小説版も見て欲しい。

Winny事件は、現在、映画化の企画もあるようである。私の役を誰がやるのかをいつも聞かれるが、私は知らない。。。。というより、その質問が多すぎて辟易している。

最後に、出版の際には紙面の都合で乗せれなかった方々にスペシャルサンクスをば(追加予定)。

坂和宏展(弁護士)さん 彼の「小説を読みたい」という一言がなければ、途中で止めてたと思う。ありがとう。

山本祐規子(元ロースクール生)さん ゲラの確認、示唆に富む指摘ありがとう。

 

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2022/09/01

第24回WILL

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今年もWillの季節がやってきた。というわけで、宣伝である。

Willとは、少年犯罪被害当事者の会のイベントである。

少年犯罪の被害者の遺族が中心となって結成された会で、私が司法修習生のときにはじまったのでもう24回である。

事件はいつか終わる。人々の記憶からも消えて行く。でも、子を思う親の心は消えない。

だからwillは続いていく。

少年犯罪被害当事者の会
大阪 大阪
20210日(土)午1時から
大阪⻄区ター(大阪市⻄区北堀江 4-2-7
大阪メトロ千日前線・⻑堀鶴見緑⻄⻑堀駅3号・7号出口から徒歩3分
500円
200人(先着順※新型コロナ感染症拡大の状況により、人数制限する場合があります。
少年犯罪被害当事者の会事務 代表 るり子 TEL 06-6478-1488

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2022/08/31

しょせん他人事ですからって取材で言った奴って凄くね?

タレント弁護士の清水陽平先生が監修の

しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~

のコミックが発売された。

出版記念ということで、私も一冊献本頂いたので、お礼に宣伝である。

タイトルにもなっている「しょせん他人事ですから」は、清水先生への取材の際清水先生がおっしゃったのが切っ掛けだそうである。

というわけで、依頼者に寄り添わない、相手の嫌なことを喜んでする、ほぼほぼサイコパスな弁護士は、清水先生がモデルなのかも知れない。

いや、実際の清水先生は、もっとミーハーなのでちょっとだけちがうか。

わざわざ、オビに主人公と角度あわせたような顔写真入れる清水先生に感涙である。

Obi

 

それは、さておき、このコミック、弁護士ものにありがちな「んなわけあるか!」がほとんど無いかなりリアルな内容である。

ないことも無いか。コミックではパラリーガルの人が登場しているが、パラリーガルというのが何物か不明である。ちなみに、パラリーガルが弁護士を遮って自分の意見を言いだしたら、その日に解雇しない方が不思議なレベルの話しではある。ただ、これは弁護士の奇異さを際立たせるための演出なんだろう。

ちなみに、個人的には、謎の専門用語を語って、「ネットに強いのにそんなこともわからねぇのか!」という相談者があるあるであった。

ホントにこういう相談者は多い。私も「日本語で説明してもらえます?」と一度言えたら良いのにと苦笑である。

一般の方にはもちろん、弁護士が見てもとても楽しめる内容になっている。

 

ところで、清水先生を出たがりって削って、本の売れ行きはともかく本業の機会ロスになるのではないかって?

気にしない気にしない。それそこ、しょせん他人事ですから。

お粗末。

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2022/08/13

ふくまてれび

お盆休みの中、1つの動画を拝見した。

 

 

ここに出てくる福間貴斗さんという人は、大阪市福島区で将棋バー「ルゥク」を経営している人である。

ルゥクには何度か行かせてもらったが、彼は、いつも周りに気を配り、笑顔が絶えず、誰とでもそつなくコミュニケーション出来る、男前である。私にはない要素をたくさん持っていている。もはや、うらやましくなりようもない。

こういう奴にはせめて将棋くらいは勝ちたいのであるが、彼は将棋も強い。元奨励会なのだから当たり前なのだが、駒落ち指導対局でもあまり緩めてくれない。これはすこし不満である。

この動画は、いつもそつない対応で自分を見せようとしない彼が少しだけ本心を覗かせてくれるものであった。

私は、何気なく見ていたが、彼が述べた一言

なんで報われないんだろう

に心を打たれた。

 

私は、彼が努力をしていないから報われなかったと言っているのではない。そんな訳はない。

努力なんて人の何倍もしているだろう。当たり前のことである。今更、言うまでも無い。

人一倍の努力をしても、夢がかなわなかったのである。

世の中には、自分がいかに努力したかを語りたがるおっさんが沢山いる。

しかし、自分でペラペラしゃべれるようなのに大した奴はいない。

彼が、自分のした努力に触れず、なんで報われないんだろうと淡々と言った姿に、彼が積み上げてきた努力や苦悩や経験したものの重さを感じたのである。

もしこの世に神がいるとしたら、神とはとっても不平等を愛している存在のようである。試練を与える割には結果を与えることを忘れがちである。

ただ、確かに、努力が報われた人生は素晴らしい。

しかし、報われなければ人生に意味が無いのではない。現に、彼の姿には尊敬の言葉しかない。

たとえ報われなくとももがいていく人生も捨てたものではない。そう思った。

 

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2022/05/21

護送金と電子計算機使用詐欺罪

 山口県阿武町が誤って振り込んだ臨時特別給付金4630万円の一部をオンライン決済サービスで決済代行業者の口座に振り替えた事案で、男性が電子計算機詐欺容疑で逮捕された事案が話題となっている。

 なんで振り込んだの?という疑問はおいておいて、この事件で何罪が成立するの?ということが議論されているのを良く見る。しかし、弁護士であってもけっこうおかしなことを言っているので驚いている。

 というわけで、現時点で日本一詳しい疑律の解説を試みることにした。

 

まず、この手の、人の金を勝手にした系の罪は、横領、業務上横領、背任、窃盗、占有離脱物横領、詐欺、電子計算機使用詐欺の成立を検討する。強盗や恐喝は暴行・脅迫が必要なのであまり考えない。

次に、この手の罪は、銀行債権をどうこうして利益を得たかという話しと、銀行の管理している現金をどうこうして利益を得たかということを別途考えなくてはいけない。

ちなみに、もし、委託信任が無くても債権であっても成立する横領罪があれば、本件の処罰に一番ぴったりなのであるが、そんなけしからん罪は現行法には存在しない、で、それぞれ、ちょっとずつ無理な解釈をどう埋めるかが問題になるのである。

まず、業務上横領と背任は、大ざっぱに言えば人の為に業務に従事する者の犯罪なので、単に誤振込された事案では難しそうである。


(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。


(背任)

第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 ただし、誤振込されても、返金義務を負うのでその範囲で事務処理をするとか言いだしたら背任になる。

 本件では、背任で起訴するのは検察にとってハードルが高いであろう。

 


(横領)

第二百五十二条
 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

 次に、業務上横領と横領は、物についての罪である。銀行預金は物ではないので、現金を物と考えることになるが、一般には銀行にある現金を預金者が占有しているとは考えられていない。なんでもありの刑事裁判所もさすがに物と債権の区別を混同することはない。

 

(窃盗)

第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

(遺失物等横領)

第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 

 窃盗であるが、他人の財物とあり、これも有体物と考えられている。特殊詐欺でクレジットカードを受け取って不正にATMから出金したような場合に、銀行が占有する現金に対する窃盗罪を認めるのが一般的である。で、現金は銀行が占有しているので占有離脱物横領も認めにくい。

 


(詐欺)

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
 
 詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させることを要する。1項は財物で、2項は不法な利益を得ることを要する。詐欺罪は、有体物に限られないのである。ただ、人に対する欺罔行為であることを要するので銀行の窓口から不正に出金したような場合は銀行に対する詐欺罪を認めることが多い。
 ただ、銀行口座は自分のなのに銀行を騙したことになるのか?という疑問があるかもしれない。
 この点、民事的には、最判平成8年4月26日が、振込を受けたものと振り込んだ者との間に、法律関係が無いような場合でも、銀行との関係では振込を受けたものの預金となるという(これは荒すぎる説明か?)を認めている。
 じゃあ、自分の預金の権限の範囲だから詐欺にならないじゃないかとおもうかもしれないが、そこは血に飢えた刑事裁判所である。最判平成15年3月12日(刑集57巻3号322頁)が過誤払いされた預金の詐欺罪を認めているのである。
 銀行にとって,払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは,直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄であるといわなければならない。これを受取人の立場から見れば,受取人においても,銀行との間で普通預金取引契約に基づき継続的な預金取引を行っている者として,自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合には,銀行に上記の措置を講じさせるため,誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務があると解される。社会生活上の条理からしても,誤った振込みについては,受取人において,これを振込依頼人等に返還しなければならず,誤った振込金額相当分を最終的に自己のものとすべき実質的な権利はないのであるから,上記の告知義務があることは当然というべきである。
 そうすると,【要旨】誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求することは,詐欺罪の欺罔行為に当たり,また,誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから,錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する

要するに、自分の預金であっても、銀行の忖度したいお気持ちのために告知義務があって、その告知義務に反して払い戻しを受けた場合は詐欺であるということのようである。

私は、これは刑事と民事の逆転現象であって、ここまで処罰の対象にするのは反対である。

そもそも、過誤払いのときに、送金者に振込返すとか、窓口で引き出して振込人に渡す等の行為にまで犯罪とされるべきではない。上記の平成15年判決を見る限り、これらの行為まで処罰することにならない理由が全くわからない。

そして、現在、人に対するものであることを要すると思われていた偽計業務妨害の「偽計」について、人に向けられる必要はないとした高裁判決があるので、機械を通じて間接的に人の意思に反するような処理をさせた場合にも2項詐欺を認めるという構成を裁判所が言いだしてもさほど驚きはしない。

ただ、本件で詐欺罪で起訴する可能性は少ない。そこで無理するなら電子計算機使用詐欺で無理した方がハードルが低いだろうというのが一般の感覚だからである。

 

(電子計算機使用詐欺)

第二百四十六条の二 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

 

この電子計算機使用詐欺はもともと、機械に対して騙すという行為は観念しにくいので立法された法律である。

偽造テレフォンカードをつかった様な場合、人を騙したわけではないし、利益を得ただけで窃盗をしたわけでもないので処罰できないのではないかという問題があり(なお、最判平成3年4月5日は変造有価証券の罪をムリクリに認めているので不可罰というわけではない)、機械に対する詐欺のような行為を行って利益を得る行為を処罰するために昭和62年改正で規定されたのである。

で、作ったはいいけど、携帯時代の到来とともに、どこに行くのか解らない規定になっている。

この電子計算機使用詐欺は電子計算機を誤作動させることを念頭に規定されているが、恐ろしく条文がややこしい。

 

 {

   { 人の電子計算機に

     { 虚偽情報

       or

      不正な指令

      }

     を与えて財産権の

     { 得喪

       or

       変更

      }

     に係る不実の電磁的記録を作り

    }

   or

   { 財産権の

     { 得喪

       or

       変更

      }

     に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の様に供して

   }

 }

 財産上不法の利益を

  { 得

    or

    他人にこれを得させた

   }

という構成になる。

 

本件では、不実の電磁的記録を作るか、虚偽の電磁的記録を供する場合に該当するかが結構問題になりそうである。

本件は、他人のキャッシュカードやオンラインバンキングを使うことが問題になっているわけではない、誤って大金を振り込んでしまったので、返金して欲しい者がいるということであり、そういう人の気持ちを振り込まれた側の銀行が忖度することを法的にどう評価するかである。 

一般には虚偽とは、真実ではない場合をいうので、自己の正当な権限で送金した場合は含まないと考えそうである。不実というのも、事実ではないという場合に該当するので、自己の正当な権限で送金した場合は含まないと考えそうである。

とすると、電子計算機使用詐欺は成立しないというのが素直な解釈であり、今後の立法により解決すべしということになりそうである。

しかし、「不正な指令」は背景事情を含め総合的に考えると言う立場をとり、さらに、「不実」とは背景事情を知っていたら銀行が対応を拒否したかもしれない場合を広く含むとか「虚偽」は銀行が忖度できないような事情を広く含むという見解をとれば本件で電子計算機利用詐欺罪の成立が可能となる。

 

以上をふまえて私見である。

「不正」と「不実」は、機械の銀行職員やさらに向こうの誤振り込みしたおじさんかおばさんのお気持ちまで含めて総合衡量するという立場であれば罪の成立が可能かも知れない。しかし、そういうものまで虚偽とか不実に含めるのは構成要件を過度に曖昧にさせるので反対である。
 

電子計算機使用詐欺罪の成立を認める立場の方で、平成15年判決をパラレルにするという人が多いが、通知義務を認めながら通知しなかった点に欺罔を認めるのであれば、ATMで引き出して、振込人に手渡す行為も処罰の対象になりかねない。しかし、本件だけを有罪にする理屈を提示している人は皆無である。私は、平成15年最高裁を含めても、相手は機械なのだから誤った振込みがあった旨を通知すべき信義則上の義務なんてものは無いし、通知する方法はないと思っているので、電子計算機使用詐欺は成立しないという立場である。

そして、不可罰がおかしいというのであれば、立法で解決するのが民主主義であり法治国家と思っている。

 

ただ、血に飢えた刑事裁判所がそう考えるかは別の問題で、本件で電子計算機使用詐欺を認める可能性は高いと思っている。

 

で、この男性であるが、何百万円どころか自分の人生までベットしてのギャンブルになったようである。ただ、かなりのハイリスク・ローリターンということは否めない。

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2022/01/24

コインハイブ事件最高裁判決

ウェブサイトを閲覧した人のパソコンの処理能力を利用して、仮想通貨(暗号資産)のマイニングをする「コインハイブ」(Coinhive)のスクリプトをサーバに保管したことが不正指令電磁的記録保管の罪(通称ウイルス罪)に該当するかが争われた事件で、最高裁判所第一小法廷(山口厚裁判長)が2022年1月20日、2審の東京高裁判決(栃木力裁判長)を破棄し、無罪とした横浜地裁判決(本間敏広裁判長)の判断が確定することになった。

私は、もともと、平野先生のファンで

コインハイブ事件高裁判決@判例時報

を記事にしたり、学会で取り上げたり、いろいろ追っかけみたいなことをしているが、実は、高裁で逆転有罪判決となったことに憤りを覚えて上告審に弁護人として参加していたので、この事件については、まぁまぁ、事情通である。

 

判決文は既に、裁判所のホームページにアップされている。


原判決を破棄する。
本件控訴を棄却する。

はあまり見慣れない主文である。被告人の無罪が書いていないのに違和感があるかもしれないが、1審が無罪なので控訴を棄却したら無罪なのである。

今回の最高裁判決は、

反意図性は,当該プログラムについて一般の使用者が認識すべき動作と実際の動作が異なる場合に肯定されるものと解するのが相当であり,一般の使用者が認識すべき動作の認定に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,プログラムに付された名称,動作に関する説明の内容,想定される当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。


また,不正性は,電子計算機による情報処理に対する社会一般の信頼を保護し,電子計算機の社会的機能を保護するという観点から,社会的に許容し得ないプログラムについて肯定されるものと解するのが相当であり,その判断に当たっては,当該プログラムの動作の内容に加え,その動作が電子計算機の機能や電子計算機による情報処理に与える影響の有無・程度,当該プログラムの利用方法等を考慮する必要がある。

と基準を示している。

反意図性については、一般の使用者が認識すべきという基準で1審2審につづいて肯定している。

しかし、裁判所が一般人の考えを理解することは出来ないだろうし、ソフトウェアクリエイターにとって裁判所の語る一般人は起訴されてみないと何を考えているか分からない人なので萎縮的効果たっぷりである。実際に、裁判所が語る一般の使用者とやらは他人にとても厳しい人のようである。

私はこの基準に不満である。

他方、最高裁は、不正性については否定している。社会的に許容し得ないとは言えないらしい。一般の使用者が認識するべきものと社会的に許容出来ないものってそんなに異なるのか?という疑問はさておき、社会的に許容し得ないかという基準も非常に予測困難である。実際に、ほぼ同一の基準で職業裁判官の判断が分かれたようなあやふやなものである。社会とは人によってとらえ方がまちまちなようである。

というわけで、コンピュータウイルスの罪は、起訴されて有罪かどうかがわかる

10万円ガチャ罪

になったのであるが、有罪かどうか予想困難なのは検察も一緒なので、今後、ウイルス罪が謙抑的に運用されるようになったらがんばって弁護した甲斐があったというものである。

 

今、私の心の中にあるのは、無罪になったことへの安堵感と、主任の平野敬弁護士や若手の先生方の勝利への飽くなき執念を見せてもらえた喜びと、事件が終わったことの一抹の寂しさが入り交じった複雑な思いである。

もちろん無罪という結論は何よりも重要である。

人の人生が代わる瞬間の喜びは何物にも代えがたい。私は、未だこれに勝るものを知らない。

しかし、それは一瞬のことである。今後、このような喜びを感じる機会が無いかも知れないと考えると少し寂しいのである。

もしかしたら、無罪に向けて闘っている時間が、自分にとっては貴重な時間だったのかもしれない。

これは、もはや、ジャンキーの世界である。

今回の最高裁無罪判決で、幸運にも簡裁無罪、地裁無罪、高裁逆転無罪、最高裁逆転無罪、再審無罪という異なる無罪を経験することができた。刑事専門弁護士というわけでもないのに貴重な経験である。

やはりジャンキーの世界である。

無罪弁護ロイヤルストレートフラッシュということで、酒の席での話題に使わせてもらおうと思っている。

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2021/12/19

10年

12月19日が来た。

2011年12月19日にWinny事件の最高裁決定が出て、もう、10年になる。

いつの間にか10年である。最近のような気がする。

事件のことを思い出しながら、今日という1日を過ごしたいと思う。

 

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2021/08/25

じょいんとあくしょん

昨日、反社組織のトップに対する死刑判決が下されたという記事をみた。

量刑はともかく、共同正犯を免れるのは難しいと思っていたのでそれほど驚きではない。

ただ、共謀共同正犯の基本を理解してないと何のことだか解らないだろう。

というわけで、ほとんど素人を無視した解説をすることにする。

今回は、共謀共同正犯が問題になった訳であるが、この共謀共同正犯というのは、実際に実行していなくても共同正犯に問えるという理論である。

そもそも共謀共同正犯は、直接実行した奴が悪くて間接的に関与した者は従属的であるという刑法典の規定に対して、組織の上位の者が共犯というのはおかしいということから正犯にするために生まれた理論で、いわば裁判所の処罰への意欲が法をねじ曲げた理論である。

で、この共謀共同正犯が最高裁で注目されたのは練馬事件(最判昭和33年5月28日 刑集12巻8号1718頁)である。

練馬事件というのは、労働争議に関連してお巡りさんが撲殺された事件である。

当時、共同正犯というのは、実行行為を共同してなければだめと考えられていたので、共同正犯は成立しないと激しく争われた。

この事件で最高裁は、共謀共同正犯を認めつつ

共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互に他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が認められなければならない。

と判示した。

この判例により「共同意思主体」説が大流行するとともに、「相互補充関係」「自己の犯罪」「謀議」の要件が示された。

ただ、この時点では、「謀議」とは、具体的に話をするものを意味すると考えられていた。

それが大きく変わったのはSWAT事件(最判平成15年5月1日 刑集第57巻5号507頁)である。

これは、暴力団間の抗争中に若頭が護身用に銃を所持していたことについて、組長が若頭と共同所持していたとして共謀共同正犯に問われた事案である。

直接の正犯である若頭は一貫して、組長からは銃の所持を禁止されていたが、自分の判断で所持したと言い続けていたのである。

これについて、最高裁は、

個々の任務の実行に際しては,親分である被告人に指示されて動くのではなく,その気持ちを酌んで自分の器量で自分が責任をとれるやり方で警護の役を果たすものであるという共通の認識があった。

自発的に被告人を警護するために本件けん銃等を所持していることを確定的に認識しながら,それを当然のこととして受け入れて認容している。

 前記の事実関係によれば,被告人とCらとの間にけん銃等の所持につき黙示的に意思の連絡があったものと認められる。

と判断した。

この裁判例では、「相互補充関係」の要件も「自己の犯罪」の要件もどこに行った感があるが、ここで問題にされたのは「謀議」である。

というのも、黙示の意思連絡というのは、一般の法律家の理解では、証拠を総合すれば、明示的に意思連絡したのと同視できるような事実関係がある場合を言う。

しかし、子分の誰かが銃を持っていると認識していても、明示的に銃の所持を話合ったことと同視できる程の事実関係はない。

そこで、それを補うのが指示される前に動くのが当然という暴力団という組織の特殊性であり、この裁判例は暴力団という組織の特殊性故の理論と考えられていた。

深澤裁判官の補充意見でも

被告人はA組の組長としてこれら実行行為者に対し圧倒的に優位な支配的立場にあり,実行行為者はその強い影響の下に犯行に至ったものであり,被告人は,その結果,自己の身辺の安全が確保されるという直接的な利益を得ていたものである。 

と暴力団組織の特殊性に言及している。

また、謀議の相手が、具体的に誰ということを認識して無くても、子分の誰か程度の認識でも謀議であるとされたのである。

これも暴力団組織の特殊性くらいに考えられていた。

 

このように暴力団相手の特別理論と思われていた黙示の意思連絡であるが、実際は違った。

それがHPS事件(令和3年2月1日)である。

これは、動画投稿サイトとライブチャットで無修正なものを配信した配信者と、配信システムの外注先の社長と相談役が共謀共同正犯に問われた事案である。もちろん、配信者と外注先に意思連絡らしきものは全く存在しない。

他にも多数の論点があるが共同正犯について最高裁は、

本件各サイトに無修正わいせつ動画が投稿・配信される蓋然性があることを認識した上で,投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても,これを利用して利益を上げる目的で,本件各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧又は観覧に供するという意図を有しており (中略)無修正わいせつ動画を投稿・配信することについて,黙示の意思連絡があったと評価することができる。

と判断した。

ここでは、SWAT事件で示されていた強度の支配関係もない。認められるのは、ただ、「利用関係の認識程度」である。

せいぜい不特定多数に対する幇助の意思程度とも言えよう。でも、幇助ではなく共同正犯なのである。

Winny事件以降、京都で幇助での起訴は決裁が下りなくなったから、共同正犯で起訴しているとも聞くが、そんなことはどうでもいい。

誰かもわからないシステムの利用者とシステムの外注先の社長らとの間に謀議が認められることになったのである。

つまり、不特定人との謀議というのが完全に認められたとともに、その不特定の利用者のうちに日本のユーザがいてシステムを日本の法律的に違法な利用方法で利用することで自分も利益を得ているという程度認識(その不特定の利用者のみから利益を得るというわけでも、主たる利益というわけでもなく、その不特定の利用者からも利益を得ている程度の認識があればいい)があれば共同正犯ということになったのである。

要するに、システムの外注先は、システムを用いて悪いことをしている人がいると認識していたら謀議有りということである。

いや、システムに限らない。なんでもありか。

この事件の最高裁判例解説は、事例判断であることを強調しているが、説得力の無さは半端ない。

練馬事件以来の「謀議」の要件は、こうやって判例変更の手続きを経ずに完全に骨抜きにされたのである。

 

じゃあ、共同正犯じゃなければいいのかというと、間接正犯では、社長というだけで、間接正犯になるという裁判例もでていて、間接関与者の処罰は何でもありの世界になっている。

 

こういう現状に鑑みれば、暴力団組織のトップに共謀共同正犯に問われるのは極めて容易と言わざるを得ない。

私は、組織のトップの方が

「公正な判断をお願いしたんだけど、全部追認、追認。あんた、生涯、この事後悔するよ」

と言ったという記事を見て、

いや、親分さんでも、日本の刑事司法が公正とでも思ってたんだ!

と驚いたところである。

 

既に日本の刑事司法は宗教裁判レベルになっている。

ただし、自分が捕まるまでそのことを自覚しない。

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2021/07/24

人質司法

カルロスゴーンの弁護人として一般の人にも名を知られるようになった高野隆先生の渾身の一冊「人質司法」が出版された。

そこで早速購入して、勝手に案件記事を書くことにした。

高野先生は、(当時は)米国に留学すれば金儲け出来る弁護士になれるのに、あえて、刑事弁護の途を選んだ希有なお方である。

そのおかげで、キースエバンスの「弁護のゴールデンルール」という名著が日本に紹介されて、日本の法廷弁護術が飛躍的に向上したのである。

高野先生は、やめよう人質司法T シャツを作り、寝間着にするくらい人質司法と闘っているお方である。

 

写真の説明はありません。

 

高野先生は、手越祐也の代理人弁護士として宮崎駿ネタでバズったときも「似てないんだけどなぁ」と曰ったいささか空気を読めないお方である。

(いや、100%似てるってバズるやろ。。。)

 

そんな高野先生が、日本が世界から中世と非難される人質司法の象徴である、

被疑者の心を折るためとしか思えない①起訴前の長期勾留

黙秘権を覆す強力なエンジンである②取調受忍義務

否認への見せしめ用と言わずにはいられない③接見禁止

宗教裁判並みに安易に認められ勾留決定や保釈不許可を退ける根拠となる④「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」

などについて先進国の法制度との比較や、日本の立法経緯、特に、リベラルな刑事訴訟法を立法したにもかかわらず裁判所が人権侵害的な解釈を打ち出していった経緯まで、脚注で引用文献までつけて緻密に書かれている。

もちろん、カルロスゴーンの弁護について、彼が、日本の刑事司法に失望していく経緯も記されている。

 

この本は、人質司法に関するものが網羅されており、全弁護士が座して読むべきと思う。

ただ、この本は、法学セミナーの連載企画ではなく、新書で出版されている。

新書は素人の方が手軽に読むはずのものである。。。。が、ブルーバックス以上に読者を選んでいる本となっている。

そのあたり同じ新書でも、弘中淳一郎先生の「無罪請負人」の様なマーケットへの鋭い嗅覚はまったく感じさせない。

 

というわけで、高野先生のお人柄を含めて、特に、先生が立法時の資料を見つけてワクワクしながらこの本を書いているところを思い浮かべながら読むとより一層楽しめる本となっている。

是非、どうぞ。

 

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2021/07/07

また命日

昨日は、Winny金子さんが亡くなって、8度目(命日を1とすると9度目?正しい数え方が解らない)の命日であった。

彼のために闘っていた日々を思いだしながら、1日を過ごしていた。

もう、昔のことなのだが、彼と話したこと、笑ったことは、案外忘れないものである。

そのどれもが、今となっては懐かしい。

最近、金子さんのことを話しする機会や、テレビで取り上げてもらえる機会が増えたような気がする。

彼の再評価は、彼の為に闘ってきた私にとってせめてもの慰めである。

ただ、金子さんは私より1才上である。私の役が金子さんよりえらいおっちゃんというのは勘弁してもらいたい。

 

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2021/06/15

日弁連シンポジウム「2021年改正プロバイダ責任制限法の総合的検討」

「2021年改正プロバイダ責任制限法の総合的検討」というシンポジウムをやることになった。

今回は、木村花さんのお母様である木村響子さんをお呼びしている。

総務省の担当者が被害者と同席するのは初めてかもしれない。

今回は、歩く立法事実のような木村さんのまえで、日頃、立法事実がないとかおっしゃる総務省がどんなことを言うのか楽しみである。

観念的な話ではなく、実務的に実効的な法制度は何かという議論をしたい。

このシンポはウェビナー開催で、もちろん、一般の参加も可能である。

是非、是非、参加いただきたい。

日弁連HP

日時 2021年7月12日(月) 18時~20時
場所 Zoomウェビナーを利用したオンライン開催
参加費・受講料 参加費無料・事前申込制
参加対象・人数 どなたでもご参加いただけます。
内容(予定)

◆報 告:木村響子氏(NPO法人 Remember HANA(設立準備中)代表理事)
「インターネット上の誹謗中傷の実情」

◆報 告:小川久仁子氏(総務省総合通信基盤局電気通信事業部消費者行政第二課長)
「2021年改正プロバイダ責任制限法の概要」

◆報 告:壇俊光弁護士(日弁連消費者問題対策委員会幹事)
「2021年改正プロバイダ責任制限法の実務的問題点」

パネルディスカッション
パネリスト:上記報告者・齋藤隆弁護士(元東京高等裁判所部総括判事)
コーディネーター:板倉陽一郎弁護士(日弁連消費者問題対策委員会委員)

申込方法

申込期限:2021年7月8日(木)

下記のURL、又は二次元バーコードからお申し込みください。
お申し込みいただいた方に、Zoomウェビナーの接続情報などをお知らせいたします。

icon_page.png申し込みフォーム210712_code.png

※申込状況等によっては、申込締切り前に募集を打ち切る場合があります。あらかじめご了承ください。

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