壇弁護士の事務室について

「壇弁護士の事務室」は、大阪弁護士会所属の弁護士壇俊光が、第一線の現場にいる弁護士の目から、感じることを日々書きつづっています。

 

 

所属会等

2000年 大阪弁護士会登録 北尻総合法律事務所 所属

連絡先

info@dan-law.jp (半角に直してください)

TEL 06-6364-0181

但し、メールや電話による法律相談等は顧問会社に限らせていただいております。

顧問契約に関しては上記までご連絡ください。

 

事務所住所 

〒530-0047

大阪市北区西天満6丁目7番4号大阪弁護士ビル501号室

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営業時間
 

平日(月曜日~金曜日) 10:00~17:00(要予約)
ご予約いただいた場合については、土日祝を含む営業時間外のご対応もいたしております。

 
取り扱い分野

IT(電子商取引、ネットワーク、発信者情報開示請求、ソフトウェア、その他)

知的財産(特許、著作権、商標、その他)

医療過誤

一般民事(契約書作成、貸金、交通事故、不動産取引、借地借家、土地明渡し、その他)

倒産事件(任意整理、破産、民事再生、その他)

企業法務一般(商取引、債権管理、独占禁止法、株主総会指導、セキュリティ等)

家事(離婚・相続など)

刑事事件(捜査弁護、公判弁護、告訴・告発)。

企業コンプライアンス

経営診断

 
資格等

弁護士

中小企業診断士

情報セキュリティスペシャリスト

基本情報技術者

応用情報技術者

プロジェクトマネージャー

ISMS審査員補(ISJ-C06773)

プライバシーマーク審査員補

 

主な参加事件

Winny事件弁護団 事務局長

YahooBB!個人情報漏えい被害者弁護団

ダスキン大肉まん事件株主代表訴訟

ドロップシッピング被害者弁護団

近未來通信被害者弁護団

 

著書 論文等

「最新著作権関係判例と実務」知的所有権問題研究会編 民事法研究会

「プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の実務的な問題」情報ネットワークローレビュー第6巻87頁

 

所属委員会等

日本弁護士連合会コンピュータ委員会等

近時の講演・講師テーマ

「Winny事件の弁護活動」

「インターネット消費者保護~基礎編」

「インターネット上での誹謗中傷対策」

「発信者情報開示手続きの基本」

「企業における個人情報保護とセキュリティ対策」

「海外における商標冒用事件」

「RCCを用いた企業再生スキームについて」

「インターネットの著作権問題」

「クラウドの著作権問題」

「E-コマース法制」

「電子商取引 基礎編」

「ネットビジネスの注意点」

「下請法解説」

「中小企業の法律問題」

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2016/08/10

東住吉女児焼死事件再審無罪判決

このブログでも何度か取り上げている、東住吉女児焼死事件の件であるが、無事、無罪判決が出たようである。

記事

大阪市東住吉区で平成7年、小学6年の女児=当時(11)=が焼死した火災で、殺人などの罪で無期懲役刑が確定し、昨年10月に釈放された母親の青 木恵子さん(52)の再審判決公判が10日、大阪地裁で開かれた。西野吾一裁判長は「自白に信用性も任意性もなく、虚偽であることは明らかだ」として捜査 の違法性を認定し、青木さんに無罪を言い渡した。

 戦後に発生し、死刑か無期懲役が確定した事件で、再審無罪となったのは9件目。大阪地検は無罪判決に対する上訴権放棄の手続きを地裁に申し立てる方針で、青木さんの無罪が即日確定する。


捜査の経緯については、以下の記事が詳しい。

記事

青木さんの弁護人として、公判でも取り調べの問題点を主張し続けた。だが当時の刑事裁判で、自白は証拠の「王様」だった。「重大事件で虚偽自白をするとは考えがたい」と一般論で信用性を認める裁判所に「どうして分かってくれないのか」と無念さばかりを味わわされた。

彼女は、最後まで、有罪が確定しても闘う弁護士が、当番弁護で来てくれたことだと思う。

これは奇跡である。

ちなみに、当時から、違法な取調を懸念する裁判官がいたようである。

記事

 当時、大阪地裁の裁判官として拘置所での勾留決定を出したのが伊元啓弁護士(兵庫県弁護士会)だった。「放火は証拠のたぐいが焼失するため、捜査は自白とその裏付けの繰り返しになる」。留置場に勾留して取り調べが厳しくなり過ぎることを懸念したのだ。

 しかし、伊元氏の決定は検察側の準抗告を受け、別の3人の裁判官により取り消された。青木さんは2日で東住吉署に移された。

無罪が良かったのは当然である。しかし、そんなものは、失われた日々に報いるものではない。

当時の捜査を担当した警察官、思い込みと自白の強制と杜撰な捜査で、人の人生の多くを奪った警察官は、自らを少しでも悔いているであろうか。

そして、有罪を認定した裁判官は、この判決を悔いているであろうか。

えん罪は、確かに、警察や検察が原因である。
しかし、最終的には裁判官が作り出しているのである。

今も昔も。

 

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人を呪わば穴二つ

大渕弁護士の銭ゲバな話は、すでに、

記事

で取り上げたところである。

これについて、某番組で前任者であった、住田弁護士が、マスコミの取材に応じておはなししているようである。

記事

法テラスの規則を知らなかったというのがいいわけにならないのも、こういう場合に顧問料をもらうことが珍しいこともそのとおりである。

問題はそこでは無い。

弁護士会から聞くと、副会長(理事者)がわざわざ出ていって、『場合によっては(東京弁護士 会から)退会も』ということを示唆されるぐらい、厳しいことをおっしゃられた。それでようやく(5カ月後に返金に)応じたと聞いている」と依頼人への返金 に応じた経緯の裏側を明かしていた。

綱紀に関する事項は、超守秘義務に関することである。
それを、弁護士が聞かれて教えたというのは信じがたい。
仮に、弁護士会から聞いたことをペラペラと住田弁護士がマスコミに話ししたというのであれば、それを教えた弁護士会のお方もろとも懲戒を免れない。

行列ができる先生とやらは、知性は問われないのか?
どいつもこいつも。

 

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2016/08/03

大渕愛子弁護士が謝罪会見

行列の出来る法律相談所でレギュラーの大淵弁護士が業務停止1ヶ月の懲戒処分だそうである。

記事

要するに、法テラスの報酬をこえる金額を受領してはいけないという規則を無視して差額を依頼者からもらったということである。

で、大淵先生は記者会見を開き、言い訳にならないけどと前置きして曰っておられた。

国内の事件を扱ったことがなく、それまで中国関係の仕事をしていた

国内事件を教えてくれる先輩もボスもいない中、手探りでやって大きな過ちを犯した

文字どおり、1ミリたりとも言い訳になってない。

こんなことは、分からなければ電話1本で教えてもらえる。手探りでやれば、気づかないことはない。

行列のできる法律相談所というのは、行列ができさえすれば理由・能力を問わないのか?

不思議だなっしー

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三菱燃費不正で被害弁護団

記事

三菱自動車の燃費不正問題で、大阪弁護士会の弁護士8人が2日、同社の責任を追及するため「三菱自動車燃費偽装事件被害弁護団」を結成し、ホームページを 開設した。不正が発覚した軽4車種の購入者を対象に、消費者契約法に基づいて販売会社に購入代金を請求し、応じなければ大阪地裁に集団訴訟を起こす方針。

この弁護団のメンバーは良く知ってる。というより、事務局長である。

報道では、URLが掲載されていないが、
事務処理の煩雑化を避けるために、原則としてWebからの申込みをお願いしている。

三菱自動車燃費偽装事件被害弁護団公式ホームページ

なので、どうぞ。

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2016/08/01

井垣元裁判官に対する懲戒相当議決

井垣元裁判官が、酒鬼薔薇聖斗事件について、雑誌に全文を掲載させた件については、

酒鬼薔薇の報道について

井垣康弘元裁判官という人

で取り上げて、やんわりで無く削っている。

で、この件、大阪弁護士会で懲戒相当となったようである。

記事

神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件の加害男性(34)を医療少年院送致とした神戸家裁の決定全文を「文芸春秋」に提供したとして懲戒請求 された井垣康弘弁護士について、大阪弁護士会綱紀委員会が「懲戒相当」と議決したことがわかった。井垣弁護士は同家裁裁判官として決定を出しており、綱紀 委は「裁判官としての守秘義務に違反する」とした。

彼がしたのは、歪んだ自己顕示欲そのものであり、相応の報いを受けるべきである。

ただ、やむを得ないとはいえ、裁判官を弁護士として懲戒することに対する違和感がある。

というのも国家公務員法100条には、公務員が職を退いた後も守秘義務が有り、109条には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が定められているのであるが、これは、一般職の公務員に対する規定であって、特別職である裁判官には適用が無い。

そして、裁判官に対する義務を定めた裁判所法には、裁判官在職中の懲戒規定しかなく、裁判官退任後の守秘義務規定や裁判官の秘密漏えい罪がない。

裁判官が、そういうことをすることを想定していなかったということらしいが、高度な倫理が求められる裁判官を規律する法律が全くのザル法というのはいただけない。

何らかの法的手当をするべきである。

なお、

 井垣弁護士は29日、読売新聞の取材に「納得できない。決定全文は社会全体で共有し、再発防止を考える必要があり、後悔していない」と話した。

だそうである。
彼が愚行を後悔することが無いのが残念である。

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2016/07/26

Pokémon GOの法律問題

最近、日付の変わりかけた公園で、ゾンビみたいにスマホを持ってゆらゆらしている人達を見て慌ててインストールしたポケモンGOである。

ポケモンGOでは、いろいろと騒ぎになっているそうなので、ポケモンGOの法律問題をQ&A形式で適当にまとめてみた。

Q1 ポケモンGOをして、他人の住居に入ったときはどうなる?
A1 私有地かを問わず立入り禁止場所に勝手に入ったら建造物侵入罪(刑法130条)です。
   入るつもりはなかったって言い訳?
   警察に通じるわけないです。

Q2 ポケモンGOの使用を禁止している施設で、ポケモンGOをしたらどうなりますか。
A2 施設管理権の範囲内かでケースバイケースです。管理権の濫用・逸脱にならない範囲で利用を禁止できます。この場合利用禁止に違反したら、不法行為(民法709条)が成立する場合があります。

Q3 ポケモンGOを使用しながら自動車を運転したら。
A3 自動車等を運転している時に携帯電話・スマホを使用すると道路交通法違反です(道路交通法120条1項11号)。人をケガさせた場合過失運転致死傷(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)に該当します。

Q4 ポケモンGOを使用しながら自転車を運転したら
A4 スマホを使用しながら前方に注意せずに相手をケガさせたような場合は、過失致死傷(刑法209条)に該当します。

Q5 ポケモンGOを使用しながら歩いていたら

A5 スマホを使用しながら前方に注意せずに相手をケガさせたような場合は、過失致死傷(刑法209条)に該当します。

Q6 ポケモンGOでチートプレイした場合

A6 ストーリーが変わるようなチートツールの提供は、著作権法違反(著作権法119条)の可能性あります。

Q7 ポケモンGOに関して運営会社を訴えられないか?

A7 ポケモンGOには、運営会社が責任を負わない免責や準拠法・仲裁合意等の規定があります。

   参考 http://toyokeizai.net/articles/-/128679

   しかし、日本の民事訴訟法は、消費者側に強く作っていますので、(民事訴訟法3条の4、3条の7第5項、法の適用に関する通則法11条、仲裁法附則3条2項)、日本の消費者が、日本で訴訟を起こす場合には、あまり気にせずに日本の法律に基づいて訴訟提起可能です。

Q 他には?

A 気が向いたら、追加します。

当事務所は、ポケモンGOに関する事件も取扱っております。

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2016/07/18

「忘れられる権利」認めた地裁判断 高裁が取り消し

記事

過去に罰金刑を受けた男性が、当時の記事をグーグルに表示させないよう求めたことについて、東京高等裁判所は削除を命じた地裁の決定を取り消し、男性の申 し立てを退けました。地裁の決定は過去の出来事を知られたくない「忘れられる権利」を初めて認めたものとして注目されていましたが、高裁で判断が覆されま した。

なんだか、マスコミの人は忘れられる権利が大好きで、EUは忘れられる権利が認められるが、日本は無いので、日本は遅れている的な話にしたがる。

しかし、日本では、人格権侵害を理由とする削除が広く認められているし、EUも対立利益を無視して何でも消せるわけで無い

というわけで、重要なのは名前では無い。

東京高裁も、「実体はプライバシー権などに基づく申し立てと変わらず、独立して判断する必要はない」としているらしいが、そのあたりは冷静な対応のようである。

東京高裁は、耳目を集める類の事件であること等から削除義務を認めなかったようであるが、こっちの方はかなり重要である。

また、東京高裁は、検索可能であることは、未だ、非公知性を失っていないのではないかという疑問を示しているようであるが、それを言いだせば、一度検索エンジンでヒットすれば永遠に実名報道OKになりかねない。

犯罪報道は、いつまで実名であることが許されるのか。
これは、結構難しい問題である。

この事件は、抗告許可申立する予定と聞いているが、最高裁の判断を見てみたいと思うのは私だけではなかろう。

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2016/07/06

7月6日

今日は、金子さんの命日である。
もう、あれから3年にもなるのかという感じである。

アターニーアットローを読み返してみようとおもう。

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2016/06/13

大手AVプロダクション元社長ら 労働者派遣法違反容疑

記事

経営していた芸能事務所に所属していた女性を、実際の性行為を含むアダルトビデオ(AV)の撮影に派遣したとして、警視庁が11日、労働者派遣法違反容疑 で、大手AVプロダクションの元社長ら同社の男3人を逮捕したことが、捜査関係者への取材で分かった。

この記事を見て、AVプロダクション?と思われた方がいるかも知れない。

SOD社員シリーズはどうなのか知らないが、一般的に、AVメーカーが出演交渉するのではなく、プロダクションに女優の出演を依頼して製作している。

つまり、撮る人と出演させる人は別なのが普通である。

今回のプロダクションはAV専門のようであるが、中には芸能プロダクションと言いながら、こっそりAVのプロダクションもやっているところもあったりすると聞いている。

というわけで、撮影の現場で、AVメーカーが女優にAV出演を強要することは、まず考えられない。

最近、AV出演強要を扇情的におっしゃる弁護士が、AVメーカとプロダクションを意図的にか混同されておられるようであるが、この記事は、その点については明白に区別しているようである。

ただ、今回の報道を見ると、女優さんが嫌がっているのに出演させたのが問題であるかのような記述があるが、記事を見るとミスリードのようである。

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
第五十八条  公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者派遣をした者は、一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

AV出演というのは、男優さんに対して、性的なあれこれがあるので、公衆道徳上有害な業務であり、強要もへったくれもなくアウトというのがお巡りさんの理屈のようであり、それを認めた裁判例もある。

ただ、この理屈をまともに考えると、AVはおろかVシネマとかもアウトになってきそうな感じである。AVに誇りをもって出演されている人もいるようなので、見る聞く無しに「公衆道徳に有害」と決めつけるのは躊躇する。

どこまでを「公衆道徳に有害」という曖昧極まりない規定で処罰するべきか。かなり難しい問題である。

そもそも、AVプロダクションが所属の女優を出演させることが、労働者派遣に該当するのか?という問題があり、これはこれで難しい。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
また、この記事を見ると件の女性は、総集編も含め、500作品以上に出演されておられるようなので、何百回も出演されるほどの強要ってなんなんだろうねぇ。。って気もする。

ちなみに、個々の女優さんや作品はよく知らないので、AVコンシュルジュの某弁護士にお問い合わせください。

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2016/06/11

アイデンティティー権の件

大阪地裁が、他人に成り済まされない権利を「アイデンティティー権」として認めたという報道がなされた。

共同通信

SNSでは、ネット上の匿名性を背景に、他人名義のアカウントを作って成り済ました人物が勝手な発言をするなどの被害が問題化している。新たな権利が定着 すれば、このような行為の防止や早期被害回復が進むとみられる。原告代理人の中沢佑一弁護士によると、こうした権利を認めた司法判断は初。

ただ、この記事、限りなく飛ばし記事に近い類のものである。

なりすまし事案は、開示された発信者情報と照合しないとなりすましか明白にならないのじゃないかという理論的に難しい部分はあるにもかかわらず、ずっと前から発信者情報開示が認められている。

本人になりすまして愚かな発言をした場合は、名誉毀損として処理されていることが多いような気がする。

もっとも、名誉権の侵害である必要すらない。

発信者情報には権利侵害が要件になっているが、これは、不法行為の大学湯事件と同じように、○○権という名前がついていなくても、保護に値する利益を侵害することで足りると言われている。

刑事では、女性になりすまして、電車でチカンして欲しいと書き込んだ男性が、逮捕された事案もある。

ただ、なりすまし事案で権利侵害が認められる場合は、単になりすましただけでは駄目で、これを本人の発言と誤信した結果本人の社会的評価が下落するとか、不利益が本人に生じる場合に限られている。

要するに、アイデンティティ権と呼ぼうが呼ぶまいが、なりすましで不利益が生じた場合は、発信者情報開示が認められており、不利益が生じてなければ認められていないのが従前の裁判実務である。

じゃあ、こういうような不利益が無い場合は発信者情報開示が認められないのか?なりすましそれ自体に、アイデンティティー権侵害が認められないか?という疑問がでてくるかもしれない。

たしかに、そういう意味のアイデンティティー権を認めたら新しい権利と言えるだろう。

しかし、この判決は、そういう意味でのアイデンティティ権侵害を認めていないし、実際に、不利益が生じていないということで権利侵害を否定して、原告の請求を退けている。

というわけで、判決は、アイデンティティ権について若干のリップサービスはしたものの、従前の枠組みを変えていないし、新たな権利を認めたわけでもない。

なので、この判決を踏まえて、記者が、新たな権利が定着すれば、このような行為の防止や早期被害回復が進むとしたのは笑止である。

忘れられる権利のときも感じたが、司法記者の皆さんはラベリングされた権利が好きなようである。

しかし、桃中軒雲右衛門の時代は遙か昔である。

追記

原告代理人が判決の内容を一部公開されたようなので、もうちょっと踏み込んでみる。

この判決は、このように言っている。

他者との関係において人格的同一性を保持することは人格的生存に不可欠である。名誉毀損、プライバシー権侵害および肖像権侵害に当たらない類型のなりすまし行為が行われた場合であっても、例えば、なりすまし行為によって本人以外の別人格が構築され、そのような別人格の言動が本人の言動であると他者に受け止められるほどに通用性を持つことにより、なりすまされた者が平穏な日常生活を送ることが困難となるほどに精神的苦痛を受けたような場合には、名誉やプライバシー権とは別に、「他者との関係において人格的同一性を保持する利益」という意味でのアイデンティティ権の侵害が問題となりうると解される。

要するに、人格的生存に不可欠なものは、名誉毀損、プライバシー、肖像権に該当しない場合でも保護されると言っている。

例えば
①なりすまし行為により、本人以外の別人格が構築され、
②そのような別人格の言動が本人の言動であると他人に受け止められるほどに通用性をもち
③なりすまされた者が平穏な日常生活を送ることが困難となるほどに精神的苦痛を受けた
ような場合
は、アイデンティティ権の侵害が問題になり得る。

という下りがポイントであるが、なりすまされた者が平穏な日常生活を送ることが困難な程の状況をプライバシー権侵害や名誉毀損なしに引き起こすケースというのは考え難い。

逆に、平穏な日常生活を送ることが困難な程の状況を引き起こした場合、別人格が構築されようなされまいが、受忍限度義務の関係で不法行為が否定される場合というのは考えがたい。

とすると、この判決で述べられているアイデンティティ権にリップサービス以上の意味を見出しがたいところである。

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