博士のごちそう
博士は、よく
「私は保守的ですから」
と言う。
ソフトウェアを作って刑事被告人になった者の発言として聞けばギャグとしか思えないが、こと食事の好みに関しては、博士はとても保守的である。
「現地人の食べるもの何でも食べるべし」がモットーの私とは大きく異なるところである。
博士のご飯3原則は、①辛くない、②熱くない、③食べにくくないである。
博士のお嫁さんになる人は、「おでん」と「肉じゃが」を交互に作ればOKかもしれない。
博士は、食べるのが面倒ということで、焼き魚はあまりお好きではない。
一度、打ち合わせの後の食事をした際に、旬ということで秋刀魚を頼んだことがある。
そのとき、博士は
「これいらない」
と言い出した。
「どうしてですか?」
「食べ方がわからない」
秋刀魚の食べ方にわかるもわからないも無いだろうよ?
とも思ったが、私は、正しい食べ方を教えることにした。
まず、秋刀魚の頭を外した。
次に、秋刀魚のしっぽを外した。
そして、頭としっぽのない秋刀魚に骨ごとガジガジと食らいついた。
そして、博士に言った。
「男は、骨ごと食う!」
その後、二人の食後の皿には、秋刀魚の頭としっぽだけが残されていた。
ところで、博士は、お酒は飲めない。この点アルコール燃料で動く私とは大きく違うところである。
その分と言っては何だが、博士は甘いものが大好きである。甘ければなんでもOKの様子で、食べにくそうなケーキでも嬉々として食べている。博士のご飯三原則の例外である。いや、甘い者はご飯じゃないのか。
博士の甘味への耽美はプログラム以上かもしれない。ほとんど昆虫である。だから「カナブン」とまで呼ばれているのである。
博士の甘いものを食べる際の無邪気な姿は、女性の母性本能をくすぐりまくりのようである。
うらやましい。
さて、事の経緯は後々のタイトルで紹介するが、博士と私が参加しているドリームボート社の人を含め4人でイタリアンで食事をした際の事である。
食事も終わりデザート(ドルチェ)を持って店員がきた。
私は、もの欲しげな博士に、「要りますか?」と聞いたところ、大喜びである。
それを見ていた二人も、博士に「どうぞどうぞ」ということになった。
ということで、自分のも含め合計4人分のデザートを平らげた。
30歳をゆうに超えたおっさんが、
「甘いものは別腹でしょう!」
と言いながら。
さて、話は変わるが、ドリームボート創立2周年記念ということで、東京の屋形船でお祝いしたことがあった。
2周年記念を祝うケーキは博士が大好きなイチゴと生クリームのケーキである。
宴は、結婚式でもないのにケーキカットをしたり、もう悪のりである。
飲み過ぎて記憶をなくすもの、
男同士でキスするもの、
調子に乗って下ネタしかしゃべらなくなってしまったもの
(実は、これらは一人なのだが)。
宴もたけなわを迎えたところ、私は、ふと博士がいなくなったのに気づいた。博士の席においてあった箸もない。
博士は、他の席に行ったのか?
いや、いない。
船の中だけに気分でも悪くなったのか?
そんな様子も無かったけど…。
私は、船を見回した。
すると
そこには、箸を持って、端っこのテーブルにあるイチゴケーキを一人でむしゃむしゃ食べている博士がいた。
「箸ケーキ最高!」
と言いながら。

