そこに山があるから
時期は前後すると思うが判決に前に書いておきたかったので。。。。
博士を弁護するうえで、自分自身どうしても知りたかったことは、
「なぜ、Winnyを作ったのか」
である。
警察側は、コンテンツビジネスを媒体中心からデジタルコンテンツ中心へと変革させるために、著作権侵害を蔓延させようという目的で開発公開したなどと言っていて、ガンガン報道されていた。
しかし、コンテンツビジネスを変革させるためにネットでのコンテンツ流通を無法地帯にするのはコンテンツビジネスの変革にとってマイナスでしかない。
そんなことは少し考えれば誰でも分かる。
警察側のストーリーがでっち上げであることははっきりしている。
ただ、本当はなぜWinnyを作っのかと言われると「?」だったのである。
なぜWinnyはビジネス的に洗練されていないのか。
なぜWinnyは無償で公開されたのだろうか。
そもそも、Winnyは何を目指していたのだろうか。
謎はつきない。
その日の博士との接見は、検察側の接見指定のために十分な時間をとれなかった。じっくり話をすることができたのは、博士が起訴される数日前であった。その日は、たまたま、接見時間の指定が無かった。
私は、博士に、検察がメンツのために何が何でも起訴に持ち込むことや、起訴になれば保釈申立をするが現在の刑事司法では保釈はなかなか認められないこと等の説明をした。そして、私は、それまでずっと疑問だったWinnyについて話をすることにした。
「Winny2の掲示板って将来的にはどうやって同期とる予定だったの?」
「あぁ、あれは、デジタル認証を組み合わせて、管理者だけが管理できるようにするつもりだったんです。やるまえに警察が来てWinnyの開発するなっていわれちゃいましたけどね。」
「でも、書き込みの順番とかどう管理するの?」
「掲示板のデータにバージョンを記録しておいて、書き込んだらバージョンがあがって…」
博士は、プログラムのことになると楽しげである。
博士は、本当にプログラムが好きなんだ…。
そう思った私はある提案をすることにした。
「もし、保釈がとれたら、コンテンツホルダーにメリットのある方法を考えていこうよ」
「そもそも、私、検討していたんですよ。暗号化してお金を払った人だけ暗号の鍵をもらうような方法。でも、誰かが暗号を解いたものを流通したら止めれない。そういうファイルだけ止めようとしても、ファイルの一部を変えちゃうと別のファイルと認識されるのでいくらでもすり抜けられるんで、無理だと思ったんです。」
「そういう場合でもビジネスを考えればできることがあるはずでしょ。広告を組み合わせる方法であれば流れても問題ないし、音楽も場合によっては3か月間暗号がもてば十分なものがあるし、やり方によってはWinnyを使ったビジネスっていくらでもあるはずだから」
「私、実は、掲示板のデジタル認証をファイル共有に応用して管理する方法考えていたんですよ。」
「え!」「どうやるの」
「管理者を決めて、管理者がデジタル認証つけて、このファイルを消せって信号を送ったら管理者の命令はみんなが信用してファイルを消す。」
「それって、無視機能をノードに強制するってこと?ハッキングされない?」
博士が管理機能を考えていたことは驚きであった。
しかし、無視機能の応用ってWinnyの開発からすれば必然の流れではないか。
「ハッキングも大丈夫だと思いますよ。いや、待てよ…んー…、そっか…」
博士は、接見室で新システムの基本設計を始めたようである。
「そこに山があったから登ったんだ。」
その姿を見て、私は博士がなぜWinnyを作ったか確信した。
私にとって、サラリーマンのような人ばかりの日本に、まだ、本当の技術者がいたことは驚きであった。
技術者をサイバーテロリスト扱いさせてはならない。
むしろ、彼こそが、将来のデジタルコンテンツに必要な人材じゃないか。
「そこまで考えているんだったら、場所は絶対に用意する。一緒にやろう」
私がそういったとき、博士の答えは得意の「はぁ。」では無かった。
「わかりました」
その日、博士は依頼者から同志になった。
