あたーにーあっとろーとは?

  • Winny制作者金子勇氏
    こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。

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2014年7月10日 (木)

カプセルマン第1話「カプセルマンあらわる」

Winnyが動くところを見たい。

そう裁判所が言いだしたのは、お巡りさんの尋問が始まって間もない時期であった。

裁判所は、Winnyの機能を見たい、裁判所でインターネットに繋ぐと問題があるので、第三者のところで検証を実施したいと言いだしたのである。

弁護団は、操作方法よりも、まず客観的な機能を裁判所が理解するべきだと主張した。機能を理解せずにWinnyで遊んでも意味が無い。そもそも、検察は、Winnyの何が問題なのかを全く明らかにしていないし、裁判所でつなぐと問題があるようなことを裁判所が検証でやろうという感覚が全く理解できないのである。

しかし、相手は京都地裁である。弁護側の意見など聞く耳を持たない。逆に、事前に検証を公にすると妨害されるかも知れない等と言って弁護側に箝口令を敷いてくる始末である。

弁護側は、せめてやるならということで、初期ノードはまっさらな状態で設定するように主張した。なぜなら、検察側に好きにやらせると、裁判官に偏見を植え付けようと違法動画等でクラスタリングしたノードを用意する可能性があったからである。

そんなこんなで、平成17年2月25日に、お世辞にも公平な第三者とは言い難いJASRACで検証が実施されることとなった。

どうもコピーライトギルドの方々は、博士を犯罪者にするために、手段選ばずの様子である。

検証は、検察側がパソコンを操作をすることになっていた。当日現れたのは、もちろんK警部補である。

K警部補は、結構な厚さの検証実施手順書をパソコンに置いて、検証を始めた。
実施手順はあらかじめ明らかにするとか言いながら、検証実施手順書は弁護側に開示されていない。裁判所は、それを見て何も言わない。

私は、異義を述べようとして止めた。おそらく、弁護側抜きで協議をしてたんだろう。ここはアウェイゲームである何を言っても無駄である。

それもJASRACとK警部補とは皮肉な眺めである。K警部補は、ディスクをフォーマットするところから、ネットで初期ノードを取得して動作させるまで淡々と進めた。ただ、Winnyを動作させる際に、動作の説明をするふりをして、自動ダウンロードの設定をするところが彼らしい。彼は「マンガ」のキーワードを入力していた。

彼は、Winnyの操作方法の説明をして、自動ダウンロード機能の説明に入った。自動ダウンロードのキーワード入力のときである。

「例えば、無修正」

こいつは、検証にかこつけて裁判官に偏見を与えるつもりだ。

何も無いわけがないとは思っていたが予想どおりのKクオリティ。

「それはまずいんじゃないですか」
「そうですか?」

Kは、しらっと答える。

「まずいという理由は?」

裁判所も聞いてくる。

「裁判所の検証ですよ。動作を確認するのにそんな下品な名前のファイルをダウンロードする必要ないでしょ」

そもそも、Winnyの動作を確認するのが目的と言っていたはずだ。さすがに、無茶だと思ったのだろうか、別のキーワードで試行することになり、裁判所による無修正画像ダウンロード大会は阻止できた。

Kは、その後何事もなかったように、無視機能やBBS機能の説明を一通りした。
そして、では最後に、どんなファイルがダウンロードされているか確認しましょうと言いだした。やはり、彼の目的はここにあったようである。

しかし、こちらも、自動ダウンロードのキーワードで指摘した立場上、ダウンロードしたファイルを問題あるから見るなというのは不自然である。私は、覚悟を決めて事態を見守ることにした。

Kはダウンロードしたフォルダをクリックした。
すると、そこには、

【合法】というファイル名が付いたファイルが、ずらーーっと並んでいた。
というより、「カプセルマン」という表題の素人っぽいマンガがたくさん並んでいた。

Winnyは、個人の表現の場でもあったのである。

Capsulman

なぜ、そんなのが並んだのかは未だに解らない。博士の危機にカプセルマンが駆けつけたということにしておこう。

弁護側には笑いが止まらないカプセルマンは、検察側にとっては笑えない存在のようである。裁判所に偏見を植え付けようするK警部補からは明らかに焦りの色が感じられた。

Kは、「たとえば」「たとえば」とくり返していた。たまたま著作権侵害っぽいファイルが見つかった風に表示したいようである。ようやく、成人コミックを1つ表示したが、その次がない。

というより、Kの態度は、誰が見ても「たとえば」じゃない。

Kは、【合法】なファイル名ばかりに困惑したのであろう。フォルダをサムネイル表示にして、著作権侵害っぽいものを探しだした。しかし、そこは画面一面の「カプセルマン」である。

今回はノードの偏りで【合法】ばっかり?そんな言い訳が出来るわけ無い。初期ノードの設定をしたのは彼である。弁護側にはどのサイトから取得するのかすら明かされていない。結局、Kは、何もクリックせずに説明を終わってしまった。

私は、そんなKの背後から、
「【合法】ファイルばっかりですねぇ」
と言った。検証の様子を撮影しているビデオカメラのマイクに入るくらいのすこし大きな声で。

数年後、私は、この事件の講演に関してカプセルマンを探してみた。しかし、カプセルマンを見つけることは出来なかった。カプセルマンは遠い星に帰ってしまったようである。

その日の検証は、その後すこしの質疑応答で終わった。

検証を終えてビルを出たとき、冷たい風が心地よかった。

私は、深呼吸してつぶやいた。
「ありがとう!カプセルマン」

2014年7月 6日 (日)

ミスターインターネット

弁護団にとって、Winnyの技術的立証をどうするかは、ずっと懸案の問題であった。

なんとか人づてに紹介してもらえたのが、慶應大学の村井純教授であった。

当然、事前に打ち合わせをしたのであるが、

村井教授は予想を遙かに上回る漢であった。

「その理屈だったら、日本にインターネット引いてきた俺が幇助じゃん」
「KazaaっていうボロWinnyですらSkypeを生んだんだ。Winnyが何を生み出すかを見たかったんだ。俺は」

村井節に力づけられた弁護側の証人申請に対して、検察は反対してきた。彼は、技術者の代表ではないということらしい。

こいつら、日本にインターネット引いてきた人に何を言ってるんだ?

反対のための反対に徹する検察の意見に呆れた弁護団は、村井教授の著書「インターネット」「インターネット2」を疎明資料として裁判所に提出して、その必要性を論じ、その結果、なんとか証人尋問の期日が決まった。めでたしめでたし。。。。。。。。。。。。。。。。。

ではない。

村井教授は、刑事裁判の証人としては偉い人すぎたのである。

しばらくして、村井教授から電話があった。
「あのさ。まだオフレコなんだけど、○○会の理事になることになって、尋問の日だけど純ちゃんが、来ることになってあっち休んじゃ駄目になったんだ。」

「純ちゃん?内閣総理大臣の純ちゃんだよ。申し訳ない。」

内閣総理大臣を純ちゃんって…私は、慌てて期日の変更を裁判所に連絡したが、裁判官は期日を空けるのは駄目という。
仕方ないので、数回期日は、被告人質問を先行させて、何とか再調整を試みた。

それで、なんとか調整が付いたのが、平成18年2月16日であった。

今度こそ何かあってはならんということで、前日に大阪入りしてもらった。ホテルまで迎えに行った。そして、新幹線で京都にまっしぐらである。

村井教授は、裁判所でも漢であった。

裁判所の地下食堂でうどんを注文し、
「あ、俺米ドルしかないや。カードつかえないかな?」

村井教授は、法廷でも漢であった。

村井教授は、Winnyの技術の客観面について丁寧に語り、
検察のWinnyは著作権侵害ツールとの質問を退け、
警察の調書に対して

「これでは、インターネットに繋がりません。こんなの大学1年生の2回目の授業で説明することです」

と叩き切った。

Winny事件が、少なくとも技術立証について検察を圧倒したのは、村井教授以下、技術者の皆さんの支援のおかげである。

情報処理学会の羊の群れのような状態だけ見ていた私にとって、この世界に漢がいることは新鮮な感動であった。

博士は、その間中
「いやー、天下の村井先生に会えるなんて」
とタレントを見るかのような状態であった。

おめーの事件だよ。

Legend Gakita!---(゜∀゜)---

K警部補は、正犯逮捕のときに、わざわざ博士のところに行って、博士を警察に同行させた人物である。このあとの話でもときどき出てくる。

彼の尋問は、Winnyはプロキシとの関係で故意の立証が困難だと思っていたこと、Winny2のBBS機能を通じた立件の手法、平成15年8月ころに検挙することを考えてたこと、ダウンロード専用Winnyを使ってなにもアップロード出来なかったこと等を述べて主尋問を終えた。

彼は、証言の各箇所で、博士が何を言ったかを述べたがっていた。しかし、私は、彼の言動と不敵な面持ちに違和感を感じていたが、その意味が解らなかった。

反対尋問の担当は私である。

私は、定番のお巡りさんの立場から聞き始めた。

「T警部補が、捜査の手法を指示したのですか」
「捜査の方法は一任されていました」

一任だと?中心人物がついに表れたか。
私は気を引き締めた。

それでも、

なぜ、中心人物の彼が、正犯の逮捕時に、正犯でも本部でもなく、博士のところにガサに入ろうとしたのか、

なぜ、彼が2時間もダウンロード専用Winnyでアップロードしようとしていたのか、

私は、本当の意味では解っていなかった。考えながら聞いていた。

博士に対する立件についても尋ねた。

「当時のあなたの認識でも被疑者にすることは出来ないという認識だったんですよね。
「私は、プログラマーは単純に作っただけで、使った人が悪いんだという認識でした。」
「どうしてそうおもわれたんですか。」
「そんなのは、先生の方が詳しいんじゃないですか」

Kの人をくった様な態度にカチンときた。落ち着け。

私は、わざわざソースコードを押さえにいった理由も聞いた。主力を正犯とは関係無いところに突っ込むことへの違和感からである。

送受信機能があるかを確認するためという回答であった。
そんなのおかしい、既に実際に通信して確認しているじゃないか。

そこで、さらに確認した

「ホームページを閉鎖するように言っていますね。当初からそのつもりだったのですか。」
「そうですね。私の心の中では、それを頼もうと思っていました」

明らかにソースコード目的じゃない。

おそらく、警察は、正犯の捜査にかこつけて、博士を現行犯で逮捕するか自白を獲る目的で、捜査の主力を博士宅に投入したのだ

そのとき確信した。

でも落ち着け、今は、まだ、その闘いのときではない。
私は、おきまりの著作物性の確認をして、私の担当を終えた。

というより、終わるはずだった。

アドリブで尋問をした弁護士が迂闊な質問をした瞬間、問題が勃発した。

Kがペラペラしゃべり出したのだ。

「私たちは、先ほども話かけましたけど、事情聴取は、Winnyの機能とかシステムについて聞く予定だったんですけども、取調室において彼が、著作権侵害を蔓延させて、ネット社会の著作権の枠組み見たいなものを変えるんだとというようなことをいいだし・・・

これが、Kが言いたくてうずうずしていたことか。その瞬間分かった。

検察は、当時、著作権侵害目的でWinnyを作ったということを、本件有罪立証の中核としていた時期である。そこで、彼は、博士が自分から著作権侵害蔓延目的でWinnyを作ったと言いだしたというストーリーをでっち上げて、それを、ここぞとばかりに喋り出したのである。

ホント要らんこと聞いてくれるよ。M弁護士さんよぉ。

しかし、このまま何も無しに尋問を終わらせるわけにはいかない。とりあえず、あーだこーだ何とかして次回30分程度の尋問時間を確保した。チャンスは1回だけである。

意外な展開にメディアもざわついていた。この点が本当かを確認しに来た。
Kもよほど重要視していたのであろう。私が、新聞からの質問に対して「あれは嘘です」と説明したことについて、わざわざ、次の回の証言で、私を名指しで「嘘つきと言った」「非常識」と非難してきた程である。

その日の弁護団会議はお通夜のようであった。

私は、それを見て心に決めた。次回の尋問は主任弁護人でやろうと。
私は、弁護団でもっとも尋問の能力の高い人間ではない。というか、今まで、主任に楽をさせていたのは、このためである。

主任作成の尋問事項書はマインドマップのようで何を訊くのかよく解らなかった。

不安は残ったが、主任弁護人に勝負を賭けたのである。。

尋問当日、主任は、捜査体制におけるKの位置づけを確認してから、本題に切り込んだ。

「申述書、前回ちょっと御証言されましたね」

「はい」

「これを金子が全部任意で書いたということでよろしいでしょうか」
「いや、それは違います」

「どこが違うの」
「それは本人がね、自分普段字は書かないから、なんて書いたらいいかわかりませんと言ったので、何かサンプルがありませんかと私に言ったわけですね、そのときにサンプルなんてないで、

じゃあ、自分が見本をかいてあげようかということで、自分が見本を書きました

彼は、突然、作文を認めだした。

彼は、自分の言ったことの重要性を理解していないようである。
危機感を感じた検察から異義が飛んでくる。

「主尋問の内容から離れます。」

「前回の証言でも、証人自身が証言されておられますので、この点の弾劾は必要かとおもわれます。」

主任は、異義を退けながら聞き続けた。

「金子さんが作ると言ってたのは、前回の証言だと誓約書という名前ですよね」
「本人がそういうふうに表現していたようなんですけども」

「Webを閉じたりすることについて、それは誓約してもいいと、もう開かないというようなことも含めて、そういうことでしたよね。」
「そうです」

「申述書という言葉にしたのはあなたですね」
「そうです」

「その見本を持って帰って、それを金子氏が書き写すというようなことになったということでよろしいですね」
「そうです」

「インターネット上に満えんという言葉が出てくるのは分かりますか」
「はい」

このあたりは、検察の異義もかなり執拗になってくる。

「この表現は金子氏が使った言葉ですか」
「これは多分そうだと思います。私がサンプルで書いてあるんですけども」

「あなたは2ちゃんねるの金子さんの発言を見たことはあったわけでしょう」
「はい」

「その中に蔓延という言葉が一度でも出てきましたか」
「いや覚えがありませんねぇ」

「著作権団体の調書6ページ上から7行目あたり、著作権侵害が蔓延している状況となったわけですという記載が出て来ていますね」
「出てきていますね」

尋問の帰趨はここで決まった。

本人がこれまで発言したこともなく、他方で、お巡りさんは著作権団体の調書で記載しているように著作権侵害蔓延をキーワードにしていた。

蔓延云々がKの作文に過ぎないことは明らかである。

これが、京都地裁に、「蔓延」を信用出来ないと認めさせ、高裁判決で、その日作成の調書について、取調に違法があるとして証拠排除させた尋問である。

この点の事実は、博士曰く

「いや~、お巡りさんからホームページ閉鎖しろって言われたので、じゃあWinny開発しないという誓約書書いても良いですよって言ったら、よっしゃーって言ってなんか書いたのをもってきて、これを写すように言われたんです。」

「でも、いつまでたっても誓約ってならなくて、注意書きは罪を逃れるためのき弁とか書き写したあたりから、さすがにこれは違うって言ったら、急遽口頭で言われてWinnyの開発や配布をしません的なのを書いて終わったんですよね。私、よく分からないから誓約書ってそういうものなのかなと思って。」

「満えん?蔓延って言葉使わないので、良く見ないで書き写してたら漢字間違えちゃって。アハハ」

ということである。
まったく笑い話のような話であるが、主任は、検察が最大の根拠としていた書面に「満えん」という違和感を感じ、あの博士から粘り強くヒアリングをして(実はこれが一番すごい)、事実を掘り下げ、尋問を展開し、最終的に作文を認めさせたのである。伝説の尋問と言われる所以である。

というわけで、

私は、美味しいところ全部持っていかれた状態で、

前回のTの尋問となったのである。

2014年7月 5日 (土)

FaceToFace

今回の告訴をとりまとめた著作権団体の人と対峙したこともある。

お世辞にも器が大きいとは言えない人たちが、守秘義務違反だとか言いだしても嫌なので、この件もまた許される日が来たらということにしたい。

ただ、この前後の事情から、某著作権団体への尋問がぬるかったのが、地裁の有罪判決の原因でも有り、私を未だに後悔させている。

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