あたーにーあっとろーとは?

  • Winny制作者金子勇氏
    こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。

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2014年7月 6日 (日)

Legend Gakita!---(゜∀゜)---

K警部補は、正犯逮捕のときに、わざわざ博士のところに行って、博士を警察に同行させた人物である。このあとの話でもときどき出てくる。

彼の尋問は、Winnyはプロキシとの関係で故意の立証が困難だと思っていたこと、Winny2のBBS機能を通じた立件の手法、平成15年8月ころに検挙することを考えてたこと、ダウンロード専用Winnyを使ってなにもアップロード出来なかったこと等を述べて主尋問を終えた。

彼は、証言の各箇所で、博士が何を言ったかを述べたがっていた。しかし、私は、彼の言動と不敵な面持ちに違和感を感じていたが、その意味が解らなかった。

反対尋問の担当は私である。

私は、定番のお巡りさんの立場から聞き始めた。

「T警部補が、捜査の手法を指示したのですか」
「捜査の方法は一任されていました」

一任だと?中心人物がついに表れたか。
私は気を引き締めた。

それでも、

なぜ、中心人物の彼が、正犯の逮捕時に、正犯でも本部でもなく、博士のところにガサに入ろうとしたのか、

なぜ、彼が2時間もダウンロード専用Winnyでアップロードしようとしていたのか、

私は、本当の意味では解っていなかった。考えながら聞いていた。

博士に対する立件についても尋ねた。

「当時のあなたの認識でも被疑者にすることは出来ないという認識だったんですよね。
「私は、プログラマーは単純に作っただけで、使った人が悪いんだという認識でした。」
「どうしてそうおもわれたんですか。」
「そんなのは、先生の方が詳しいんじゃないですか」

Kの人をくった様な態度にカチンときた。落ち着け。

私は、わざわざソースコードを押さえにいった理由も聞いた。主力を正犯とは関係無いところに突っ込むことへの違和感からである。

送受信機能があるかを確認するためという回答であった。
そんなのおかしい、既に実際に通信して確認しているじゃないか。

そこで、さらに確認した

「ホームページを閉鎖するように言っていますね。当初からそのつもりだったのですか。」
「そうですね。私の心の中では、それを頼もうと思っていました」

明らかにソースコード目的じゃない。

おそらく、警察は、正犯の捜査にかこつけて、博士を現行犯で逮捕するか自白を獲る目的で、捜査の主力を博士宅に投入したのだ

そのとき確信した。

でも落ち着け、今は、まだ、その闘いのときではない。
私は、おきまりの著作物性の確認をして、私の担当を終えた。

というより、終わるはずだった。

アドリブで尋問をした弁護士が迂闊な質問をした瞬間、問題が勃発した。

Kがペラペラしゃべり出したのだ。

「私たちは、先ほども話かけましたけど、事情聴取は、Winnyの機能とかシステムについて聞く予定だったんですけども、取調室において彼が、著作権侵害を蔓延させて、ネット社会の著作権の枠組み見たいなものを変えるんだとというようなことをいいだし・・・

これが、Kが言いたくてうずうずしていたことか。その瞬間分かった。

検察は、当時、著作権侵害目的でWinnyを作ったということを、本件有罪立証の中核としていた時期である。そこで、彼は、博士が自分から著作権侵害蔓延目的でWinnyを作ったと言いだしたというストーリーをでっち上げて、それを、ここぞとばかりに喋り出したのである。

ホント要らんこと聞いてくれるよ。M弁護士さんよぉ。

しかし、このまま何も無しに尋問を終わらせるわけにはいかない。とりあえず、あーだこーだ何とかして次回30分程度の尋問時間を確保した。チャンスは1回だけである。

意外な展開にメディアもざわついていた。この点が本当かを確認しに来た。
Kもよほど重要視していたのであろう。私が、新聞からの質問に対して「あれは嘘です」と説明したことについて、わざわざ、次の回の証言で、私を名指しで「嘘つきと言った」「非常識」と非難してきた程である。

その日の弁護団会議はお通夜のようであった。

私は、それを見て心に決めた。次回の尋問は主任弁護人でやろうと。
私は、弁護団でもっとも尋問の能力の高い人間ではない。というか、今まで、主任に楽をさせていたのは、このためである。

主任作成の尋問事項書はマインドマップのようで何を訊くのかよく解らなかった。

不安は残ったが、主任弁護人に勝負を賭けたのである。。

尋問当日、主任は、捜査体制におけるKの位置づけを確認してから、本題に切り込んだ。

「申述書、前回ちょっと御証言されましたね」

「はい」

「これを金子が全部任意で書いたということでよろしいでしょうか」
「いや、それは違います」

「どこが違うの」
「それは本人がね、自分普段字は書かないから、なんて書いたらいいかわかりませんと言ったので、何かサンプルがありませんかと私に言ったわけですね、そのときにサンプルなんてないで、

じゃあ、自分が見本をかいてあげようかということで、自分が見本を書きました

彼は、突然、作文を認めだした。

彼は、自分の言ったことの重要性を理解していないようである。
危機感を感じた検察から異義が飛んでくる。

「主尋問の内容から離れます。」

「前回の証言でも、証人自身が証言されておられますので、この点の弾劾は必要かとおもわれます。」

主任は、異義を退けながら聞き続けた。

「金子さんが作ると言ってたのは、前回の証言だと誓約書という名前ですよね」
「本人がそういうふうに表現していたようなんですけども」

「Webを閉じたりすることについて、それは誓約してもいいと、もう開かないというようなことも含めて、そういうことでしたよね。」
「そうです」

「申述書という言葉にしたのはあなたですね」
「そうです」

「その見本を持って帰って、それを金子氏が書き写すというようなことになったということでよろしいですね」
「そうです」

「インターネット上に満えんという言葉が出てくるのは分かりますか」
「はい」

このあたりは、検察の異義もかなり執拗になってくる。

「この表現は金子氏が使った言葉ですか」
「これは多分そうだと思います。私がサンプルで書いてあるんですけども」

「あなたは2ちゃんねるの金子さんの発言を見たことはあったわけでしょう」
「はい」

「その中に蔓延という言葉が一度でも出てきましたか」
「いや覚えがありませんねぇ」

「著作権団体の調書6ページ上から7行目あたり、著作権侵害が蔓延している状況となったわけですという記載が出て来ていますね」
「出てきていますね」

尋問の帰趨はここで決まった。

本人がこれまで発言したこともなく、他方で、お巡りさんは著作権団体の調書で記載しているように著作権侵害蔓延をキーワードにしていた。

蔓延云々がKの作文に過ぎないことは明らかである。

これが、京都地裁に、「蔓延」を信用出来ないと認めさせ、高裁判決で、その日作成の調書について、取調に違法があるとして証拠排除させた尋問である。

この点の事実は、博士曰く

「いや~、お巡りさんからホームページ閉鎖しろって言われたので、じゃあWinny開発しないという誓約書書いても良いですよって言ったら、よっしゃーって言ってなんか書いたのをもってきて、これを写すように言われたんです。」

「でも、いつまでたっても誓約ってならなくて、注意書きは罪を逃れるためのき弁とか書き写したあたりから、さすがにこれは違うって言ったら、急遽口頭で言われてWinnyの開発や配布をしません的なのを書いて終わったんですよね。私、よく分からないから誓約書ってそういうものなのかなと思って。」

「満えん?蔓延って言葉使わないので、良く見ないで書き写してたら漢字間違えちゃって。アハハ」

ということである。
まったく笑い話のような話であるが、主任は、検察が最大の根拠としていた書面に「満えん」という違和感を感じ、あの博士から粘り強くヒアリングをして(実はこれが一番すごい)、事実を掘り下げ、尋問を展開し、最終的に作文を認めさせたのである。伝説の尋問と言われる所以である。

というわけで、

私は、美味しいところ全部持っていかれた状態で、

前回のTの尋問となったのである。

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