あたーにーあっとろーとは?

  • Winny制作者金子勇氏
    こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。

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2015年5月14日 (木)

主質問

被告人質問というと、証人尋問と混同されがちであるが、刑事訴訟法的には別の制度である。

刑事訴訟法上は、被告人が任意に供述をする場合には、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができるとされている(刑事訴訟法311条2項)。

しかし、実際の裁判で供述拒否して無罪というのは考えにくいので、被告人質問は必須である。

この被告人質問であるが、これまた一般の方は、「事実をそのまま喋ればいいんだから楽じゃないか??」と思いがちであるがそんなことはない。

ただでさえ緊張する法廷で、有罪のプレッシャーの下で、聞かれたことを理解して的確に答えれる奴はいないのである。

しかも、博士は、常人より遙かに単語のセレクションが下手である。

Winnyの配布ページでも

「最近は裏で暗躍していて(最近は目立たない形で活躍しているの意らしい)」

なんてことを書いてたりする。

そんな博士を、なんの準備も無しに喋らせたら、誤解を与える単語連発は必須で、下手したらオウンゴールで試合終了ある。

というわけで、被告人質問の練習というか、質問しては、社会人として常識的な言い方を教えるということをくり返し行った。ほとんどサリバン先生のウォーターの世界である。

そして、本番。主質問の会誌である。

始まってすぐに異変が発生した。

博士の回答が質問に対応していないのである。

というまでもなく、理由はすぐに分かった。
博士は、法廷で、緊張のあまり、私が質問したことではなく、私が次に聞こうと予定している質問に答えていたのである。

博士が、そこまで緊張していたというのは、ある意味驚きである。

もっとも、それはそんなにピンチではない。フリーズしたパソコンよろしく再起動である。

落ち着いた博士は、ようやく聞かれたことについて語り始めた。

Winnyが著作権侵害ツールではないことを。

その後特許取得した、P2Pネットワークにおけるコンテンツ管理システムの構想を。

博士が、Winnyで違法なやり取りをしないように呼びかけていたことを。

Winnyを悪用した情報漏えい問題に対して対応できないことへの忸怩たる思いを。

京都府警が、博士の現行犯逮捕をもくろんで、博士の自宅に捜索に入り、博士のPCでWinnyをつかって2時間アップロード実験を試みたが、ダウンロード専用Winnyであったので失敗に終わったことを。

それでも、博士の立件をあきらめきれないK警部補が、博士がWinnyの開発をしないという誓約書を書いて良いと言ったのを利用して、著作権侵害蔓延目的である旨書いた作文を博士に書き写させていたことを。

取調で、K警部補や検察が、博士を恫喝して、罪を認めさせようとしていたことを。

それらは、当時世間で誤解され、未だ誤解されている、報道されなかったWinny事件の真実であった。

そして、検察官の反対尋問を迎えた。

2015年5月 6日 (水)

Winnyの技術

「金子君が、半年くらいブタ箱で臭い飯を食っても技術家としての生命を大切にしてあげたい!」

 

「いやいや、そうならないために私がいるわけで。。。。」

2005年3月3日に、私は、Winnyについて出版するということで、博士が所属する東京大学で関係者と話をしていた。

犯罪に問われた技術を、出版で公にするというのは、弁護人としては悩ましいところである。

メディアの人は出せば良いということで考えがちであるが、刑事弁護的にメディア露出はマイナスにしかならないことが多い。

というのも、刑事事件で重要なのは裁判所がどう思うかであって、マスコミや一般の人がどう思うかではないというのは、なかなか理解されがたい刑事事件の要素である。

もっとも、Winny事件に限って言えば、Winnyの技術の真意を公刊物で明らかにすることは技術立証的に魅力的であった。

他方、それでなくても狂った主張をしている検察に変な知恵をつけさせることにならないかという心配はあった。

また、京都府警が、この本見て誰かがWinnyもどき作ったので博士は幇助の幇助とか言いだすかもしれないことも懸念した。実際に、なんちゃってWinny作れてしまうくらいプロトコル大公開であったのである。

結局、ひねらないにも程がある名前の「Winnyの技術」は遅れて、2005年10月6日に出版された。

いや、正しくは、遅れたのではない。被告質問が10月3日だったので、それにあわせて出版してもらったのである。弁護人から、いきなり、この日に被告人質問があるから出版してほしいというのは無茶振りであった。申し訳ない。

そして、2005年10月3日の被告人質問では、出版日を3日後に控えた「Winnyの技術」こと弁15号証が技術立証に大活躍したのである。

当初の心配に反して、検察側がWinnyの技術に基づいて主張することはなかった。

おそらく、検察官は読んでも意味が分からなかったのであろう。

Winnyの技術の中身は、超技術寄りで、被告人本にありがちな事件の弁解っぽいことは皆無であったのである。

いや、本当は、ゲラの段階では少しだけ裁判に関する記述があった。

この本は、Winny技術を知りたい人の為の本です。
裁判のことは、法廷で、堂々と主張しましょう。

そんな私の意見を、博士は、理解してくれたようである。

ただ、博士は、そんな状況を知ってか知らずか、いろいろカブキものであった。

Winnyの技術のオビには、2ちゃんねるキャラのギコ猫が「ということで、みんな、ありがとう!」と言っている。これは、2ちゃんねらーな博士なりの感謝の意?である。か「ねこ」だけにギコ「猫」というのは深読みしすぎか?

巻末の筆者紹介では、当時噂になっていた、博士が介護用ベッドで寝起きしながらプログラミングしているということについて反論していた。

あれは、介護ベッドではなく、東急ハンズで買った電動式のベッドであると。

それが反論になっているかどうかはともかく。。。。。

Winnyの技術の電子書籍版は、Winnyネットワークで無償配布されたりもした。博士はこれが本来のWinnyの使い方なんだということを身をもって示したわけである。

このWinnyの技術は、技術本としては異例の販売数となり、印税収入が博士の生活費的に助かったという副次的効果を生んだ。

しかし、

で、いくら儲かったんですか?

という、私の下衆な質問に、博士が答えることはなかった。

もし、今後、Winnyの技術を手にすることがあれば、まえがきを見てほしい。

「ネットワーク社会の未来が明るいものであることを祈ります。」

最後のさりげない一言が、Winnyの技術に込められた博士の遺志だったのかもしれない。

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