あたーにーあっとろーとは?

  • Winny制作者金子勇氏
    こと博士の素顔があまりにも面白いので、弁護人である私の目から、事件を振り返ってつれづれなるままに書きつづってみる、壇弁護士の事務室のスピンアウトブログです。

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2015年7月12日 (日)

反対質問

反対質問は、2006年3月20日と2006年5月1日にあった。

反対質問というのは、テレビとかでも良く見る検察が被告人を問い詰めるあれである。

反対質問で喋ることが、過去のことの供述である以上、記憶違いや変遷というのは結構あり、それなりの練習が必要である。

しかも、博士は、後から気付いたことでも、前から分かっていたと言う癖があった。そんな癖は母性本能たっぷりの女性には可愛く感じるところかもしれないが、刑事法廷では、自分の首を絞める以外の何ものでも無い。

と言うわけで、私は一計案じた。

私は博士に、検察官よりも尋問が上手なはずです。
私の尋問に耐えられれば、検察官の尋問にも耐えられるでしょう。
と持ちかけて、仮想反対質問をすることにした。

で、博士をボロボロにした。
その結果、博士は「事実をそのまま話したら良いんですね」と納得したようである。

だから、最初からそうしろちゅーとんねん、。

というわけで当日を迎えた。

検察は、尋問を始めた。

「平成14年4月1日に、2ちゃんねるで、47という名前で開発宣言というのをされたんですね。」

「はい、した記憶があります。」

「暇なんで、Freenetみたいだけど、2ちゃんねらー向きのファイル共有ソフトの一つを作ってみるわ。もちろん、ウインドウズネイティブな。少し待ちなぁ。こういう文言ですね」

「そうだとおもいます。」

「あなたが開発宣言をしたのは、この2ちゃんねるだけですか」

「・・・・Winny1に関する開発宣言ですか、Winny1に関する開発宣言は、記憶では4月1日のそれだけですけれども。」

「この開発宣言の中で、少し待ちなあと書いてますね」

「はい」

「何を待つということですか。」

え、検察官、それを聞いてどうするの?
私の心配をよそに検察の質問は続く

「Napstarとか、Gnutella、あるいはWin-MXは、これらのソフトについては、あなたはどのようなことに利用されていたのか、あるいは、どのような問題が起こっていたのか、どういうふうに認識されておったんでしょうか。」

「その名前のとおりで、ファイル共有に使われていたと思います」

検察は、ファイル共有ソフトというものは著作権侵害で利用されていると言わせる作戦のようである。

「Win-MXで逮捕者が出たのは何の容疑であったか知ってますか。」

「確か、著作権法違反だったんじゃないですか」

検察官はにやりとして進める。

「WinnyはWinMXやFreenetなどを参考にして新規に作られたファイル共有ソフトです。とありますけど、これはあなた自身が書かれた文章ですね。Win-MXのどのような点を参考にされたのですか。」

「Win-MXのところで参考になったのは、特にその高速性です。」

「あなたが、Winnyを開発、そして公開した目的は、その技術的検証にあったと。したがって、著作権侵害の目的も意図もなかったということでよろしいんでしょうか。」

「はい。そのとおりです。」

「あなたがWinnyの技術的検証を行ったというのは、その検証の形跡というのは何を見れば分かるんですか」

「ある程度動作して、それなりに問題がなければではないですかね。」

「あなたは、Winnyを暇つぶしに作ったに作ったともおっしゃっておられるんですね。これも検証と同じ意味なんですか」

あれ、噛み合ってないぞ。。。

「あなたは、この法廷ではWinnyの技術というあなたの書いた本を見てもらえば、Winnyを作った意図が分かりますというふうにおっしゃいましたね。Winnyの技術という本を読んでも、よくわからないんですけど、どこに書いてあるんですか。」

「・・主にここにあります。39ページ、2章の一番初め、Winnyの開発コンセプトのところが、そのWinnyの開発コンセプトです。目指したところが、これになります。」

「あなたがおっしゃったのは、その技術の特性ですね、それ自体は開発の意図とは関係ないのではないですか」

「開発する意図というのは、技術検証にありますので、・・」

検察は、開発目的とユーザの利用目的を混同して質問しようとしたようであるが、どうも技術検証の意味がかみあわないままに失敗したようである。

検察は、冒頭陳述で大きく取り上げていた匿名性について聞き始める。

「Winnyの特徴というのは匿名性ということだったですね」

「そうですね。一つの特徴としては匿名性を持つことになります」

「あなたが、匿名性として情報の第一発信者を分からなくすること、その点を重視したのはどういう理由からなんですが」

「・・・重視したのがですか・・・重視はしていないですけども、要素としては持っているくらいですか、どっちかといえば効率性の方を重視していますので、開発の最中はずっと」

検察の切り札の匿名性も失敗のようである。

検察官は、著作権侵害防止機能について聞き出した。

「著作権者の許諾があるデータを、そうではないデータと識別する機能はWinnyにあるんですか。」

「機能的には無理と思います」

そんな機能、今の世界にもない。検察官の質問も言いがかりのような内容になってきた。

ついに、2ちゃんねるの書き込みについての質問を始めた。

「872番目の書き込みを見てください」

「ソフトはコピーフリーでかまわないはずですと書いていますね。」

「はい」

「一つ前の871番目の書き込みをみてください。…あなたのうんちくが書いてあるんですけども、下の方を見ると、私はソフトウェアはタダであるべきとか、音楽その他の著作物がすべてPDSであるべきと考えているわけではありません。とありますが、PDSとはパブリックドメインソフトのことですか」

「そうです」

「その書き込みをみると使い物になるFreenetを目指して作ったと書いてあるんですけども」

「そうですね」

博士が2ちゃんねるで著作権侵害を奨励していたとか、マスコミにリークしていたのであるから、検察は2ちゃんねるを重視していたはずである。、しかし、2ちゃんねるに関する質問はこれで終わった。

検察官は、京都府警のガサが大失敗したダウンロード専用Winnyについても質問を始めた。

「話は変わるんですが、あなた自身が使っておられたパソコンは、ダウンロード専用に設定がされていたんですかね。」

「パソコンが?パソコンはアップロードもダウンロードもできるパソコンでしたよ」

もう、パソコンの問題とWinnyの問題を混同してグダクダである。

「警察の捜索を受けた際には、アップロードできないようになっていたんじゃないですか。」

「実験用のWinnyの話でしょうか。アップロード専用版もあって、そちらもテストはしていましたので、ダウンロード版だったのはたまたまですね。」

そもそも、技術に暗い検察を公判検事にして何をしたいのかが解らない。検察の反対質問はその後数点残して終わり、弁護側の再主質問、裁判所の補充質問を経て、被告人質問は終わった。

そして、一回の整理手続きを経て、論告、弁論の後に判決期日を迎えた。

このときは、無罪を信じていた。。。

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