Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

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「Winny」も「天才プログラマー」も「金子勇」も盛り込んで検索ワードを意識しすぎな小説が、2020年4月24日にインプレスR&Dから出版されることになった。

 

インターネットウォッチの紹介記事

インプレスR&Dのリリース

PRタイムのプレスリリース

 

これは、壇弁護士の事務室のスピンオフブログ「アターニアットロー」を時系列に整理して、小説として書き直したものである。

執筆中は、当時のあれこれを思いだしては、怒ったり、悲しんだり、笑ったり、泣いたり大変であった。

ブログからの移植という割には、出版まで数年かかっている。

途中で担当者も出版社も複数回変更された。ヒロインを登場させろとか、さび前の歌みたいに結末を最初に書いてインパクト勝負だとか、金子の内心を描いてないから小説として成立してないとか、業界人が読みもせずに業界風を吹かす発言にはヽ(#`Д´)ノな感じであった。
しかし、Winny事件や金子勇という人物について事実をそのまま伝えるという、根本のところはぶれずに書けたと思う。

ところで、この小説、元が無償で公開されてるんだからブログ見たらいいじゃんと言われかねない。しかし、既にアターニアットローを見た人でも楽しめるようにいろいろ工夫しているので、そう言わずに、小説版も見て欲しい。

Winny事件は、現在、映画化の企画もあるようである。私の役を誰がやるのかをいつも聞かれるが、私は知らない。。。。というより、その質問が多すぎて辟易している。

最後に、出版の際には紙面の都合で乗せれなかった方々にスペシャルサンクスをば(追加予定)。

坂和宏展(弁護士)さん 彼の「小説を読みたい」という一言がなければ、途中で止めてたと思う。ありがとう。

山本祐規子(元ロースクール生)さん ゲラの確認、示唆に富む指摘ありがとう。

 

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2020/09/23

タトゥー事件最高裁決定の解説

ガマンの判決医業の遺業タトゥー裁判控訴審逆転無罪判決タトゥー事件最高裁判決と取り上げ続けている裁判であるが、

最高裁決定が裁判所のHPにアップされていた。

裁判例

というわけで、前に言っていたとおり、解説してみたい。

といっても、この事件、医行為とはなんぞや?という論点1つである。

検察官は、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と主張していて、

1審裁判所もそのように解釈して、さらに、「医師が行うのでなければ皮膚障害等を生ずるおそれがある」として彫り師を有罪とした。

この基準「おそれ」で足りるのがポイントで、刑事司法の世界では、ろくな立証がなくても裁判所が机上の空論で「おそれ」を認定してしまうのである。

ところで、「医者以外の者がやれば犯罪になる行為とは何?」という問に対して、

「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為」と答えられても、

「じゃあ、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為ってなんですか?」

となるであろう。実際には、保健衛生上危害を生じるおそれある行為なんて様々である。

これでは、何が処罰の対象かはわからない。

最高裁は、

医師法17条は医師の職分である医療及び保健指導を,医師ではない無資格者が行うことによって生ずる保健衛生上の危険を防止しようとする規定であると解される。したがって,医行為とは,医療及び保健指導に属する行為のうち,医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいうと解するのが相当である。

と判断した、医行為というのは、医師の職分との関係を必要とするということで、平たくいえば、治療や保健指導と関連性がないとダメということである。その上で単に医師の職分と関係あればいいというわけではなく、保健衛生上の危険を防止するという法の趣旨から、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生じるおそれのある行為という限定を加えている。

1審の基準と最高裁の基準は、それ自体を定義とするか限定に用いるかで全く非なるものである。

さらに最高裁は、

方法や作用が同じ行為でも,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況等によって,医療及び保健指導に属する行為か否かや,保健衛生上危害を生ずるおそれがあるか否かが異なり得る。また,医師法17条は,医師に医行為を独占させるという方法によって保健衛生上の危険を防止しようとする規定であるから,医師が独占して行うことの可否や当否等を判断するため,当該行為の実情や社会における受け止め方等をも考慮する必要がある。

ある行為が医行為に当たるか否かについては,当該行為の方法や作用のみならず,その目的,行為者と相手方との関係,当該行為が行われる際の具体的な状況,実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で,社会通念に照らして判断するのが相当である。

と判断した。

ただ、社会通念というのがくせ者で、裁判所が社会通念といったら、有罪の為のむりくり解釈を言いだす場合もあるのであるが、今回はそうならなかった。

最高裁は、

 被告人の行為は,彫り師である被告人が相手方の依頼に基づいて行ったタトゥー施術行為であるところ,タトゥー施術行為は,装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきたものであって,医療及び保健指導に属する行為とは考えられてこなかったものである。

また,タトゥー施術行為は,医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって,医師免許取得過程等でこれらの知識及び技能を習得することは予定されておらず,歴史的にも,長年にわたり医師免許を有しない彫り師が行ってきた実情があり,医師が独占して行う事態は想定し難い。このような事情の下では,被告人の行為は,社会通念に照らして,医療及び保健指導に属する行為であるとは認め難く,医行為には当たらないというべきである。

タトゥー施術行為に伴う保健衛生上の危険については,医師に独占的に行わせること以外の方法により防止するほかない。

と認定して無罪を認定した。

要するに、入れ墨は、医師が独占するようなものではないので、医師法ではなく他の法律で規制するべきということである。

そして、この判決には草野裁判官の補足意見がついている。そこでも注目するべきは、

 タトゥーに美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者もおり,さらに,昨今では,海外のスポーツ選手等の中にタトゥーを好む者がいることなどに触発されて新たにタトゥーの施術を求める者も少なくない。このような状況を踏まえて考えると,公共的空間においてタトゥーを露出することの可否について議論を深めるべき余地はあるとしても,タトゥーの施術に対する需要そのものを否定すべき理由はない。以上の点に鑑みれば,医療関連性を要件としない解釈はタトゥー施術行為に対する需要が満たされることのない社会を強制的に作出しもって国民が享受し得る福利の最大化を妨げるものであるといわざるを得ない。タトゥー施術行為に伴う保健衛生上の危険を防止するため合理的な法規制を加えることが相当であるとするならば,新たな立法によってこれを行うべきである。

という意見である。タトゥーを個人の人格的利益と関連づけて考えているのである。

ところで、入れ墨は、身体に対する侵襲を伴うので、同意傷害の論点が存在する。この点については、草野裁判官の補足意見でも、

最後に,タトゥー施術行為は,被施術者の身体を傷つける行為であるから,施術の内容や方法等によっては傷害罪が成立し得る。本決定の意義に関して誤解が生じることを慮りこの点を付言する次第である。

同意傷害とは、同意下で、人に傷害を負わせた場合傷害罪が成立するのか?仮に傷害罪を一切否定したら、ヤクザの指つめはどうなるのか?という古くて解決されてない論点である。補足意見はそこに一石を投じたわけである。

というわけで、最高裁は、弁護人の主張に対してまさかの満額回答である。

最高裁から酷い判決をくらい続けている私からすれば、この判断は驚きしかない。

そもそも、この事件は高裁の西田裁判長が弁護人満額回答の逆転無罪を下しているのであるが、私は、その2週間前に別の事件で西田裁判長に酷い判決をくらっている。同じ裁判長でもこれである。

亀石弁護士と、私の間にある、高い壁はなんなのだろうか。

美?

そういう自虐ネタをしたくなるが、特に邪意は無い。

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2020/09/19

あなたの不正入試の入学検定料が戻ってくるかもしれません。

なんか、ア○○○事務所のCMみたいなことやってるが、私の事務所の話ではない。

 

NPO法人消費者機構日本というのは、いささかうさんくさい名前ではあるが、国も認める特定適格消費者団体である。

特定適格消費者団体とは、消費者の利益のために訴訟提起することができる団体で、多くの消費者被害を生む事件などで、個々の消費者が闘うのは大変なので、みんなの為に闘いを背負って立つ団体である。

その中の1つである消費者機構日本は、東京医科大学の不正入試について、入学検定料の返還義務を確認する訴訟を提起し、該当者に入学検定料等の返還義務があることの確認判決を得ている

というわけで、該当者であれば、入学料等を返還してもらうことが可能となったわけで、消費者機構日本は、そのことをホームページで公報している。しかし、過疎化したホームページなので世間ではこのことがあまり知られていない。これが訴訟の予算はあるが、広告の予算がない特定適格消費者団体の悲しさである。

このブログも過疎でいえば大差ないが、ささやかながら周知のお手伝いである。

心当たりある方は、下の画像リンクから消費者機構日本に連絡されたい。

追記 この記事は企業案件ではありません。タイアップ等は別途お待ちしております。

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2020/09/18

タトゥー事件最高裁決定

昨日、タトゥー事件で上告を棄却したというニュースが飛び込んで来た。

タトゥー(入れ墨)の施術は医師免許が必要か――。最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は医師法違反事件の上告棄却決定で、医療行為に当たらず医師免許は不要とする初判断を示した

タトゥー事件は、入れ墨が医師法に反するかが争われた事件で、このブログでも、ガマンの判決医業の遺業タトゥー裁判控訴審逆転無罪判決と注目してきた裁判である。

まだ、裁判所のHPに決定はアップされていないので、その内容を論じることはできない。アップ次第検討を試みたい。

現在、ニュースを見る限りでは、最高裁は、「医行為」を「医療や保健指導に属する行為」のうち、医師が行わないと保健衛生上の危害を生じる行為と医療関係の行為に限定している。私は、1審が医行為を「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為」と解釈したのは、保健衛生関係けしからん罪に拡大解釈するものであって、そんなトートロジーが罪刑法定主義に堪えるものではないと考えているので、最高裁が上告を棄却したことは結論的には賛成である。

最近、第1小法廷というか山口厚元東大教授のそっくりさんが、いろいろと失望させてくれるような判断を連発している中で、第2小法廷が理性ある判断を示したことについては驚きですらある。

今回の決定については、新しい分野の刑事弁護に臆することなくチャレンジした弁護士、多くの支援者、そして、1審で泣いても2審で泣いても最後まで戦い抜いた彫り師本人がいる。

今は、彼らの努力を賞賛し、すばらしい結果をもたらしたことを我がことのように喜びたい。

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2020/08/26

コインハイブ事件高裁判決@判例時報

コインハイブの呼出しコードをサーバに蔵置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件の高裁判決が2020年2月7日にあった。

東京高等裁判所第11刑事部(栃木力裁判長、上岡哲生裁判官、髙橋康明裁判官)は、不正性の要件を満たさないとして無罪とした地裁判決(横浜地判2018年3月27日)を破棄して、罰金10万円の罪を認めた。

高裁が有罪を認めたロジックのおかしさについては他でも書いてるので、今回はそういうのを解っていることを前提の記事である。

 

この判決が、判例時報2446号71頁に解説付きで掲載されているのを見つけた。

判例時報とは、日本でもっとも有名な判例紹介雑誌の1つである。

判例時報では、誰が解説を書いたかは明らかにされていない。コインハイブ事件判決でも「仮名」である。

ただ、この仮名さん。どこから裁判の情報を知ったのか解らないが、解説がなかなか香ばしい。

高裁判決のもっとも狂った判断と言われている、「賛否両論は被告人の不利益に」理論であるがこれについては仮名さんはアプリオリに大賛成らしい。

しかも、

賛否が分かれている点は社会的許容性を基礎付ける事情と言うよりもむしろ否定する方向に働くものと第一審段階で見切るのは必ずしも容易ではないけれども

と、地裁判決に対して謎のマウンティングである。

さらには、

総じて言えば、本件では第1審が迅速に疑問を提起し控訴審が適切に解明を試みており、社会的信頼を保つ意味合いからも刑事裁判が有用に機能しているとも言えよう

と、事件解決したかのように解明と言いだし、さらに、高裁判決のおかげで刑事裁判制度が機能しているといわんばかりの最高金賞である。

私には、この仮名さんが、なぜ、高裁判決マンセーな自己万能感満タンでこの判決の解説をしなければならなかったのかは解らない。

ただ、私は、こんな傲慢な考えをしている者が、刑事司法の中枢にいるとは思いたくはないので、解説を書いた仮名さんが、「判決を書いた裁判官ご本人」ではないと信じたいところである。

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コインハイブ事件の評釈

コインハイブの呼出しコードをサーバに蔵置したとして、不正指令電磁的記録保管罪に問われた事件の高裁判決が2020年2月7日にあった。

不正性の要件を満たさないとして無罪とした地裁判決(横浜地判2018年3月27日)を高裁は破棄して罰金10万円の罪を認めた。

高裁が有罪を認めたロジックのおかしさについては他でも書いてるので、今回は解っていることを前提にする。

この判決が、判例時報2446号71頁に掲載されているのを見つけた。

そして、気分が悪くなった。

判例時報とは、日本でもっとも有名な判例紹介雑誌の1つである。

誰が解説を書いたかは明らかにされない。コインハイブ事件判決でも「仮名」である。

ただ、この仮名さん。どこから情報を仕入れたか解らないが、なかなか香ばしい。

もっとも狂った判断と言われている、「賛否両論は被告人の不利益に」理論であるが、

賛否が分かれている点は社会的許容性を基礎付ける事情と言うよりもむしろ否定する方向に働くものと第一審段階で見切るのは必ずしも容易ではないけれども

と、上から目線で語り、おまけに地裁判決に対して謎のマウンティングである。

さらには、

総じて言えば、本件では第1審が迅速に疑問を提起し控訴審が適切に解明を試みており、社会的信頼を保つ意味合いからも刑事裁判が有用に機能しているとも言えよう

と、高裁コナン君が事件解決したかのような語りで、さらに、刑事裁判制度が機能していると高評価である。

私には、この仮名さんが、高裁判決マンセーな自己万能感満タンで解説をしなければならなかったのか解らない。

ただ、私は、こんな傲慢な考えをしている者が、刑事司法の中枢にいるとは思いたくはないので、解説を書いた仮名さんが、「判決を書いた裁判官ご本人」ではないと信じたいところである。

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2020/07/29

ろくでもない判決

自分の性器のCADデータを支援者に配ったとして、わいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪に問われたろくでなし子の事件の判決が先日あった。

通常、上告を棄却するときはぺらぺらな決定を送ってくるだけなのであるが、なぜか、最高裁は弁論を開かず判決期日を指定したため、何をしたいのかということが噂になっていた。

参考 刑事訴訟法

第四百八条 上告裁判所は、上告趣意書その他の書類によつて、上告の申立の理由がないことが明らかであると認めるときは、弁論を経ないで、判決で上告を棄却することができる。

上告棄却ならペラペラ一枚で終わるはずだが、なんでか、最高裁は、わざわざ、判決を期日を指定して、上告を棄却判決をしたのであった。

最一判令和2年7月16日

提供の動機、経緯に芸術性、思想性が認められるという弁護人の主張については

行為者によって頒布された電磁的記録又は電磁的記録に係る記録媒体について,芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の有無・程度をも検討しつつ,同条のわいせつな電磁的記録又はわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するか否かを判断するに当たっては,電磁的記録が視覚情報であるときには,それをコンピュータにより画面に映し出した画像やプリントアウトしたものなど同記録を視覚化したもののみを見て,これらの検討及び判断をするのが相当である。

とガン無視である。

しかし、下級審で、わいせつ性が認められたのは、性欲を刺激するという理由のはずである。これを前提にすると、周辺事情を取捨して、画像だけで性欲刺激を判断するというのは、かなりワビサビがなく、とても男子中学生的な判断である。

次に、データの提供は、女性器に対する卑わいな印象を払拭し,女性器を表現することを日常生活に浸透させたいという思想によるという弁護人の主張に対しては

女性器を表現したわいせつな電磁的記録等の頒布それ自体を目的とするものであるといわざるを得ず,そのような目的は,正当なものとはいえない。 

と、ろくでなし子の活動全否定というより全人格否定である。

結局のところ、わざわざ、呼び出して宣告するような中身のあるものではなかった。

 

ところで、わいせつ罪は、社会法益に対する罪であるが、なぜ、刑事罰の対象になるかというと説明が難しい。

現最高裁判事と同名のそっくりさんである刑法学者の山口厚氏は、わいせつ罪の保護法益を以下に捉えるかは困難な問題であるとして、性的秩序・風俗をわいせつ罪の保護法益としている。

しかし、現在の日本において刑罰によって保護しなければならないような性的秩序とか風俗とはなにかと問われるともやもやである。

むしろ、明治時代に処罰法規が設けられたから、今も保護法益を正当化するためにいろいろ考えているという感じである。

次に、わいせつとはなんぞやというのは結構難しい問題である。

サンデー娯楽事件(最判昭和26年5月10日)①いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、②普通人の正常な性的羞恥心を害し、③善良な性的道義観念に反するものというが理由を示し、これが、現在もわいせつの定義とされている。

そして、著名なチャタレー事件(最大判昭和32年3月13日)では、サンデー娯楽事件を踏まえて、さらに性的道義観念に踏み込んだ判断をしている。

猥褻文書は性欲を興奮、刺戟し、人間をしてその動物的存在の面を明瞭に意識させるから、羞恥の感情をいだかしめる。そしてそれは人間の性に関する良心を麻痺させ、理性による制限を度外視し、奔放、無制限に振舞い、性道徳、性秩序を無視することを誘発する危険を包蔵している。

この性欲=獣=非道徳って、いつの時代のどこの話だというところであるが、その後の裁判例を見ると、普通人の性的な性的羞恥心や性的道義観念というのが時代にそぐわないと考えたのだろうか正面から検討されなくなり、現在は、性欲刺激的要件1本主義的な基準になっている。

私は、これは判例変更じゃないのか?と思うところであるが、裁判所は、令和の時代になっても、昭和20年代の道徳観念にしたがって、明治に規定された刑事規定を擁護しているということである。

で、何が性欲を刺激するかという話であるが、これまた、日本は独特である。性欲刺激されるのは性器に限られるとでも考えているのであろうか。しかし、男性器モチーフのおみこしは相当リアルでもおとがめなしなので具体的になにがわいせつかは私にも良く分からない。

 

ところで、わいせつに関する考え方程、国によって異なることはない。

例えば、米国では、有名なミラー判決で、米国最高裁は、①通常人にとってその時代の共同体の基準を適用して、その作品が全体として好色的興味に訴えているか、②その作品が明らかに不快な仕方で州法によって特定的に定義された性行為を描いているか、③その作品が全体として重大な芸術的政治的科学的価値を描いているかというミラーテストを示した。その結果、米国ではハードコアポルノに処罰の対象が限定されている。

また、ジェンキンス判決で、米国最高裁は、禁止が通常の性欲を刺激するだけのものにまで及ぶ限りで修正第1条に反するとしており、チャタレー事件やその後の日本の裁判例とは性欲刺激に対する評価がまったく違う。

ただ、米国では、キリスト教の道徳的な規制が結構ある(あった)。この点、性器さえ出さなければ変態プレイなんでもありの変態天国の日本とは大違いである。

 

で、脱線から戻って、ろくでなし子の事件であるが、自己の性器のジオラマにも起訴されていたがこちらは無罪で確定している。
検察も弁護人も敗者である。焼け太りという声も聞こえてきそうであるが、旦那と子宝と一部無罪をゲットしたろくでなし子の1人勝ちということでいいのでは?

というわけで、ろくでなし子とやまべんの動画でもどうぞ。

 

 

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2020/07/27

RTの違法性

誰かの写真をリツイートしたものは、著作権侵害なのだろうか?

この問題について、最高裁が判断をした

最三判令和2年7月21日

最高裁の判断は著作権法19条1項の氏名表示権(著作者人格権)を侵害するというものであった。

第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。

リツイートは、写真そのものを公衆送信するわけではないので、裁判では、リツイートが著作物の公衆への提供に該当するのかが争点となった。

裁判所は

 同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。

と判断した。

また、クリックすれば元画像が見れるので、リツイートでも氏名は表示しているという主張については、

 本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。

と判断した。

この判断には、多数意見の他、戸倉三郎裁判官の補足意見の他、林景一裁判官の反対意見がある。

2人の裁判官ネット社会に対する考え方が良く出ているので是非読んでいただきたい。

 

で、私的には、リツイートに対しても発信者情報開示請求できるようにするべきと思っているが、この最高裁判決に対しては否定的である。

著作者人格権が焼け太りしすぎだからである。

著作権は、これまで、カラオケ法理等で不明確に保護の範囲を広げてきた。さらに氏名表示権まで広げることはあるまい。

「リツイートが人格権侵害?えらいナイーブな著作者ですな。」である。

で、著作権法は、著作者人格権侵害についても刑罰を定めている。

 
第百十九条 
1 省略
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(省略)

これを前提にすれば、リツイートしたら、京都府警がタイーホなんてことになりかねない。

おまけにWinny最高裁判決の例外性の基準であれば、ジャック・ドーシーはほう助が成立しかねない。
著作権の問題は、民事上の侵害行為のほとんどを刑事罰の対象にしているという法律の作り上、常に、民事上のバランス論だけではなく、刑事罰についても考えなければならない。しかし、そのことを理解している者は少ない。

最高裁判決が刑事罰に配慮した痕跡は皆無である。

そして、リツイートの際、著作者名の表示や著作者の同意等に関する確認を「現行著作権法下で著作者の権利を侵害しないために必要とされる配慮に当然に伴う負担である」と曰う戸倉裁判官は決して良くない意味で期待外れ感満載である。

岡口裁判官の件で、Twitter嫌いになったのかな?

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2020/07/06

8回忌?

Winny製作者の金子さんが2013年7月6日亡くなってから今日で満7年になる。

7回忌かというと、7回忌は満6年の命日の法事を言うらしいので8回忌になるのだろうか?そんなものは無いと言われたらそうなので、私は良く分からない。

今年は、Winny事件と金子さんのことを書いた「Winny」を出版することができた。

出版まで何年もかかったが、先日、金子さんの墓前に本を供えることができた。

出版は、弁護士ドットコムで「天才プログラマー金子勇さんを無罪に導いた壇俊光弁護士、Winny事件の裏側と友情を語る」とか朝日新聞の「ひと」欄で「壇俊光さん ウィニー事件で無罪判決までの道のりを本にした弁護士」とかでとりあげてもらったりした。

朝日新聞からは墓前に行く日をだいぶん聞かれたが、一人で行きたかったので、ナイショにしていたのである。

 

今日は、過ぎた日のことを想いながら1日を過ごしたい。

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2020/05/27

花は咲く。きっと。

本日、巨大IT企業規制法が成立したようである。

共同通信

日本が、海外のITサービスに席巻されてから久しい。

ところで、某女性がSNSでの誹謗中傷を苦に自殺したということが報道されてから、高市早苗大臣もSNS上で他者を誹謗(ひぼう)中傷するなどした悪質な投稿者を特定しやすくする方策を検討していると発言するなど、ネットでの誹謗中傷対策を求める声が沸いているようである。

確かに、ITは一般の人の情報発信が可能となった反面、悪意ある発言も本人に届きやすくなっている。

ダルビッシュ曰くこんな感じだそうである。確かに、有名人は特に大変だと思う。

 

 

で、我が国で発信者情報を認めているのは「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」いわゆる「プロバイダ責任制限法」4条1項に基づく発信者情報開示請求だけである。

で、このプロ責であるが、お世辞にも使い勝手はよくない。

日弁連でも、

2011年6月30日付『「プロバイダ責任制限法検証に関する提言(案)」に対する意見』

2013年11月6日付「プロバイダ責任制限法改正についての要望書」

消費者問題の救済に関してではあるが2010年11月16日付「消費者の救済のための発信者情報開示制度に関する意見書」

とことあることに問題点を指摘し、

2011年には、私が、直接、プロバイダ責任制限法検討WGで、やんわりとではなく、その出来の悪さを指摘したが、通信の秘密の守株をドグマとする総務省はガン無視で、私達を開示村の一部の意見と蔑み、省令の小改正に留めてきた。

そんなことを言っているうちにも、海外法人相手の手続きを要することが増えて、被害救済へのハードルは年々高まっているのである。

現在、総務省は、発信者情報開示の在り方に関する研究会を開催している。

しかし、伝え聞くところによると、総務省はまた、省令の小変更で終わらそうとしているようである。

今、必要なのは、ネットの匿名性を尊重しつつ、違法な行為については、速やかに本人を特定する手段である。もともと出来の悪いプロ責法は今大きく軋んでいる。

願わくば、今回の件が教訓となって、誰もネットでの中傷を苦に死ぬことのない法制度へと、花を咲かすように。

 

ところで、本件以降、SNSや動画共有サイト等でネットの誹謗中傷対策を宣伝する弁護士が増えたような気がする。

彼らのほとんどを私は知らない。そして、発信者情報開示への道は過払いのように誰でも飛ばせる舗装道路ではない。

パチモンではなく、この分野の経験ある本物の弁護士に依頼することをお勧めしたい。

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LIBRA2019年12月号より

LIBRAとは、東京弁護士会の発行している会報である。

インターネットでも公開しているので読める。

その中で「インタビュー岡部喜代子さん」という記事を見つけた(ずいぶん前に)。

岡部元最高裁裁判官に対するインタビューで、Winny事件に触れられていた。

──最高裁判事の立場からみて,弁護士の活動で良い印象が残ったものはありますか。

そうですね,Winny事件というのを担当しました。「Winny」って当時としてはかなり最先端のIT技術でしょう。私は初め分からなかった。これはどうしようかなと思って記録をずっと読んでいったら下級審で証人尋問をしていた。「Winny」の中身というか,どういう技術なのかということについて専門家を呼んで弁護人が尋問しているのですが,その尋問がすごく良くできていて,私みたいな人にも,「Winny」たるものは何なのか,どういう技術でどれだけ大事なのかということが本当に読んでいたら分かってきました。裁判官がどこを疑問に思うのかということを理解しているのだと思いました。

下級審での専門家証人は複数おり、私が主担当をした証人か副担当をした証人かはわからないが、読んでてが恥ずかしくなるくらいのえらいお褒めをいただいたようである。

専門家証人は、いずれも、小説に載っているので興味がある方はどうぞ。

じゃあ、なんであの基準?というのは置いておいて、技術立証におけるスコープは非常に難しかった。

弁護団の中には、裁判所はITを知らないのでIPアドレスの用語の説明を説明するべきだという者もいたが、時間の無駄だしIPアドレスを理解してもWinnyを理解したことにはならないし、本当に伝えるべきことがぼやけるのでやらなかった。

岡部裁判官がよく分かったとおっしゃってるのを見るかぎり、この戦略は成功したということなのであろう。

ただ、私は、当時、団長が理解していることは、裁判所も理解できるはずなのでやらない。それ以上に立証を絞る。という不遜にも程があることを言っていたので読んでいて複雑な気持ちである。

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