ワンクリック詐欺についての基礎知識
対処法を一気に書こうと思ったが、なかなか時間が思うように取れない。
そこで、一気に記事にするのではなく、サイバー法の基礎知識から、何回かに分けて説明することにした。
続編はまた気が向いたら書くことにする。
ワンクリック詐欺について、多くの人が不安に思うのは、
「もしかしたら、規約があるから料金を払わないといけないのではないか」
という漠然とした疑問にはっきりと「NO!」
と言えないからではないだろうか?
しかし、実際のところワンクリック詐欺で料金支払い義務が生じるのは、皆無なのである。
今回は、その理由について説明する。
なお、業者がここを見て対策をしてしまうかもしれないので、全部は書けないので、この点はご容赦。
~注意 ここの記事は、サイバー法初心者対象です。~
一般に料金を支払う場合、前提として契約が成立してなければならない。
(細かいつっこみは禁止)
たとえば、コンビニでおにぎりを買うとき、これは「売買契約」によるものであるし、
家賃を払うのは「賃貸借契約」、私たちが料金を払う際には契約というものが
成立していなければならない。
では、契約というのは、どのようにして成立するのであろうか。
契約は、「申込」と「承諾」の2つの「意思表示」がある場合に成立するのである。
逆に言えば、申込と承諾がなければ、契約は成立しない。
意思表示というのが何かについて、正確にはむずかしいのだが、この場合は、契約成立をさせようという自分の考えを相手に伝えることだと考えて欲しい。
例えば、大阪で昔ながらの八百屋の会話で考えると。
買主「このほうれん草ちょうだい」←申込
売主「まいどおおきに」←承諾
ということになるのである。
これを、インターネットで置き換えると少々ややこしいことになる。
チャットで会話でもされていたのであれば良いが、大抵の場合、買主は売主が作ったホームページ等を操作して契約手続を進めていく。
多くの場合、ボタンをクリックした場合に契約が成立するというふうにしているが、これは、「クリックオン契約」と言われている。
この「クリックオン契約」は、契約として有効なのかについては、結構難しい問題ではある。
しかし、上記の契約の原則から言えば、クリックオン契約も契約である以上、「申込」と「承諾」が必要である。契約内容も知らないでクリックしたような場合は、そもそも契約に向けられた「意思」自体が無いのであるから「意思表示」は無いのである。
(ここは、つっこみたくてもつっこまないように)
これをワンクリック詐欺の事案で考えてみよう。
ワンクリック詐欺は、見やすい位置に規約を書いてないし、料金発生の告知をしていない。
したがって、意思表示がないのであるから、契約が成立していないのである。
他方、業者の立場を刑法的に考えると、財産的な利益を得るために、虚偽の事実を述べて相手を誤信させるような行為は実際に財産を得なくても詐欺未遂である。
ワンクリック詐欺では、契約が相手に対して契約が成立したと誤信させるようなメールを送って、登録料を請求しているのだから、刑法的には詐欺未遂罪なのである。
世間で、無視するようにと言われているのは、このような理屈が背景になっている。
やはり、相手が料金請求をすることは無理なので、対処法は「無視する」ということになるのである。
(手続法的な問題があるので、万一、裁判所からの訴状等の書類が来たときは別である)
むしろ、自宅や職場の住所や電話番号等をこちらから喋るのは、個人情報を知らせ、嫌がらせの手段を与えるのである。。。
万一、業者から電話がかかってきても、きっちりと上の理論を述べて、キッパリと断って欲しい。
また、刑事事件として警察に申告する方法もある。
(このあたりをいろいろ言いたいのであるが、言ってしまえば、
ここをしょっちゅう見に来ているお巡りさんのお叱りを受けるので
難しいところである。)
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