裏から固める尋問
1年くらいまえに、刑事事件で法廷に行ったら、前の事件の証人尋問があった。
どうやら、犯人を目撃した証人の尋問だったのだが、反対尋問した弁護士の先生の尋問はこんなものであった。
・・・・・・・
先生 「あなたは、暗くて良く被告人が見えなかったのじゃないですか?」
証人 「いいえ」
先生 「暗くて良く見えなかったのではないですか」
証人 「いいえ、その程度くらいは見えました」
・・・・・・・
このような尋問は、俗に「裏から固める尋問」と言われている。突き崩すはずの反対尋問で証人の証言の信用性を高めてしまっているのである。
そもそも「被告人を見た」って証人に来てるのに、「見えなかった」など言うわけ無いのである。このような尋問では無罪などあり得ない話である。
あえて批判を恐れずセオリーを言うと、暗くて被告人が見えなかったことを出したいのであれば、
まず、当日の日の入りの時間、街灯の位置・点灯時間、当日の被告人の位置、証人の位置、証人から被告人までの距離、証人から見た被告人の背格好や服装等の記憶を押さえ無くてはならない。
その上で、当日の証人の位置に立っていれば見えたはずの物を洗い出して、その物までの距離をすべて把握して、当日、見えなかったものやよく見えなかった物に関する証言を引き出す。
さらに、その上で被告人と証人との距離が見えなかったと証言したものよりも距離が長ければそれで矛盾だし、ぼんやりとしか見えていないような状況で被告人の当日の服装だけがあまりにも詳細に証言されているなら、それはそれで不自然な点になる。
私の事件ではないが、実際の事件でも、目撃証人の「犯人は170センチ以下の小柄の男」という証言から、「身長180センチ以上の体躯堂々とした」被告人との矛盾点をついたという場合もある。
というわけで、傍聴している人には「なに聞いてんだ?」という質問が、実は、重要な布石だったりするのである。
事件の傍聴録を見る際にもそのような観点から見ていただけると、新たな発見があるかもしれない。
というわけで興味がある人は、11月7日の公判に来てもらえるとありがたい。
ただ、グリグリの反対尋問は無いのであしからず。
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