ステーキの定義
フォルクスが公正取引委員会から排除命令を受けた。
ビーフステーキというのは、一枚肉という判断をしたのがおもしろかったので、この記事で取り上げたのであるが、一般の方には今回問題になっている景表法という法律は耳慣れないかもしれない。
実は、弁護士にもあまり知られている法律ではない。
景表法の正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」である。
これは、独占禁止法の特例として定められた法律なのである(景表法第1条)
独占禁止法というと、公正・自由な競争を促進する目的の法律である。闇カルテル問題などでニュースを騒がせることのあるので聞いた事があるかもしれない。
で、景表法も公正な取引のための法律だったりするのであるが、不当な表示(景表法4条)に該当する場合は、公正取引委員会は排除命令(6条)を出すことが出来るので、消費者保護の色合いを強めつつあったりするのである。排除命令が出された事例というのは意外に多かったりする。これについては、公正取引委員会のホームページを見て欲しい。
しかも、この景表法は、凄いことに、公正取引委員会は、必要な場合は業者に表示関する資料の提出を求めることができ、資料の提出が無ければ不当表示とみなすことができるのである(4条2項)。要するに、「事業者は表示するからにはそれなりの根拠をもっておきなさい。そうでなければ表示を禁止しますよ」ということである。
ところで、景表法に関しては、立証責任の転化ができた。しかし、本来の消費者保護法である消費者契約法は事業者に立証責任の転化までは認められていない。これについては、立法のねじれを感じる。消費者保護に携わる一人として、この点もがんばって欲しいところである。
追記
フォルクスのHPを見た。
「公正取引委員会が品質に問題がないと認めている」と記載されている部分は違和感を覚える。
そもそも、公正取引委員会は食品の安全性について判断する場所ではない。内閣府の外局で公正で自由な競争を目的とするところである。食品の安全性についての判断などは厚生労働省がおこなっているのである。
フォルクスがこのような発表をすること自体、立法のねじれを示す一例であろう。
もちろん、公正取引委員会のプレスリリースにも、品質に問題がないとは全く書かれていない。
フォルクスはサラダバーをよく利用していた。今回の加工が、発表のとおり、より柔らかくするための加工で、また、本当に安全なのであれば、堂々と売れば良い。もし、「加工肉」という名前が良くないのであれば他の名称でも良いだろう。ただし、今の日本では「本当に安全か?」が、一番大切な問題なのである。消費者に必要な情報の開示はしなければならない。
平成12年には未認可食品添加物を使用して食品を大量に販売した事件があった。この事件では、当時の取締役は未だに「人体に影響はなかった」と言い張り、混入の事実を公表しなかったことについても「明らかになったら大変だから」と言い、事実を公表しないことを経営判断と言い張っている。このような、日本の現状を見て、ふとそう思った次第である。
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