弁護人とは?
弁護士に対して良くある質問に、「どうして悪い人を弁護するのか?」がある。私は、「テレビや新聞では報じられないことが、実際の事件にはあるから」と言うようにしている。
一つとして同じ事件はない。被告人もそれぞれである。中には自分も同じ立場だったらどうなっていたか解らないと思う人もいる。無実の罪に問われている人もいる。事情を考えずに「悪人」と聞かれても答えようがないのである。
私的には、殺人などの世間で凶悪犯と言われている犯罪は、弁護人として主張してあげるべき事項も多いような気がする。一般的に重大な犯罪を行うには、それだけ重大な事情があるからである。
昨日は、元被告人と酒を飲み交わしていた。彼は、刑務所で服役してから仕事を見つけてがんばっている。アクリル板の間柄からテーブルと日本酒の間柄になった事はとてもうれしいことである。それまでアクリル板の向こうでしか会ったことのない彼は、思っていたよりも小柄で、すこし年をとったように思えた。彼はいろんな事を話してくれた。事件のこと、刑務所での生活のこと、仕事のこと、大きくなった孫のこと、独身の私に対して40才くらいに結婚したら良いとアドバイスまでしてくれた。事件を担当している間は被告人であるが、事件が終われば1人の人生の先輩である。
彼が「事件でいろいろあったけど、先生と知り合えたことだけが良かった事かもしれない。」と言ったとき、不覚にも涙が出そうになった。私は、弁護士という仕事の魅力は事件を通じて人の人生に何かできるかもしれないからだと思っている。彼の一言は、私にとって最大の喜びである。弁護士という仕事に就けたことに感謝している。
それにしても本当に40才で大丈夫ですかね。
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