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2006/08/26

2006/08/26

R30を見て

なんかあったら嫌なので、フィクションだと言っておく。

昨日、たまたま、R30という番組を見た。

夜回り先生こと水谷修先生が特別講演で、
子供達に薬物使用の危険を呼びかけているのを見ていて、
弁護士になってすぐに担当した国選事件を思い出した。

その事件の被告人は、二十歳そこそこの女の子で、
人付き合いが下手で、優しくしてくれる人になついているうちに、
つきあっている彼氏が覚醒剤を使っているので、
律儀に、覚醒剤までおつきあいしてしまったという事案である。

この事件、執行猶予はまず、大丈夫である。
しかし、彼女の心の問題をどうにかしないと、再犯をしてしまうだろうと思った。

私は、拘置所で時間をかけて、彼女に、これまでの人生をいろいろ話してもらった。
親の期待がつらかったこと、特に母親との関係が難しかったこと、
現実逃避のように覚醒剤を使ったときのこと。
母親について「すごい綺麗なんだよ」と自慢げに話しているのを聞いて、私は、「まだ、大丈夫やり直せる」と思った。

私は、両親とも話した。
こういう事件は得てして子供を責めていることが多いものだが、
この事件も同じであった。
私は、両親に対して「親があきらめたら終わりなんですよ」
というような事を熱心にした気がする。

審理当日、母親は情状証人に来て泣きまくり、それを見た本人も泣きまくりであった。実は、法廷で涙を流す人は多いのだが、その話はまた別の機会にでも。

その事件は、結局、執行猶予で、家族の元に帰れたのだが、本人にとっての本当の闘いはその後である。
覚醒剤の良さを体で覚えてしまうとやはりつらいものがあったのであろう。彼女とは、手紙のやりとりをしていたのであるが、親との関係が良くなったことを喜んでいたときも、悪い友達の誘惑に悩んでいたときもあった。

しばらく、手紙が無くどうなったのやらと思っていたら手紙が来た。

「私、結婚しました。3月中旬には男の子が生まれるんです。だんなさんは2つ年下の優しいひとです。
~子供ができるちょっと前まで、たまに、シャブ打ったりしてました~尿検査でマイナスが出たのでそのまま家に帰らされました。今、思うとあのときプラスやったら私は今頃ヘイの中やったんやと思うとゾーッとします。
そんなこんなでシャブをやめてそれから今日までシャブはしてません。これから先も大丈夫やと思うけど…。イヤ絶対大丈夫。
今まで全然出来なかった親孝行もいっぱいしていってます。
~もうすぐ子育てでよけいな事に気が行かんとおもうし…
なんせがんばります。」(一部抜粋。内容も少し変更あり)

また薬使って、実刑になったらどうするつもりやってん!という問題はある。
しかし、結局、他の誰の力でもない、自分の力で薬に別れをつげる
勇気を持ったことは、何よりもうれしいことである。

この事件は、刑の重さ的には、
誰が弁護してもほとんど一緒の、
数多くある事案の一つにすぎない。
しかし、そんな事件にも一人の人生がある。
私たちが、一生懸命しているのは、そういう事件である。

それにしても、
「水谷先生くらい、話がうまかったら良いよなぁ…」とぼやいていたりする、今日この頃。

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