みそ字の著作物性
「のだめカンタービレ」のドラマは見たことがない。漫画を年末に大人買いをした。けっこうこっぱずかしいものである。法律から頭をはずすのには良いかもしれない。
まんが中に、「みそ字」なるフォントが用いられているのを見た。インターネットで検索したところ、みそ字をつかってみたいという多数の声と、「みそ字」はモデルとなった方に著作権が帰属するという記事を発見した。
ん?
あわてて、みそ字を見直してみた。
ちなみに、一般的には文字は情報を伝達するどうぐで、思想感情を創作的に表現したものではない。
著作物として認められる場合もあるが、最高裁平成12年9月7日判決「印刷用書体ゴナU・ゴナM」事件では、「顕著な特調を有する独創性」と「美術鑑賞の対象と対象となりうる美的特性」が要件とされた。つまりフォントに著作物となるのは「美術」の著作物と同視しうるような場合に限られる。
なお、この事案では著作物性を否定された。
下級審も大体同様の基準であり(東京高裁昭和54年4月26日「ヤギ・ボールド」事件、大阪地裁平成元年3月8日「写真植字機文字盤製造」事件、東京高裁平成8年1月25日「Asahi」事件)実務的に、フォント自体に著作権が認められることは皆無と考えてよい。
念のために、「みそ字」を勝手に流通させるようなことは絶対やめて欲しい。作者の努力と汗を無駄にしかねないからである。その上で言うと、私が見た範囲では、「みそ字」に著作物性が認められることは無い。
ここでの問題は、著作物性についての豆知識ではなく、世間では「価値のあるよく分からないもの=著作物」という認識が広まっていることに対する危機感である。弁護士もこのことを分かっていないことが多い。とりあえず著作権侵害を主張しておけ的な書面もよく見る。著作権法は芸術と文化の発展のための法律であるが、コンテンツビジネスが中心となるにつれて「ビジネス=著作権」となっている。また、著作権法が刑罰法規であることが忘れられているのも問題であるが、またの機会にする。
最後に「著作物ではない≠勝手に流通させても適法」である。損害賠償請求を受けても私の関知することではないのであしからず。
どこが、法律から頭をはずすんだか…。
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