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2008/02/22

2008/02/22

Roots1.5

ちょっと前の記事である。

中国産食品の問題が勃発しているなかで、数年前から食品の信頼性とコンプライアンスに取り組み一定の成果を上げたことについては、良かったと思っている。

他の点でもこの事件は私の人生に大きな影響を与えた事件である。

私は小さな機械屋の小せがれである。

父は、ある機械を開発した。私も、当然、開発に携わっていた。といっても、鉄を切ったり、削ったり、穴を開けたりなどであるが…

悪戦苦闘の末に、非常に優秀な機械が完成した。大阪の小さな町工場でも技術があれば、驚くようなものが出来ることがうれしかった。私が物作りの楽しさを一番感じていたときかもしれない。

ある会社の担当者はその機械を見て「20くらいの特許がとれそうだ」と喜び、「絶対にあなたのところにしか発注しないから、特許はこちらに欲しい」と提案してきた。

その内容は、契約書に明記されている。しかし、その会社は、実際には父に発注せずに自分の懇意にしている会社に発注した。体よく特許だけ奪うつもりだったのかもしれない。

明らかに契約違反である。しかし、法に無知で、開発にすべてを投入して弁護士費用の捻出もでき無かった父は裁判すらできなかった。契約書は力が伴わなければただの紙切れなのである。

あのときの父は本当に情けない顔をしていた。

闘う力が欲しい。

その思いが、そのとき大学の法学部にいた私に司法への道を選ばせた。

もちろん、道のりは簡単ではなかった。志があったからなどという安易なサクセスストーリーではない。報われない努力を恨んだことは何度もあったし、自らの選択を後悔したこともあった。何度もやめようと思った。

それでも私は弁護士になった。

私が司法試験を志した年に、その会社では新しい社長が就任した。彼は中興の祖と呼ばれ飛ぶ鳥を落とす勢いであった。

しかし、10年くらい後に、彼はTBHQに関する隠蔽で5億円の賠償を命じられ、かつての栄光は見る影もなく崩れてしまった。

そして、その取締役の尋問を担当したのが私であった。

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