私が、修習をした53期8組には、当時74才の同級生がいた。
仕事をリタイアしたことを契機に、残りの人生を人のために使いたいと一念発起した方であった。私にとって、クラスの大切な一員だった。同級生というだけでない、人生の偉大な先輩でもあった。
戦時中、陸軍で隼の教官をしていたということで、いろいろなことを教えてもらった。
「靖国には、死なせてしまった教え子が祀られている」と話しながら、涙を流しているのを見たとき、私は、机上の空論しか持たない自分を恥じたものである。
しかし、残念ながら、体力的な理由で、前期修習でリタイアされた。
私は、定期的に飲み会を開催することにした。あの、めんどくさがりの私がである。絆が欲しかったのである。
その会は、やがて、年1回の忘年会となり、今年、弁護士になって10年の忘年会が開かれた。74才の同級生は、87才の元同級生になった。いまだ健在である。
忘年会には、忙しい中、地方から駆けつけてくれる人もいる。私は、毎回、人徳の力を思い知らされる。
私が、そのような存在になれる日はいつか来るのだろうか?
ところで、今回、わざわざ来てくれた裁判官との会話。
「壇君太ったねぇ」
「太ると癒し系に見えて良いこともあるのよ」
「じゃ、しゃべっちゃだめじゃん」
…相変わらず手強い奴…。