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2011/01/10

2011/01/10

廃人

廃墟写真の判決があったようである。

判決

原告代理人には、最近、夫婦同姓主義者と飽くなき戦いを繰り広げている小倉先生が就かれたようである。

この事案、メインの争点は、廃墟を被写体とする写真と同一の被写体を撮影した写真を作成・出版した行為が著作権侵害に該当するかである。

前提として、著作権法ではアイデアは保護されない。

裁判所は、原告が主張する被写体の選択を、アイデアに過ぎないとし、その上で、原告の写真の表現上の本質的な特徴を、被告の写真から直接感得することはできないとして、著作権侵害の主張を一蹴した。

まぁ、平たく言えば、裁判所は、似てないと言ったわけである。

また、原告は、読売オンライン事件を倣って、著作権侵害とならないまでも、努力して築いた利益を侵害されたとして、一般不法行為を主張した。

しかし、裁判所は、廃墟の発見や発掘に時間や労力を要したとしても、そのことから直ちに他人が当該廃墟を被写体とする写真を撮影すること自体を制限したり、最初に被写体として取り上げたものを表示することを求めることができるとするのは妥当ではないとして、原告の主張を一蹴した。

写真は事物をそのまま記録するものであるため、特に風景写真などでは、撮影した写真の一部または全部を利用したような場合でない限り、著作権侵害は成立しにくい。被写体の選択は表現の一要素であるが、被写体の同一性だけで著作権侵害になることは無い。

そうでないと、タレントさんの撮影など著作権侵害の黒歴史となる。

また、最初に被写体を見出したものの許可を得なければ撮影できないのであれば、被写体撮影独占権なるものを認めるに等しくなる。

裁判所の事実認定を前提にする限り、もともとの原告の主張に無理がありすぎである。

ついでに、福井健策先生へのインタビュー記事を紹介しておく

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私的録音録画補償金の果て

デジタル放送専用レコーダーの私的録画補償金をめぐって、支払いを拒否した東芝に対し私的録画補償金管理協会(SARVH)が賠償を求めた裁判の判決が12月27日、東京地裁で言い渡された。

結果は、東芝の勝ちで、SARVHの請求は認められなかった。

判決

主な争点は、東芝の販売するDVD録画機器が著作権法30条2項の定める機器に該当するか、該当するとして、著作権法104条の5によって、メーカーが私的録音録画補償金を支払う義務を負うかである。

著作権法

第三十条

2 私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 

著作権法施行令

第一条 著作権法 (以下「法」という第三十条第二項法第百二条第一項 において準用する場合を含む。以下この条及び次条において同じ。)の政令で定める機器のうち録音の機能を有するものは、次に掲げる機器(他の機器との間の音の信号に係る接続の方法で法第三十条第二項 の特別の性能を有する機器に用いるものとして文部科学省令で定めるものを用いる機器を除く。)であつて主として録音の用に供するもの(次項に規定するものを除く。)とする。
(以下略)

この点について、裁判所は、特定機器に該当するとした。

東芝側は、ダビング10等の著作権保護技術があることや、地デジに対応した機器に課金されたら、著作権保護施術の対応コストと私的録音録画補償金の2重の負担を強いられることになる等と法制度の趣旨や主張しているが、条文がマンマなので、法令解釈の枠を超えていると排斥された。
次に、著作権法104条の5の協力義務から、私的録音録画補償金の支払義務が認められるかである。
(製造業者等の協力義務)
第百四条の五 前条第一項の規定により指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない。

これについては、裁判所は、条文上、協力義務とあるのは、法的に支払義務を認めるものではないとした。

これに対してSARVHは、第125回国会の衆議院文教委員会で、文化庁次長が,「義務違反があれば通常の民事上の手続によってその実現を求めるということになる」と言ったこと等を理由に、支払義務を主張したが、裁判所は、このような断片的な答弁で、支払義務が認められるものではないと排斥した。

いずれの争点も、裁判所は、双方の苦しい条文解釈を退けた。その結果、より根本的なところに無理があったSARVHが破れたという形である。

この判決について、岸博幸さんは、実質SARVHの勝訴みたいなことをおっしゃっておられるようであるが、実際は、負けるべくして負けたという感じである。

私としては、法が、協力義務としているのが金銭の支払義務となるのであれば、法は、誠意を見せるが、金銭の支払いや自傷行為を意味する世界と変わらない事になりかねない。著作権法に法定けじめ料を認めるのは嫌なので、今回の裁判所の姿勢には賛成である。

ところで、耳慣れないSARVHという団体であるが、私的録音録画補償金の管理をしている団体である。

http://www.sarvh.or.jp/dis/a_navi.html

そこで、注目は、私的録音録画補償金の使われ方である。

補償金は個々の権利者に配分されるわけではない。JASRAC等の団体に分配される。逆に言えば、各団体に加盟していないアーチスト等は、どうすれば良いのだろうか?

また、補償金の20%は、著作権者及び著作隣接権者に共通する有意義な事業に使う基金(「共通目的基金」)として、著作権制度知識の普及、創作の振興など、以下の事業に使われます。

録音録画補償金の20%、平成21年では3億5000万円が、権利者に行き渡るわけでもなくトップオフされているのである。

その利用方法も、著作権情報誌とか、広報ビデオなどの、いかにもな事業のための利用である。私的録音録画補償金は法定所場代になりかねないことは、今後の立法の際に、注意するべきことと思われる。
デジタル時代のコピーライトを迎え、文化の発展には、どのような制度が相応しいかをもう一度考えるべき時期に来ていると思われる。

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刑事告発

記事

秋田市の弁護士、津谷裕貴さん(55)が昨年11月、自宅で刺殺された事件で、現場に駆け付けた警察官が津谷さんを犯人と誤認して取り押さえたため津谷さんが殺害されたなどとして、東京の弁護士が業務上過失致死の疑いで、警察官2人を秋田地検に告発したことが8日、地検関係者への取材で分かった

これについては、遺族の方も、故津谷弁護士の会のメンバーも告発はしていない。

義憤に駆られての事だとは思うが、事実関係の十分な調査や遺族の気持ちの確認無しに告発をするのはいただけない。

秋田地検を含めた組織一丸の、体面を守るための事実の隠蔽がおこなわれないことを願っている。

 現場に居合わせた津谷さんの妻は「(津谷さんを)犯人と間違えた警察官が、両脇から取り押さえた状況があった」と主張しているが、県警は「被害者を犯人と誤認してはいない」として、対応に問題はなかったとの認識を示している。

最初、謎の体さばきを語っていた警察が今度は、誤認すら否定しだした。

お上の都合で作られた歴史は、もう要らない。

本当に必要なのは、ただ一つの真実である。

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