廃人
廃墟写真の判決があったようである。
原告代理人には、最近、夫婦同姓主義者と飽くなき戦いを繰り広げている小倉先生が就かれたようである。
この事案、メインの争点は、廃墟を被写体とする写真と同一の被写体を撮影した写真を作成・出版した行為が著作権侵害に該当するかである。
前提として、著作権法ではアイデアは保護されない。
裁判所は、原告が主張する被写体の選択を、アイデアに過ぎないとし、その上で、原告の写真の表現上の本質的な特徴を、被告の写真から直接感得することはできないとして、著作権侵害の主張を一蹴した。
まぁ、平たく言えば、裁判所は、似てないと言ったわけである。
また、原告は、読売オンライン事件を倣って、著作権侵害とならないまでも、努力して築いた利益を侵害されたとして、一般不法行為を主張した。
しかし、裁判所は、廃墟の発見や発掘に時間や労力を要したとしても、そのことから直ちに他人が当該廃墟を被写体とする写真を撮影すること自体を制限したり、最初に被写体として取り上げたものを表示することを求めることができるとするのは妥当ではないとして、原告の主張を一蹴した。
写真は事物をそのまま記録するものであるため、特に風景写真などでは、撮影した写真の一部または全部を利用したような場合でない限り、著作権侵害は成立しにくい。被写体の選択は表現の一要素であるが、被写体の同一性だけで著作権侵害になることは無い。
そうでないと、タレントさんの撮影など著作権侵害の黒歴史となる。
また、最初に被写体を見出したものの許可を得なければ撮影できないのであれば、被写体撮影独占権なるものを認めるに等しくなる。
裁判所の事実認定を前提にする限り、もともとの原告の主張に無理がありすぎである。
ついでに、福井健策先生へのインタビュー記事を紹介しておく
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コメント
壇先生は廃墟事件の結論を支持されるようですが、すいか事件の結論との違いをどのように説明するのですか?
投稿: とくべい | 2011/01/10 16:46
ちなみに、私は、この事件は小倉大先生には珍しく勝ち筋の事件とみて見守っていましたが、大先生は相当裁判所に嫌われているようですな。
まねきTV事件も、判決見直しみたいですし。
投稿: とくべい | 2011/01/10 16:49
>とくべいさん
すいか事件との違いは、どれだけ表現の本質部分が似てるかという事実認定のレベルと思います。
私の意見も裁判所の事実認定を前提にする限りの意見です。事実が変われば結論も変わります。
自分で人工物を配置して撮影した場合は、建築物などを撮影した場合よりも、著作権侵害が認められやすいと思います。
ちなみに、小倉大先生が、裁判所に嫌われているとも思いません。まねきTV事件=小倉先生の事件とも思っていません。
投稿: Toshimitsu Dan | 2011/01/10 17:30
その前の週に勝っているのに、ひどい。>とくべいさん。
投稿: 小倉秀夫 | 2011/01/12 13:41
あらら。。。
大先生に発見されてしまうとは思いませんでした。。。失敬。。。
ところで、「その前の週に勝っている」って、何の事件でしたっけ?
廃墟写真事件は、控訴したのかしら?応援してますよ。
投稿: とくべい | 2011/01/13 18:03