グーグルストリートビューに対する損害賠償請求棄却
グーグルストリートビューによって、プライバシー権が侵害された等として、20代の女性が損害賠償請求をしていた事件についての判決が、3月16日にあった。
判決は、女性の請求を否定した。
原告は、ベランダに干してきた洋服や下着を私有地から盗撮したと主張していたが、裁判所は、公道から撮影されている。本件住居のベランダに洗濯物らしきものが掛けてあることは判別できるものの,それが何であるかは判別できないし、原告個人を特定出来ないと判断した。
さらに、裁判所は
そして,元来,当該位置にこれを掛けておけば,公道上を通行する者からは目視できるものであること,本件画像の解像度が目視の次元とは異なる特に高精細なものであるといった事情もないことをも考慮すれば,被告が本件画像を撮影し,これをインターネット上で発信することは,未だ原告が受忍すべき限度の範囲内にとどまるというべきであり,原告のプライバシー権が侵害されたとはいうことができない。
と示している。
この手の事件で、違法性のメルクマールをどこに求めるかは諸説あるかもしれないが、裁判所は、受忍限度論という従前の枠組みで判断し、さらに、公道上を通行するものからは目視できる等の理由から、ストリートビューは受忍限度の範囲としたのである。
要するに、公道は基本的にはパブリックな場所でなので、相応に受忍しなさいということである。
グーグルストリートビューを巡っては、公道を通る人が見るのとは、インターネット上で多くの人が見れるので違う説、長期間保存するから違う説、細い道まで撮影しているから違法という説、挙げ句の果てには住居の外観はそれ自体個人情報という説まで諸説あるが、裁判所はそのどれも取り合ってない。
おそらく本人訴訟だからなのであろう。この点、裁判所がどういうか興味がある。
私の、グーグルストリートビューに対する考えは、
記事
のとおりである。中途半端という批判もあるかも知れないが、大きな視線で見るのが大切と思っているのである。
ちなみに福岡弁護士会では、ストリートビューを違法視されておられるようで、中止を求める声明なんて出していたりする。
その福岡で、棄却判決がでたことは、とても皮肉である。
日弁連も、ストリートビューに対して、、否定的な意見書が公開されている。
私は、内容があまりにあれなので反対したのであるが、日弁連のお偉い方々は、こういうのがお好きなようである。
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