検察側のみ全文提供
布川事件の再審無罪判決をめぐり、水戸地裁土浦支部が判決当日、法廷で読み上げた全文を検察側のみに提供していたことが1日、分かった。弁護団が記者会見で明らかにし、「検察官だけに偏った取り扱いで、公正を疑わせる」と批判した。
だそうである。
刑事事件は、判決の際に判決書きを用意することは要件ではない。2ヶ月くらい待たされることもある。それでは判決書きを見る前に控訴趣意書の提出期限が終わるではないかと焦ることもある。
では、なんの書類も作ってないのかというとそうではない。重要な事件で、裁判長が、手ぶらで判決をすることはまずない。ほとんどの場合手控えを読み上げている。
そして、控訴期限は14日である。
というわけで、控訴や控訴趣意書を検討する際には、裁判所の作った草稿があれば有り難いのである。しかし、草稿は、検察には渡しても弁護人には渡さないというのは、この世界の暗黙の了解になっている。
弁護人が、判決の際に、一生懸命メモを取っているのは、けっして、弁護人がメモ好きなのではないのである。
それだけではない。
裁判所が、検察に、裁判所に提出された証拠を貸すということもあった。しかし、弁護人に証拠を貸すなどあり得ないことである。
期日が終わって、検察官が裁判官室にぶらっと来て、さっきの期日について、こんな証拠無いの?とか話をするのは、珍しい話ではない。しかし、弁護人が裁判官室にぶらっと来れば、不審者扱いである。
そもそも、法律の立て付け自体、検察側特別待遇なのである。Winny事件でも、お巡りさんが作った捜査報告書はデタラメでも証拠採用されまくりで、他方で、弁護人からの請求証拠は不採用ということもあった。
要するに、刑事弁護とは、基本的には、検察と裁判所の強力タッグに対して、孤独な戦いを強いられる超ハンディキャップマッチなのである。
というわけで、ときどき、「弁護士って大変なんですね」と思っていただけたら有り難いところである。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)