福井事件再審決定 検察が異議申し立て
福井市で1986年に中学3年の女子生徒が殺された事件で、名古屋高検金沢支部は5日、元被告の前川彰司さん(46)=懲役7年判決確定、服役=の再審を開始するとした名古屋高裁金沢支部の決定を不服として、名古屋高裁に異議を申し立てた。
そうである。
記事
異議申立で勝負せんでもいいがなという気もするが。名古屋高裁がどれくらい空気を読んだ判断をするかは注目である。
しかし、今回伝えたいのは、そういうことではない。
受刑者に与えられた現実である。
金沢刑務所に入り、当初は面会に訪れた父に、「頑張るよ。そのかわり、裁判のやり直しはしてもらわないといけない」と前向きに話していた。
しかし、1年過ぎた頃から精神的な不調で面会を拒むようになり、99年に岡崎医療刑務所に移った。父に届く、丸みを帯びた息子の字が乱れるようになった。5年3カ月経った2003年3月に出所後も、そのまま入院が必要とされた。
おそらく、拘禁反応であろう。人は、拘束下に長期間いると、精神を病むことがある。
世間ではあまり取り上げられないことであるが、珍しいことではない。
もし、彼が無辜であるとしよう。裁判所は、自らの判断の誤りで、彼の人生の数年間を奪っただけではない。人格まで奪ったことにもなる。これは刑事補償すれば良いというような問題ではない。そのとき、彼に有罪判決を書いた裁判官は、無言を貫くのであろうか。
裁判官だけではない。弁護士は、自らの力不足が、取り返しつかない結果を生んだことになる。私たちは、そういう気持ちで事件に対峙しているのだろうか。
他方、彼が真実罪を犯したとしよう、その場合、刑罰は矯正教育になっているのだろうか?もし、刑罰が教育刑を本旨とするのであれば、犯罪者の矯正は、国家に課せられた義務でもあるはずである。
検察官は、安易に施設内矯正と言うが、本件みたいに精神を蝕んで、それは矯正なのだろうか。
いずれにせよ法曹に与えられた使命は重い。
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コメント
裁判所の判断や判決には空気を読む必要があるのでしょうか。当時の裁判官が検察や裁判所の空気を読んで彼を有罪としたのであれば、法曹の組織自体に問題があるのでは?
投稿: eri | 2011/12/05 21:55
>eriさん
報道を見る限り、いろいろな証拠が開示されたようです。それを精査せずに、適当な判断をするようでは、空気読めてないと思います。
真実を見ようとせず、上司の方ばかり向いている裁判官がいることは事実です。
それに対するアンチテーゼが裁判員裁判だと思っています。
投稿: Toshimitsu Dan | 2011/12/05 22:24