涙が落ちないように
ダルビッシュ投手が、アメリカ大リーグのレンジャースに移籍が決まった。
間違いなく、日本のプロ野球の歴史となる人物だけに、頑張って欲しいと思っている。
ところで、そのダルビッシュ投手とタレントの紗栄子との離婚が決まったようである。
毎日どこかで起こっている離婚事件であるが、あまり知られていないことが多い。というわけで、ダルビッシュの離婚を素材に今回整理してみることにした。
離婚とは協議離婚と裁判上の離婚に分けられる。今回のダルビッシュはこれに該当する。
協議離婚はお互いが離婚するということで行われる離婚届を提出してというあれである。当事者の意思に従ってするので、離婚原因はあまり問題にならない。
もし、一方が離婚するのを拒否した場合。もし、ダルビッシュか紗栄子が離婚に反対していた場合は、裁判上の離婚の問題になる。この場合は離婚を法的に強制するものであるため離婚するには相応の理由が必要である。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。一 配偶者に不貞な行為があったとき。二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
かつて、自分で浮気しておいて離婚したいと私に言った女性がいるが、そういう場合は、その他重大な事情がない限り離婚は無理なのである。
今回の離婚で裁判になった場合、離婚が認められるかはまったく解らないところである。
で、離婚というと、親権とお金の問題が伴うことが多いが、今回は、親権は解説の対象外で、またの機会にする。
で、お金の問題となるが、一般に離婚事件において支払われるお金は、慰謝料、財産分与、養育費である。
慰謝料とは、離婚原因に帰責性ある者が支払う損害賠償である。
かつて、よく、どんな理由であっても女性は慰謝料をもらえると勘違いしている人がいるが、そうではない。どちらが悪いというのでなければ慰謝料はないし、女性が悪ければ女性が支払わなければならない。
慰謝料の相場は、裁判上の離婚であれば、200万円~500万円程度である。協議離婚であれば、慰謝料は当事者の合意で決まるが、相場を超えるような金額を合意した場合は、税務署から贈与とされることもあるので注意しなければならない。
今回、どちらかに慰謝料支払い義務があるかは解らない。
次に、財産分与とは、二人で築き上げた財産を分けるものである。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
財産とは、固有財産と共有財産に分けられる。
固有財産とは、自分だけで得た財産で、これは財産分与の対象ではない。
共有財産は、夫婦で築き上げた財産で、財産分与の対象となる。
財産分与では、負の財産である債務も分けられる。若い夫婦では、よく、住宅ローンをどうするかで揉めることが多い。
この共有財産の分け方は、「夫婦は五分と五分」というわけで、50%ずつが多い。
主婦であっても、旦那が稼いだのは内助の功あってのこそということで、50%のことが多いのだが、明らかに財産形成に対する貢献が少ない場合は2割程度になることもある。
ダルビッシュの場合にどれだけの財産分与が認められるかは私には解らない。年俸の50%といわれても釈然としないところではあろう。
なお、協議離婚の場合の財産分与は、財産分与だけ裁判所の手続きを用いるということも可能であるし、財産分与も協議で決めることも可能である。ただし、相場を超えたものであれば、税務署から贈与と言われる可能性もある。
そして、養育費の話になる。
離婚しても子供は子供であるので、養育費の支払義務を免れない。
養育費とは、未成熟子が社会自立をするまでに必要とされる費用のことである。協議によって決めることも、家庭裁判所の審判によることも可能である。審判の場合、両親の収入から、裁判所が、裁判所の用いる計算方法で計算して、それに近い金額で決める。
ただ、裁判所が審判で決める金額は、一般的には1ヵ月数万円程度になることが多い。ダルビッシュの場合、紗栄子の収入状況によるが、その方法で単純計算すれば1ヵ月あたり数百万円にということになる。
また、扶養料も通常必要な費用を超える扶養料を支払った場合は、贈与とされてしまうこととなる。
ダルビッシュの件では、そんな大金でどんな子供を育てるのか、よく分からないが、裁判所の計算方式といったものを、税務署が丸呑みするとは限らないので、正直なところどうなるかは不明である。
なお、養育費は、合意によって変更することも可能であるし、裁判所が認めた金額であっても、その後の事情の変更があったような場合は、家庭裁判所に金額の変更を申し立てることがきる。
以上、取扱事件については、自称広角打法NO1の私が、ダルビッシュの変化球を打ってみた。
参考にされたい。
| 固定リンク
「法律コラム」カテゴリの記事
- 花は咲く。きっと。(2020.05.27)
- CG児童ポルノ事件最高裁決定(2020.05.27)
- 民事尋問戦略(広告)(2019.10.04)
- eスポーツの法律問題Q&A(2019.09.01)
- ダウンロード違法化の対象範囲の拡大に反対する緊急声明(2019.03.13)
コメント