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2012/07/14

文化庁 違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A

違法ダウンロード刑罰化に対して、文化庁がQ&Aを公開している。

Q&A

もしかしたら、壇弁護士とやらが、狼少年みたいなこと言ってるのであわてて出した、なんて、文化庁で言っているのかもしれない。

文化庁は、この手の法解釈を良く出しているが、裁判所が真っ向否定というのもある。その程度の権威であるということは十分理解して、参考にされたい。

今回のポイントは、ダウンロード刑罰化の①有償著作物、②47条の8の適用である。
実は、既に、検討済みなのであるが、あらためて、文化庁の解釈と照らして、述べてみたい。

有償著作物について、文化庁は

有償著作物等とは、録音され、又は録画された著作物又は実演等であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているものを指します。
その具体例としては、CD として販売されていたり、有料でインターネット配信されているような音楽作品や、DVD として販売されていたり、有料でインターネット配信されているような映画作品が挙げられます。
ドラマ等のテレビ番組については、DVD として販売されていたり、オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品の場合は、有償著作物等に当たりますが、単にテレビで放送されただけで、有償で提供・提示されていない番組は、有償著作物等には当たりません。(もっとも、違法にインターネット配信されているテレビ番組をダウンロードすることは、刑罰の対象ではないものの、法律違反となります。)

という紹介をしている。
有償性については、
①どこかで対価が得られれば良いという考え(広告料モデルも含む)。
②放送の許諾に際して、対価が支払われていれば良いという考え(テレビ局がコンテンツの使用料を支払う場合も含む。
③視聴者から料金を得ていれば良いという考え(1ヶ月見放題も含む)。
④個々のコンテンツ毎に対価が支払われることを要するという考え。

が考えられる。文化庁の見解は、③説又は④説であるような気がする。まぁ、③説なのだろう。

すると、提供行為自体が有償であることを要するということになるが、条文上、そこまで限定しているかは謎である。また、これまでのカラオケ法理における営利性の要件の拡張ぶりや、URLアップを児童ポルノのアップと同視できるという刑事裁判所を見る限り、文化庁の見解が支持されるか・・・・ちと、難しいような気がする。

次は、47条の8の適用の可否である。文化庁は、当初、複製に該当しないという説明をマスコミにしていたと聞いているが、さすがにそれは苦しすぎると見たのであろう、47条の8適用説を採ったようである。

Q 「You Tube」などの動画投稿サイトの閲覧についても、その際にキャッシュが作成されるため、違法になるのですか。

A 違法ではなく、刑罰の対象とはなりません。動画投稿サイトにおいては、データをダウンロードしながら再生するという仕組みのものがあり、この場合、動画の閲覧に際して、複製(録音又は録画)が伴うことになります。しかしながら、このような複製(キャッシュ)に関しては、第47 条の8(電子計算機における著作物利用に伴う複製)の規定が適用されることにより著作権侵害には該当せず、「著作権又は著作隣接権を侵害した」という要件を満たしません。

と説明している。
しかし、プログレッシブダウンロードは、技術的には、視聴の際に複製が伴うというよりは、ダウンロードしたファイルを視聴して、一定期間経過したらダウンロードしたファイルを削除しているというのが正しいと思われる。

刑事法廷で、技術をあれこれ立証された場合、耐えうる主張なのだろうか。。。ちと厳しい。

ちなみに、文化庁のこの解釈は、コピライト2010年1月号に掲載されている。

第47条の8の規定は、「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合」に限って適用されているが、「視聴」は著作権の支分権に位置づけられておらず、著作権侵害により送信可能かされた動画等であっても視聴では著作権侵害とはならないため、同条の適用が受けられる。

視聴の「ついで」にキャッシュを持つ場合は、その可能性はありそうである。しかし、「ダウンロード」して視聴する場合に、そのようなことが言えるか、私には疑問である。

また、当時の著作権課著作権調査官の書いた、著作権法コメンタールでは、文化庁の公式見解でも、立法担当者の見解でもないとしているが、

新たに創設された30条1項3号により、違法配信される著作物を、その事実を知りながらダウンロードする利用行為は、著作権侵害となるため、同号に該当する場合も、本条の適用を受けない。

としており、上記文化庁の解釈と矛盾しそうである。

結局のところ、有罪の可能性を排斥できるような解釈とは思えない。

そもそも、このような重要事項について、解釈で有罪となる余地を残していること自体、愚かと思うところである。

そして、文化庁は、刑罰化の拡大適用を恐れてと思われるが、著作権者の配慮を要するとしている。

さらに、違法ダウンロードの刑事罰化に係る規定の運用に当たっては、政府及び関係者は、インターネットの利用行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならないこととされています。(改正法の附則第9 条や参議院の附帯決議)
これを受け、警察は捜査権の濫用につながらないよう配慮するとともに、関係者である権利者団体は、仮に告訴を行うのであれば、事前に然るべき警告を行うなどの配慮が求められると考えられます。

配慮が、法的にいかなる意味を有するのか、もはや不明である。

というより、変な条文を正すことが本筋ではないか?

結局のところ、文化庁の意図はわからないではないが、その試みは成功しているとは言い難い。

そして、もう一つわすれてはならないのは、今回の刑罰化は、平成21年のダウンロード違法化の時点ですでに予想されていたことである。プログレッシブダウンロードも問題になっていた。

津田氏に始まり、あれほどの反対のパブリックコメントがあったにもかかわらず強行した結果がこれである。刑罰化はしないといっていたにもかかわらずである。

文化庁が、この分野の監督官庁に足るのかというところから論じる時代なのかもしれない。

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コメント

>③視聴者から料金を得ていれば良いという考え(1ヶ月見放題も含む)。

>文化庁の見解は、③説又は④説であるような気がする。まぁ、③説なのだろう。

NHKは受信料を徴収しているので、3の解釈はないのではないかと思いました。

記事を読んだ瞬間の安易な発想で恐縮すがとりあえずコメントしてみます。

投稿: itochan | 2012/07/15 02:37

>itochanさん
NHKは、受益者負担ではありますが、受信料は、放送の対価ではないらしいです。

こっちはこっちで闇が深いと言うか、なんちゅーか。

投稿: Toshimitsu Dan | 2012/07/15 14:12

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