13歳少年がウイルス作成 京都府警、容疑で補導
という記事が来た。
早速京都府警のようである。
■「技術自慢」掲示板運営も
府警によると、少年は昨年8月、パソコン画面に「強制終了してください」との表示を出し続けるウイルスを自宅のパソコンで作った疑いがある。
府警の説明では、少年は昨年8月からハッキング技術を自慢し合うネット掲示板を運営していた。「掲示板を開いて、いろんな人にハッキング技術を教えてもらおうと思った」と話しているという。
だそうである。
この記事を前提にすると、彼は、別に、無断で他人のコンピュータにおいて実行させる目的で作成したのではないようである。
すると、非行事実が無いのではないか?
第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。3 前項の罪の未遂は、罰する。
Q4 コンピュータ・ウィルスの作成・提供罪が新設されると,ウィルス対策ソフトの開発等の正当な目的でウィルスを作成した場合や,ウィルスを発見した人がそれを研究機関に提供した場合,あるいは,プログラマーがバグを生じさせた場合まで処罰されることになりませんか。
A コンピュータ・ウィルスの作成・提供罪は,① 正当な理由がないのに,② 無断で他人のコンピュータにおいて実行させる目的で,コンピュータ・ウィルスを作成,提供した場合に成立するものです。ウィルス対策ソフトの開発などの正当な目的でウィルスを作成す る場合には,そのウィルスを,自己のコンピュータにおいてのみ実行する目的であるか,あるいは,他人のコンピュータでその同意を得て実行する目的であるの が通常であると考えられますが,それらの場合には,①と②の要件をいずれも満たしませんので,この罪は成立しません。また,ウィルスを発見した人が,ウィルスの研究機関やウィルス 対策ソフトの製作会社に対し,ウィルスの研究やウィルス対策ソフトの更新に役立ててもらう目的で,そのウィルスを提供した場合についても,①と②の要件を いずれも満たしませんので,やはりこの罪は成立しません。さらに,この罪は故意犯ですので,プログラミングの過程で誤ってバグを発生させても,犯罪は成立しません。
なのである。
この事件は、正当な目的、実行の用に供する目的にかかわる問題である。付添人になった方は、この辺をちゃんと弁護して欲しいとおもう。
そもそも、記事の話を前提にする限り、技術自慢の将来ある少年を、むりやりに非行少年にしようとするセンスは理解しがたい。
ちなみに、この件では、取得した者を取得罪で立件されているようである。
また同取得の疑いで東京都東大和市清水町、建設作業員柴崎巧盟容疑者(23)を逮捕した。
ウイルスの罪には、取得罪が規定されている。
この場合も、正当な理由、目的が問題になるが、実際のところどうなのかは分からない。
ただ、弁護人になった人はしっかり弁護してもらいたいと願っている。
「京都府警がある限り、条文上問題だが、運用面でカバーということはあり得ない」ということを、この事件で再確認できた気がする。
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コメント
ウイルス罪だと高木センセと落合センセのバトルが記憶に新しいですけど、落合先生の危惧が見事に現実化しそうですね。
投稿: 7C3 | 2012/07/05 22:23
>7c3さん
あれは、刑事専門の弁護士に、素人が粘着したというべきでしょう。
投稿: Toshimitsu Dan | 2012/07/10 12:23