車椅子を理由に入店拒否
著名人の乙武さんが、イタリア料理店で入店拒否されたことに関して、なんか、起こっているようである。
どうも、乙武さんが、Twitterで店名をあげたことで、大騒ぎになったようで、その後、イタリア店も乙武さんも記事を掲載して、大人モードな弁解と批判をしており、これを和解と理解するのはチト苦しい。
ただ、この問題は非常に難しい。
ハンディキャップをもった人に対して、どこまでの措置をすることが必要か、それは義務なのか、権利なのか。
もちろん、現在の日本のサービス業で、条件の平等まっしぐら、配慮皆無なサービスが許されるわけではない。他方、優遇されて当然というのもあってはならない。また、サービス業である以上、他のお客様へのサービス提供をどこまで犠牲に出来るのかという問題もある。
もし、仮想の車いすサービス条例について検討しろなんて問題を作れば、司法試験の問題になるレベルの難しさである。
現在も、両者に対する批判が、それぞれ活発であるが、それは、この問題の難しさや、前提としている事実が異なることが大きな原因なのであろう。
いずれにせよ、変な義侠心から突撃乙な愚か者が出ないようにと願っている。
追記
では、少し、弁護士らしいことを書こう。
最初に、第三者が変な義侠心から違法なことをした場合は、民事上不法行為になるだけでなく、場合によっては名誉毀損や威力業務妨害等の罪になることがあるので注意されたい。
で、この問題、アファーマティブアクションの論点の民事効という問題で考えられる。
アファーマティブアクション( affirmative action)とは、弱者集団の不利な現状を是正するための改善措置のことである。
そこで問題である。
不利益な状態を有する人に対して、アファーマティブアクションを施さない場合、平等権侵害なのだろうか。
憲法が完全に他の人と平等な状態になることを求めているのであれば、そのような状態にしないという立法不作為が違憲となり得る。
他方、憲法が条件の平等を志向しているというのであれば、平等に取り扱うだけで良いので、アファーマティブアクションの義務を認めるのは困難であろう。
次に、このような一定の措置は、他の者よりも優遇措置を認めることになる。これは、平等権侵害と言えるのか?
仮に条件の平等を徹底するのであれば、アファーマティブアクションは平等な取扱に反するものでもあるため、平等権の問題とデリケートな関係に立つ。
なお、今回のような民間の問題については、憲法の人権規定は直接の適用されずに、民法709条(不法行為)や90条(公序良俗)等の民法の条項の解釈を通じて間接的に適用されるとされている。
以上を踏まえて、両方の立場から、誰が、どこまでしなければいけないのか、また、社会的な批判を甘受するべきか否かを考えると、とても難しい。
各自で考えられたい。
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コメント
まあ、乙武さんには失望しました。
ベビーカー折りたたまずに電車に
乗せろと声高に主張するママと
同じだなと。
乙武さんも自分のみの利益の追求に
なっていることに気付くべきではないでしょうか。
裕福でない人が高級レストランに
入れろと騒いでも相手にしてくれない。
つまりハンデがある人は我慢も必要だと
いうことかな、と。
投稿: 志保パパ | 2013/05/30 11:31