立法の不備の末に
先日、NHKの番組に刑事事件の取り調べの録画DVDを提供したことが刑事訴訟法で禁じられた証拠の目的外使用にあたるとして、大阪地検に懲戒請求された事案がある。
刑事訴訟法にはそういう規定がある。
第二百八十一条の四 被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機 会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供して はならない。
一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理二 当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続ロ 第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続ハ 第三百五十条の請求があつた場合の手続ニ 上訴権回復の請求の手続ホ 再審の請求の手続ヘ 非常上告の手続ト 第五百条第一項の申立ての手続チ 第五百二条の申立ての手続リ 刑事補償法の規定による補償の請求の手続
これに対して、犯罪被害者に記録の閲覧謄写を認める犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律はそんな記述になっていない。
要するに、刑事訴訟法の開示証拠は、 警察や検察の違法を明らかにするためとか、検察側証人の偽証や虚偽告訴を明らかにするためとか、国家賠償請求訴訟とか損害賠償請求訴訟のためとかは書かれていない。3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
本来、刑事訴訟法上も、犯罪被害者保護法と同様な規定にすべきであったのであるが、そうなっていない。この限定列挙は、どうも、悪用だけではなく、取調の違法性を世論に訴えるなどされると困る、そういうのを封じるために刑事訴訟法で限定したのだというところみたいである。
というわけで、条文に書いてないでしょ?ということで懲戒請求というらしい。
で、この事案、江川紹子さんが記事にしているが、密室化の取調の違法性を公にするものであったらしい。
記事
検察としては、取調の違法性を公にされては困るので圧力を掛けようというところなのだろうか?
法解釈としても、知る権利無視というのはちょっと無理で、検察のダメダメぶりは目に余る。中世といわれてもシャラーップで、取調の可視化の骨抜き化に必死のようである。
ただ、そういう規定であるのに、立法時に大反対していなかったというのは弁護士会のダメダメである。
これで、懲戒なんてことはあってはらなない。現場で理不尽な刑事訴訟法と闘っている弁護士が割を食うのは納得できない。
また問題は、裁判所がどう動くかである。KYでないことを祈る。
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