裁判官の誘導尋問
痴漢起訴の大学教員に逆転無罪という報道を見た。
山崎裁判長は女性が痴漢被害を受けた事実を認定した上で、犯人が後方にいた被告であることを確認したとする女性の証言の信用性を検討。この点について尋ね た1審の裁判官の質問を「典型的な誘導尋問の繰り返し」と指摘し、「誘導尋問で得た証言を犯人特定理由の中核に据えた1審判決には賛同できない」と結論付 けた。
刑事訴訟規則上補充尋問については規定がある。
(陪席裁判官の尋問・法第三百四条)
第 二百条 陪席の裁判官は、証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人を尋問するには、あらかじめ、その旨を裁判長に告げなければならない。
第 二百一条 裁判長は、必要と認めるときは、何時でも訴訟関係人の証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対する尋問を中止させ、自らその事項について尋問することができる。 2 前項の規定は、訴訟関係人が法第二百九十五条の制限の下において証人その他前項に規定する者を充分に尋問することができる権利を否定するものと解釈してはならない。
主尋問では誘導尋問してはいけないとか、訴訟当事者は意見を求めるような尋問をしてはいけないなどの規定があるのであるが、裁判所にはそのような規定は無く、相当かを判断するのも自分である。というわけで、正直やり放題なのである。
Winny事件の一審では、質問に窮するおまわりさんに対して、裁判長が、「ようするにこういうことだよね」的な誘導尋問を入れることが多くて困ったことがあったが、この裁判官もえげつない誘導尋問をしたことが窺われる。
弁護人の立場から言えば、裁判官の誘導尋問は、本当に頭にくる。
「まともな裁判官は、誘導尋問で心証をとらないよ!」
なんて話は修習中によく聞いた話であるが、実際はそうでもないようである。
裁判官室で、弁護人の尋問を笑う裁判官は多いが、たまには、裁判官が笑われる。
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