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2013/10/10

炊飯器とカラオケ

自炊といっても家でご飯を炊くことでは無い。紙の本を裁断、スキャンしてパソコンなどに取り込み、電子書籍化することをいうらしい。

それを代行する事業者に対して、代行業の取りやめと損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であり、2社に合計140万円の賠償と業務の取りやめを命 じたようである。

判決文も公開されている。

この事件、前提知識が必要である。

本を買った人が、私的目的でスキャニングしても著作権侵害にはならない。

第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用す ること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

問題は、これを業者に依頼した場合、業者は私的複製の恩恵を受けるかである。

第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十五  複製 印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい、次に掲げるものについては、それぞれ次に掲げる行為を含むものとする。

 脚本その他これに類する演劇用の著作物 当該著作物の上演、放送又は有線放送を録音し、又は録画すること。
 建築の著作物 建築に関する図面に従つて建築物を完成すること。
 

依頼者の発注どおりにスキャニングしとるのだから、依頼者の複製じゃないの?
とも思うのであるが、そうではないとしたのが味噌なのである。

法人被告らは,利用者からの発注を受けて書籍を電子ファイル化し,これを利用者に納品するのであるから,利用者が因果の流れを支配しているようにもみえる。

しかし,本件において,書籍を電子ファイル化するに当たっては,書籍を裁断し,裁断した頁をスキャナーで読み取り,電子ファイル化したデータを点検する等の作業が必要となるのであって,一般の書籍購読者が自ら,これらの設備を準備し,具体的な作業をすることは,設備の費用負担や労力・技術の面において困難を伴うものと考えられる。

このような電子ファイル化における作業の具体的内容をみるならば,抽象的には利用者が因果の流れを支配しているようにみえるとしても,有形的再製の中核をなす電子ファイル化の作業は法人被告らの管理下にあるとみられるのであって,複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当である。

抽象的には支配しても駄目だそうである。

この理屈を見ると、じゃあ、自分でスキャニングしてもらったらどうなるかと言うと、今度は悪名高いカラオケ法理で、複製における中核をなす行為を自分でしていても、抽象的には因果の流れを支配しているので、業者の複製と言われそうである。

テレビ局が放送局を使って番組を公衆送信して、本人がロケーションフリーTVを買って視聴していても、アンテナにつないだら、つないだ者が公衆送信したと言われる世界なのである。

カラオケ付炊飯器はなかなか強力な武器である。

結局は、電子書籍を買うか、自分で機器を買って自分でスキャニングしないと、いろいろ迷惑がかかるということになりそうである。

というわけで、裁判所はまたしてもancien régimeの擁護者となったわけである。

なんだかなぁ。

ついでに、原告代理人の中にフェアユース推進をおっしゃってる方がいらっしゃるようである。

なんだかなぁ。

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