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2015/04/10

2015/04/10

フリーキックと監督責任。

バヒド・ハリルホジッチ監督体制でもフリーキックはよく外れているが、監督の責任問題になってはいない。

しかし、フリーキックが外れて人がお亡くなりになれば、監督責任を巡って激しい訴訟になることもある。

最高裁は、近時、学校の校庭で、フリーキックをしていたところゴールを外れて校庭から道路に出たボールがバイクに当たり、バイクが転倒して運転していた男性が死に至った事案で、児童両親の監督責任を理由に損害賠償を求めた訴訟(市が補助参加している)で、監督責任を否定する判決をした。

判決

この判決は、児童らのために解放されていた校庭で通常の使用であり日常的な行為であることやネットフェンスが貼られていてボールが出るのが常態でないことから、フリーキックをすることが通常人身に危険が及ぶ行為ではないとした。

そのうえで、親の監督責任について

通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によっ てたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能で あるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかっ たとすべきではない。

として、責任を否定したものである。

この事件は、ときに生じる理不尽な死に対して、誰がコストを負担するかという問題ともいえる。究極の判断ではあるが、私は、最高裁に一票である。

しかし、この事件、大阪高裁判決(判例時報2158号51頁)及び大阪地裁判決(判例時報2123号61頁)では、両親の責任が認められていたのである。

高裁判決は

本件では、校庭と公道(本件道路)の近接状況、ゴールの位置、フェンスや門扉の高さ、本件 道路の通行の状況などを総合すると、夏夫は、校庭からボールが飛び出す危険のある場所で、逸れれば校庭外に飛び出す方向へ、逸れるおそれがある態様でボー ルを蹴ってはならない注意義務を負っていたというべきである。注意義務の有無・内容は、具体的な状況の下で、予想される危険性との関係において個別的具体 的に決定されるものであるから、ボールを蹴る者が競技上の定位置からボールに向かってボールを蹴ったからといって、違法性が阻却されたり、過失が否定され るものではない。
 また、本件校庭と本件道路の位置関係からすると、サッカーボールが飛び出すことや、太郎の自動二輪車の進行の妨げとなり転倒事故が生じ得ることも、予見可能であったというべきである。
 以上のとおり、○○の行為について違法性、結果発生との因果関係がないとの主張は採用することができない。
 控訴人らは、控訴人らが○○に対し、通常のしつけをしてきたこと等から監督義務を尽くしていたこと、監督者として本件事故は予想できないこと等を主張する。
  しかし、子供が遊ぶ場合でも、周囲に危険を及ぼさないよう注意して遊ぶよう指導する義務があったものであり、校庭で遊ぶ以上どのような遊び方をしてもよい というものではないから、この点を理解させていなかった点で、控訴人らが監督義務を尽くさなかったものと評価されるのはやむを得ないところである。

校庭からボールが飛び出す可能性があるところでは、ゴールが設置されていてもサッカーするなとしつけなければ監督責任が生じことになりそうである。

無茶なと思うが、それより酷いのが1審判決である。

(1) 本件前提事実、証拠(略)によれば、以下の事実が認められる。
  ア 被告次郎は、平成4年3月生まれの男性であり、本件事故当時11歳11ヶ月であった。太郎は、大正7年3月生まれの男性であり、本件事故当時85歳11ヶ月であった。
  イ 被告次郎は、平成16年2月25日午後5時ころ、Z市立(本件事故当時はB町立)B小学校の校庭(本件校庭)において、友人達とともにサッカーボールを用いて、ゴールに向かってフリーキックの練習をしていた。
  ウ 太郎は、原告車両に乗車して、本件校庭の南側の溝を隔てた場所にある東西方向に通じる道路(以下「本件道路」という。)上を東から西に向けて走行していた。
  エ 被告次郎らがフリーキックの練習をしていたゴールは、本件道路に比較的近い場所に、道路と並行して位置しており、同被告らは、本件道路側に向かって、フリーキックの練習を行っていた。
  オ 被告次郎が、平成16年2月25日午後5時16分ころに蹴ったボールが、本件校庭内から門扉を超えて本件道路上に飛び出した。そのため、折から本件道路の門扉付近を走行していた太郎が、ボールを避けようとしてハンドル操作を誤るなどして、本件道路上に転倒した。
 (2) 以上認定の事実によれば、本件事故当時、被告次郎がフリーキックの 練習を行っていた場所と位置は、ボールの蹴り方次第では、ボールが本件校庭内からこれに接する本件道路上まで飛び出し、同道路を通行する二輪車等の車両に 直接当て、又はこれを回避するために車両に急制動等の急な運転動作を余儀なくさせることによって、これを転倒させる等の事故を発生させる危険性があり、こ のような危険性を予見することは、十分に可能であったといえる。
 したがって、このような場所では、そもそもボールを本件道路に向けて蹴るなどの 行為を行うべきではなかったにもかかわらず、被告次郎は、漫然と、ボールを本件道路に向けて蹴ったため、当該ボールを本件校庭内から本件道路上に飛び出さ せたのであるから、このことにつき、過失があるというべきである。
 (3) しかしながら、被告次郎は、本件事故当時11歳の小学生であったから、未だ、自己の行為の結果、どのような法的責任が発生するかを認識する能力(責任能力)がなかったといえる。
 したがって、本件事故により太郎に生じた損害については、被告次郎は民法712条により賠償責任を負わず、親権者として同被告を監督すべき義務を負っていた被告両親が、民法714条1項により賠償責任を負うというべきである。

比較的省略せずに引用してみた。
地裁判決は、監督責任が争われている(判決にも争点として明記されている)にも関わらず、全く監督責任を検討せずに認定している。これが地裁判決の田中敦裁判長のクオリティである。

裁判所のシュートは大外ししても誰も監督責任を問われないし、レッドカードも出せない。
しかし、平成16年に事故が発生し、多くの人が既に10年を超える期間を費やしているのである。

すこしやるせない気分ではある。

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