GPS捜査高裁判決
お巡りさんがGPS発信器を勝手につけて捜査に使った事件で、大阪高裁が「重大な違法とは言えない」としたようである。
横田信之裁判長は、今回の大阪府警のGPS捜査について「重大な違法とは言えない」として、1審とは逆の判断を示した。ただ、懲役5年6月とした1審判決は支持し、被告側の控訴を棄却した。
なぜ、毎日新聞を選んだか?
それは、判決が「重大な違法とは言えない」と違法であると言っているのに、
「令状なし」適法
と不勉強な見出しを書いたから晒しているのである。
この事件は、警察側は裁判所の令状をとらずに、関係者の乗用車、バイク計19台にGPS端末を取り付けて、バッテリー交換のため私有地に立ち入り、端末の取り付け、取り外し作業もしていたという事件と報道されており、そのとおりなら、お巡りさんやりたい放題である。
裁判所は、これに対して「捜査の経過などからやむを得ないところがあったといえる」とし、「警察官らに令状主義に反する意図があったとまでは認めがたい」としているようなのである。
ビラのポスティング目的で裁判所宿舎に入ったら建造物侵入罪な裁判所が、GPS取り付け目的で私有地に無断立入りしてやむを得ないというのはダブルスタンダード著しい。
ところで、違法収集証拠排除については、お巡りさんが職務質問中に人のポケットに手を突っ込んだ事案がリーディングケースである。
最高裁昭和53年9月7日は
証拠物の押収等の手続に憲法三五条及びこれを受けた刑訴法二一八条一項等の所期する令状主義の精神を没却するような重大な違法が あり、これを証拠として許 容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるべきである。
としたのであるが、この令状主義の精神とは、令状主義が設けられた趣旨であり、誰かの意図を意味しない。
将来の捜査抑制の見地とは、捜査側全体の問題であり、個々のお巡りさんの意図の問題ではない。
報道が正しければ、高裁は、令状主義の精神を没却する「意図」かという勝手な要件を付け加えたことになる。
わざわざ令状主義の精神を没却しようとして捜査することは、京都府警の一部のお方でも無い限りあり得ないことである。
不遜にも令状主義を省みなかったものを意図が無かったとする感覚は理解不能である。
報道のとおりだとすると、違法捜査に優しい刑事裁判所との批判は免れない。
だから、中世って言われるのである。
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