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2017/05/19

2017/05/19

式辞に歌詞引用、著作権料?

昨年ノーベル文学賞を受賞した米歌手ボブ・ディランさんの歌の一節を、京都大の山極寿一総長が取りあげた4月の入学式の式辞について、日本音楽著作権協会(JASRAC)がウェブ上に掲載した分の使用料を京大に請求していることが18日、関係者への取材で分かった。

そうである。
記事

 京都新聞の取材に対しJASRACは「一般論として、ウェブ上にある音楽著作物には利用手続きが必要となる」と説明。商用目的でなくても、歌詞を印刷できる仕様でウェブ上に掲載すると、1回の閲覧につき数十円が必要になる場合があるという。

だれも一般論なんか聞いてない。知りたいのは、式辞で歌詞の一部を引用したら金をはらわにゃならんかであり、JASRACが請求できると思っているのかである。

まず、式辞で引用すると金を払わないといけないかであるが、口述権の問題になりそうである。

第二十四条  著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。

この場合、一般には無償で行った口述に該当しよう。

第三十八条  公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をい う。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述につ いて実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

ただ、JASRACは最近、音楽教室で生徒が演奏した楽曲について、生徒が演奏して、生徒が聴衆で、公衆というトンデモ解釈をぶったてたので、ここでも、営利目的だとか言いだすかも知れない。

ただ、今回のように式辞をネットで公開する場合は、非営利であることを理由に、権利侵害が否定されることは無い。

著作権法は、教科書とか授業を理由とする権利制限規定がある程度あるのであるが、式辞は対象外である。そして、著作権法は出来が悪いので一般的な権利制限規定がない。

とすると、あるもので考えないといけないが、いちばん問題になるのは引用であろう。

第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、 調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表 示がある場合は、この限りでない。

第四十八条  次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十七条第一項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合

この引用というのが、くせ者で、「公正な慣行」「正当な範囲内」というのが、まったく不明確なのである。

一般的には、
①引用する必然性があること。
②自分の著作物が主であり、引用が従であること。
③引用部分が区別されていること。
(その他、48条を「公正のな慣行」「正当な範囲内」の要件に組み込む人は、出所を明示すること)

ということが言われているが、絶対にこの要件を満たせばOKというわけではないし、これらの要件も結構抽象的だったりする。しかも、近時、トンデモ知財解釈を繰り返す刑事裁判所がどう考えるかは不明である。
で、これらの要件を満たさない場合は、損害賠償だけでなく、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金だったりする。

式辞はまだ公開されてるようである。
私は、引用の適用があると思うのであるが、このリンク設定が著作権侵害だとかで、どこぞのお巡りさんからタイーホはこまるので、リンク設定はやめておくことにした。

せっかく京都大学なのであるから、京大OBの弁護士が弁護団組んで、債務不存在訴訟提起してはどうか?

私?大阪大学出身です。

(ただし費用頂ければ別)

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