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2018/03/23

FOREST OF PUBLICITY デーモン閣下

デーモン閣下がNHKに肖像を無断使用されたとお怒りの様子である。

記事

デーモン閣下が、NHKのアニメ番組で自身の肖像を無断使用されたとして「組織としての誠実な対応を求む」とした。

これを巡って二人の弁護士が激論を交わしたようである。

記事

元裁判官で国際弁護士の清原博氏は「無断使用しても肖像権の侵害にならない可能性が高い」との見解。芸能人の肖像権侵害に当たる主なケースとして「芸能人の氏名や肖像を勝手に利用して金もうけをしているケース(パブリシティー権の侵害)」「本人のイメージが著しく害されたり感情が強く傷つけられるケース」の2つを挙げ、今回の件はこれらに該当しない可能性が高いとの見方を示した。

 佐藤弁護士は「清原先生のご意見はもっともなんですけど、聞いているとやっぱり元裁判官ふうの意見だなと思う。証拠からしか、相手の気持ち、デーモンさんの気持ちを読み取れていない。本人の気持ちに寄り添う弁護士であればこれは違法ですよ」と清原弁護士に反論。

二人の発言は、テレビ向けに省略している部分が多いと推察されるが、権利関係を整理するとややこしい。

(注 法律の話がお嫌いな人は、このあとをすっとばして最後だけ読んでも、この記事の大意は理解可能です。)

問題になるのは、肖像権、パブリシティ、著作権その他である。

肖像権とは、みだりに自己の容ぼう等を撮影されない権利である。
和歌山カレー事件に関する報道に関するもの(最高裁平成17年11月10日)が民事で有名である。

この事件は、撮影だけでなく、公表が適法かについても受忍限度を問題にしている。

人は、自己の容ぼう等を描写したイラスト画についても、これをみだりに公表されない人格的利益を有すると解するのが相当である。しかしながら、人の容ぼう等を撮影した写真は、カメラのレンズがとらえた被撮影者の容ぼう等を化学的方法等により再現したものであり、それが公表された場合は、被撮影者の容ぼう等をありのままに示したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。これに対し、人の容ぼう等を描写したイラスト画は、その描写に作者の主観や技術が反映するものであり、それが公表された場合も、作者の主観や技術を反映したものであることを前提とした受け取り方をされるものである。したがって、人の容ぼう等を描写したイラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、写真とは異なるイラスト画の上記特質が参酌されなければならない。

問題は受忍限度か否かである。
ちなみにカレー事件の報道では、

被上告人が手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態が描かれたものであり、そのような表現内容のイラスト画を公表する行為は、被上告人を侮辱し、被上告人の名誉感情を侵害するものというべきであり、同イラスト画を、本件第2記事に組み込み、本件写真週刊誌に掲載して公表した行為は、社会生活上受忍すべき限度を超えて、被上告人の人格的利益を侵害するものであり、不法行為法上違法と評価すべきである。

と判断されている。

今回、問題になるのは、デーモン閣下は厚塗りのメーキャップなので、実際にはどこの誰か区別がつきにくいという点である。この点も受忍限度の判断において考慮されることになろう。ただ、閣下はあれが素顔とおっしゃってるので、閣下の設定を前提にすると悪魔であるデーモン閣下の容貌が人の容貌になるかが問題になってさらにややこしい。

デーモン閣下の場合は、単なる肖像権ではなく、パブリシティの主張も考えられる。
英語では両方パブリシティなのであるが、なんでか、日本では別個に扱われている。

パブリシティでは、ピンクレディの無断利用を巡る最高裁(最高裁平成24年2月2日)が超有名である。

肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。他方、肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道、論説、創作物等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。そうすると、肖像等を無断で使用する行為は、〈1〉肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、〈2〉商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、〈3〉肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となると解するのが相当である。

ここでも、悪魔であるデーモン閣下が、人格権に由来する権利を主張することの可否が問題になる。仮に出来るとして、顧客誘引力があると認められる可能性は高そうである。
すると、顧客吸引力の利用を目的とする利用に該当するかの問題となる。

そして、著作権である。
仮にデーモン閣下のあの顔が素顔ではなく、メーキャップであるとすれば、あのメーキャップに創作性が認められれば著作物として扱われ、これを他人が無断で使用する行為は違法となる。
また、あのメーキャップは結構著名なので、これが商品等表示に該当すれば、不正競争防止法2条1項1号で保護され、これを他人が商品に表示することは違法となる。

この前提知識を踏まえて、両弁護士の見解を検討すればテレビ向けの発言の裏側の意図などが解って面白いのではないか?

というわけで、法律構成がややこしいので、デーモン閣下には、法廷闘争ではなく

「おまえも蝋人形にしてやろうか!」

で、気に入らない奴を全員ろう人形にして、簡潔に解決してほしいところである。

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