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2018/08/10

ブロッキング問題についての意見書

最近、ひっそりと問題になっているブロッキングであるが、今回、プロ責を多く手がける弁護士の連名で意見書を公開することにした。
意見書
Ikensyo_01
現在の海賊版サイト対策会議は、現場を無視したブロッキング立法検討会になっているが、何が重要なのかよく考えてもらいたいという一念である。
現在、この意見書に賛同する方を募集中である。賛同されるかた、私にご一報いただければ幸いである。
賛同者一覧
弁護士 結城 圭一
弁護士 田畑 淳
弁護士 奥村 徹
弁護士 世戸 孝司
弁護士 安保 和幸
弁護士 二宮 淳悟
弁護士 鐘ヶ江啓司
弁護士 安富 潔
弁護士 川添 圭
弁護士 岸本 行正

ブロッキング問題に関する意見書

平成30年8月5日

弁護士 壇   俊 光
弁護士 板 倉 陽一郎
弁護士 唐 澤 貴 洋
弁護士 神 田 知 宏
弁護士 清 水 陽 平
弁護士 中 澤 祐 一
弁護士 山 口 貴 士
弁護士 吉 井 和 明

 私達は、日頃、インターネット上の権利侵害に対する被害救済に取り組んでいる弁護士です。

 インターネット上の漫画海賊版サイトの問題について,インターネット・サービス・プロ
バイダ(ISP)に対して著作権侵害を理由とする「サイトブロッキング」によるアクセス遮断
措置が検討がされていることについて、日々現場に関わっている弁護士の立場から海賊版サイト対策に対して以下のとおり意見するものです。

 私達は、インターネット上での著作権侵害を放置することが許されるとは思っていません。ただ、現時点では、海賊版サイトが、本当に日本の著作権法を侵害しているといえるのか不明な点が多いこと等の実体法上の論点が整理される必要があると考えています。

 その点がクリアになっていることを前提に、違法な海賊版サイト対策を考えると、違法行為を行っている者に対する法的アクション、つまり、海賊版サイト運営者を特定して、海賊版サイトに対する差止め・損害賠償等がなされることが本来的な方法であります。
 現行法でも、Whois等から容易にサイト運営者を特定出来る場合もあり、また、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求等を用いて、サイト運営者を特定することも可能ですので、まずはこれらの措置による方法をコンテンツ事業者が実施すべきだと思います。

 また、平成30年4月13日に政府が名指しした3サイトは、「大規模海賊版サイト」と称するべきものであり、いわゆる「防弾ホスティング」等からでも配信可能な「小規模海賊版サイト」やオニオンルータ等を利用した「ダークウェブ」とはビジネス基盤が大きく異なるものです。
 現在、「大規模海賊版サイト」は、クラウドフレアを代表とするCDN事業者を用いて、日本のデータセンターから配信しなければユーザーのリクエストに応えることが困難なため、CDN事業者の関与が必要となります。そのため、違法な配信に関与しているCDN事業者からの配信を止めることが、現実的かつ実効的なレベルでの海賊版サイト対策であり、さらに、CDN事業者に対する発信者情報開示請求をすれば、違法な配信を行っている海賊版サイト運営者を特定することもできます。
 そして、CDN事業者に対する送信防止措置については、CDN事業者に対する送信防止措置を求める裁判・仮処分が可能です。なお、現在の裁判実務では、海外CDN事業者相手の訴訟であっても、日本に管轄裁判所が認められる可能性が高いと考えられています。  また、CDN事業者に対する発信者情報開示手続は、現在の裁判実務では、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求が可能で、これも、現在の裁判実務では、日本に裁判管轄が認められる可能性が高いと考えられています。さらに、米国法人に対しては、米国の裁判所を用いた匿名訴訟やDMCAに基づく方法という、より強力な方法もあり、実際に、これらの方法で、大規模海賊版サイトの一部については運営者が特定されています。

 そもそも、現在、出版事業者が大きな被害を訴えているのは、大規模海賊版サイトであり、CDN事業者に対する送信防止措置請求や発信者情報開示請求の実効性があるのですから、コンテンツ事業者が送信防止措置や発信者情報開示について十分なスキルを持つ弁護士に依頼をした上で、裁判手続きを行い、実際的な問題点を顕在化させた上で、海賊版サイト対策の在り方の検討していただきたいと考えています。

 いうまでもなく、ブロッキングは通信の秘密に対する重大な制約を伴うものであり、また、海賊版サイトを閲覧する行為は著作権侵害ではなく、違法行為を行っていないユーザの知る権利を制限するものであること、さらに、海賊版とは関わりないユーザの通信の秘密を侵す点で、極めて副作用の大きな方法であります。よって、ブロッキングは、少なくとも他により制限的でない選びうる手段がない場合でなければ、法制度としても、その合理性は認められないと考えています。
 とすると、海賊版サイト対策は、CDNに対する法的アクションを含め、違法行為を行っている者又はこれを助長している者に対する対策が、最優先に検討されるべきであり、コンテンツ事業者が、「漫画村」単体で、短期間に3000億円を超える損害が生じたというのであれば(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/honpen.pdf)、より一層、ブロッキングの前に、事業者が相応の費用を負担してでも対策をする責務があると考えています。 

 もちろん、私達も、プロバイダ責任制限法による発信者情報開示で、あらゆる海賊版サイト運営者を特定できるとは思っていません。また、現行プロバイダ責任制限法は、開示が認められる範囲が非常に限定されていること等の法律自体の問題点が多いため、日本においても米国並みか、それ以上の発信者情報開示請求の手段が認められるよう法改正されることを希望します。
 また、日本に存在するデータセンターに対する法的措置についても、速やかな立法措置が可能となることを期待しています。
 さらに、現行法上、海賊版サイトが収入源とする広告料について、広告事業者や広告代理店に対する広告出稿停止請求や契約相手の開示請求が認められていないという問題があり、広告収入源を断つことは、海賊版サイト対策に有効な手段となり得るため、この点の立法も速やかに検討されることを願っています。

 そして、万が一にも、ブロッキングが法制度化されるのであれば、防弾ホスティングやダークウェブ等によっても権利侵害が十分可能で、現行法では極めて対策困難な、名誉毀損やプライバシー侵害などの権利侵害の救済についても、ブロッキングが認められることを期待します。

以上

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