弁護士の専門性
大阪弁護士会が会員の専門性を審査して登録し、ホームページで検索できるサービスを2019年度から始めるという報道を見た。
実は、大阪弁護士会には、自己申告の「重点取扱分野」というのがある。
これはあくまでも、自己申告の制度である。これで十分と思うのであるが、やたら意識の高い弁護士会はこれに不満なようで、客観性あるもので弁護士をオーソライズしようというのが今回の趣旨のようである。
報道を見ると、当面は「労働」、「交通事故」、「離婚」、「遺言・相続」について、指定した研修を3つ以上受講したうえで、実務経験が3件以上あるものを登録する予定だそうである。
ただ、労働、交通事故、離婚、遺言・相続は、専門分野とは思われていない分野である。これらの研修が実施されると、普通の若手の先生と普通の年配の先生でいつも溢れんばかりである。普通の弁護士を数年やっていれば、この手の事件を3件やってないというのは考えにくいので、まともに弁護士をやっていればめでたくみんな専門弁護士の仲間入りである。
これを専門の粗製濫造以外の言葉で表現する術を私は知らない。
10年くらい前から、一般の方と話しをすると「先生は何が専門ですか?」「専門の先生を紹介して欲しい」というのを聞く、しかし、その話を掘り下げると、本音は、弁護士が大量増員になって質の差があるので、弁護士の中でも勝てる可能性の高い先生を紹介して欲しいというものであることが多い。
しかし、弁護士会が提供しようとするのは、わずか数回の研修受講と数回の実務経験である。しかも、「専門」と言う文言は優良誤認になりかねないので、「分野別登録制度」となるらしい。
市民のニーズに応えて、その分野における造詣の深さを開示することを目的にした制度の割には、市民の欲しい「専門」とはずいぶんかけ離れた制度である。弁護士会の偉い人に途中で引き返す勇気や少しでも勉強する勇気は無かったのだろうか?ガッツフィーリングでやってみるのは良いことだで、ホームページの改修などの金がかかると思うとやるせない。
そもそも、弁護士会が、専門性を判断すること自体おこがましくないか??
私は、人に恥ずかしげも無く「専門」と言えるだけの分野がある。サイバー法だけではない。しかし、それを弁護士会が判断出来る日はこないだろう。
そういうものが「専門」である。
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