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2020/05/27

2020/05/27

花は咲く。きっと。

本日、巨大IT企業規制法が成立したようである。

共同通信

日本が、海外のITサービスに席巻されてから久しい。

ところで、某女性がSNSでの誹謗中傷を苦に自殺したということが報道されてから、高市早苗大臣もSNS上で他者を誹謗(ひぼう)中傷するなどした悪質な投稿者を特定しやすくする方策を検討していると発言するなど、ネットでの誹謗中傷対策を求める声が沸いているようである。

確かに、ITは一般の人の情報発信が可能となった反面、悪意ある発言も本人に届きやすくなっている。

ダルビッシュ曰くこんな感じだそうである。確かに、有名人は特に大変だと思う。

 

 

で、我が国で発信者情報を認めているのは「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」いわゆる「プロバイダ責任制限法」4条1項に基づく発信者情報開示請求だけである。

で、このプロ責であるが、お世辞にも使い勝手はよくない。

日弁連でも、

2011年6月30日付『「プロバイダ責任制限法検証に関する提言(案)」に対する意見』

2013年11月6日付「プロバイダ責任制限法改正についての要望書」

消費者問題の救済に関してではあるが2010年11月16日付「消費者の救済のための発信者情報開示制度に関する意見書」

とことあることに問題点を指摘し、

2011年には、私が、直接、プロバイダ責任制限法検討WGで、やんわりとではなく、その出来の悪さを指摘したが、通信の秘密の守株をドグマとする総務省はガン無視で、私達を開示村の一部の意見と蔑み、省令の小改正に留めてきた。

そんなことを言っているうちにも、海外法人相手の手続きを要することが増えて、被害救済へのハードルは年々高まっているのである。

現在、総務省は、発信者情報開示の在り方に関する研究会を開催している。

しかし、伝え聞くところによると、総務省はまた、省令の小変更で終わらそうとしているようである。

今、必要なのは、ネットの匿名性を尊重しつつ、違法な行為については、速やかに本人を特定する手段である。もともと出来の悪いプロ責法は今大きく軋んでいる。

願わくば、今回の件が教訓となって、誰もネットでの中傷を苦に死ぬことのない法制度へと、花を咲かすように。

 

ところで、本件以降、SNSや動画共有サイト等でネットの誹謗中傷対策を宣伝する弁護士が増えたような気がする。

彼らのほとんどを私は知らない。そして、発信者情報開示への道は過払いのように誰でも飛ばせる舗装道路ではない。

パチモンではなく、この分野の経験ある本物の弁護士に依頼することをお勧めしたい。

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LIBRA2019年12月号より

LIBRAとは、東京弁護士会の発行している会報である。

インターネットでも公開しているので読める。

その中で「インタビュー岡部喜代子さん」という記事を見つけた(ずいぶん前に)。

岡部元最高裁裁判官に対するインタビューで、Winny事件に触れられていた。

──最高裁判事の立場からみて,弁護士の活動で良い印象が残ったものはありますか。

そうですね,Winny事件というのを担当しました。「Winny」って当時としてはかなり最先端のIT技術でしょう。私は初め分からなかった。これはどうしようかなと思って記録をずっと読んでいったら下級審で証人尋問をしていた。「Winny」の中身というか,どういう技術なのかということについて専門家を呼んで弁護人が尋問しているのですが,その尋問がすごく良くできていて,私みたいな人にも,「Winny」たるものは何なのか,どういう技術でどれだけ大事なのかということが本当に読んでいたら分かってきました。裁判官がどこを疑問に思うのかということを理解しているのだと思いました。

下級審での専門家証人は複数おり、私が主担当をした証人か副担当をした証人かはわからないが、読んでてが恥ずかしくなるくらいのえらいお褒めをいただいたようである。

専門家証人は、いずれも、小説に載っているので興味がある方はどうぞ。

じゃあ、なんであの基準?というのは置いておいて、技術立証におけるスコープは非常に難しかった。

弁護団の中には、裁判所はITを知らないのでIPアドレスの用語の説明を説明するべきだという者もいたが、時間の無駄だしIPアドレスを理解してもWinnyを理解したことにはならないし、本当に伝えるべきことがぼやけるのでやらなかった。

岡部裁判官がよく分かったとおっしゃってるのを見るかぎり、この戦略は成功したということなのであろう。

ただ、私は、当時、団長が理解していることは、裁判所も理解できるはずなのでやらない。それ以上に立証を絞る。という不遜にも程があることを言っていたので読んでいて複雑な気持ちである。

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CG児童ポルノ事件最高裁決定

報告が遅れて申し訳ない。

そして、支援者の皆様には力不足をお詫びする次第である。

自ら作成した、少女の裸体に似たCGが児童ポルノの作成罪に該当するかについて、最高裁は一部有罪(一部無罪)とした東京高裁判決を支持して上告を棄却した。

裁判の詳細は裁判所のホームページで公開されているから興味があれば確認されたい。

児童ポルノ禁止法は、児童の保護を目的としているのであるから、作成時に児童で無いものは含まれないという弁護側の主張に対しては

同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であることを要しないというべきである。

と判断したが、なぜ、必要でないかについては多数意見は言及していない。

東京高裁は、社会的法益侵害を理由にした(ホームページ

現に児童の権利を侵害する行為のみならず,児童を性欲の対象としてとらえる社会的風潮が広がるのを防ぐことにより,将来にわたって児童に対する性的搾取ないし性的虐待を防ぐことが要請されるというべきである。この意味において,同法の規制の趣旨及び目的には,社会的法益の保護も含まれるといえるのであって,所論がいうように,純然たる児童の権利保護のみを目的とするものとみるのは相当でないといわざるを得ない。

児童ポルノ法施行以前に実在した児童を描いた場合には,児童ポルノとして児童の権利が侵害されたことはないものの,児童を性欲の対象とする風潮を助長し,児童の性的搾取及び性的虐待につながる危険性を有するという点では,①の場合と同様であるから,やはり,児童ポルノとして処罰の対象となり得ると解すべきである。このような行為を処罰の対象とすることは,前記の児童ポルノ法の目的及び趣旨に沿うものというべきであり,当該画像の製造の時点,あるいは,児童ポルノ法施行の時点で,その被写体が18歳以上であることは,児童ポルノへの該当性を否定する事由となるものではない。

しかし、児童ポルノ禁止法はあきらかに実在する児童の保護のみを目的としている。

児童ポルノ禁止法

第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を規制し、及びこれらの行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

第三条 この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。(平成26年改正)

さすがに、高裁の様に社会的法益を正面から出すのは不可能と考えたのだろうか、最高裁はこの点についての言及はなかった。

ただ、山口裁判官の補足意見が述べられている。

児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化された性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。児童ポルノ法は,このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて,児童の権利の擁護を図ろうとするものである。

要するに、児童ポルノ禁止法は児童からの性的搾取を処罰の根拠としている、本人がたとえ18才になっても、(児童からの性的搾取ではないが)同等の保護に値するべきである。よって、法律が直接規定していなくても、法律が処罰の対象にしていると解するというロジックである。

一件わかったようなロジックであるが、それは、本来の法益法益に該当しないものを、同等の保護に値するという理由で処罰の対象とするものである。結局のところ、社会的法益を保護法益としたことと変わり無く、児童ポルノ禁止法を、ノンリベンジポルノ禁止法、へんな性欲禁止法に魔改造したに等しい。

平成26年改正では、付帯決議で、わざわざ「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと 」と決議されているのであるが、山口裁判官はご理解されておられないか、理解して無視したようである。しかし、最高裁の役隈は、立法府の立法意思を無視して法を拡大解釈することではないはずである。

というより、このような愚かな補足意見といい、大崎事件のトンデモ決定といい、あれが、刑法学者として輝かしい経歴をお持ちの山口厚先生とは思いがたい。

おそらく、山口厚先生のそっくりさんであろう。

 

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