RTの違法性
誰かの写真をリツイートしたものは、著作権侵害なのだろうか?
この問題について、最高裁が判断をした
最三判令和2年7月21日
最高裁の判断は著作権法19条1項の氏名表示権(著作者人格権)を侵害するというものであった。
第十九条 著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、その実名若しくは変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
リツイートは、写真そのものを公衆送信するわけではないので、裁判では、リツイートが著作物の公衆への提供に該当するのかが争点となった。
裁判所は
同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。
と判断した。
また、クリックすれば元画像が見れるので、リツイートでも氏名は表示しているという主張については、
本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって,本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。
と判断した。
この判断には、多数意見の他、戸倉三郎裁判官の補足意見の他、林景一裁判官の反対意見がある。
2人の裁判官ネット社会に対する考え方が良く出ているので是非読んでいただきたい。
で、私的には、リツイートに対しても発信者情報開示請求できるようにするべきと思っているが、この最高裁判決に対しては否定的である。
著作者人格権が焼け太りしすぎだからである。
著作権は、これまで、カラオケ法理等で不明確に保護の範囲を広げてきた。さらに氏名表示権まで広げることはあるまい。
「リツイートが人格権侵害?えらいナイーブな著作者ですな。」である。
で、著作権法は、著作者人格権侵害についても刑罰を定めている。
第百十九条
1 省略
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(省略)
これを前提にすれば、リツイートしたら、京都府警がタイーホなんてことになりかねない。
おまけにWinny最高裁判決の例外性の基準であれば、ジャック・ドーシーはほう助が成立しかねない。
著作権の問題は、民事上の侵害行為のほとんどを刑事罰の対象にしているという法律の作り上、常に、民事上のバランス論だけではなく、刑事罰についても考えなければならない。しかし、そのことを理解している者は少ない。
最高裁判決が刑事罰に配慮した痕跡は皆無である。
そして、リツイートの際、著作者名の表示や著作者の同意等に関する確認を「現行著作権法下で著作者の権利を侵害しないために必要とされる配慮に当然に伴う負担である」と曰う戸倉裁判官は決して良くない意味で期待外れ感満載である。
岡口裁判官の件で、Twitter嫌いになったのかな?