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2023/09/13

記者会見のセオリー

※この記事は、あくまでも緊急記者会見を実施する側の視点のみで書いたものです。被害者の気持ちとか、ファンの気持ちとか、タレントの立場とかを重視する方は読まないでください。



先日、ジャニーズ事務所が、性被害に関連して記者会見を開いた。

 

記者会見の様子はYoutubeで配信されていて、今でも見れるようである。

 

 

 

私は、記者会見にはうるさく、弁護士向けのPR実務入門なんて本まで書いている。

 

今回は、この本に沿って、記者会見を総括してみたい。

1 会場の設営

 関係者とプレスの入口を分けるとか、カメラ席を後ろに記者席を前に設置すなど、記者会見のセオリーをキッチリ守っている。

 FTIコンサルティングが入っているだけに当然と言えば当然かもしれない。

 

2 服装ついて

 記者会見の記事とかで自称専門家は服装を問題にすることが多いが、服装はそれほど気にしなくて良い。

 気にしすぎて、全く同じ格好の者が揃って滑稽な風景になることがある。今回は、東山氏と井ノ原氏が微妙に色違いの違うスーツを着ており、むしろ自然であった。これは芸能人としての矜持か?

 記者会見では高価な装飾品は御法度とされており、東山氏のつけていた腕時計のお値段がすこし気になった。しかし、私には値段が解らない。


3 お辞儀

 入場の又は挨拶の際には、45度のお辞儀をするというのがセオリーであるが、良く出来ていた。

 ちなみに、素人はスッと立つのも難しいのであるが、そこは芸能人である。

 

4 話し方

 東山氏のしゃべり方と使う用語が少し芝居がかってたこと以外は、話をする速さも、滑舌も問題無い。

 素人だと、えーとかが多いのであるが、そういうことも無かった。さすが芸能人である。

 ただ、当初、喜多川、藤島だったのが、途中でジャニー、ジュリーになったのは、緊張が解けたからだろうか。

 

5 話す内容

 細かいところを言っても仕方ないので、

 自身の性加害も報道されている東山氏が、その点を聞かれて、変遷して、曖昧な回答に終始したのが気になった。

 こういうのは真っ先に想定質問に入れて練習しておくことである。

 次に、記者会見に同席した弁護士が、「以後の記者会見は考えていません」と言ったのが気になった。

 この発言は不誠実な印象を与えるのでNGワードである。

 予定して無くても「今後、必要が生じれば、ご説明の場を設けます」と脊髄反射で答えるのがセオリーである。

 

6 その他

 記者会見4時間は長すぎる。長ければ誠実と言うわけでは無い。

 

 以上を見ると、記者会見としては良くできていたと私が言っていると思われるかもしれない。でも決してそうではない。

  

 私には、記者会見に際して最も重要な獲得目標と防御ラインの設定が気になった。

 獲得目標と防御ラインの設定は弁護士用語であるが、なんとなく解るだろうから今回は説明を省略する。

 防御ラインであるが、喜多川氏による性加害を黙認していなかったかという点について、

 「暴露本をみてうわさとしては聞いてたけど、聞けなかった」

 と口を揃えて言っていたので、そこに設定したのであろう。

 ただ、そうすると従前の「しらなかったんです」の藤島氏の動画からの変遷の理由が気になるし、裁判で性加害を認定されていることまでうわさというのは通じないところで、その整合性が気になるところである。

 これらの点について記者会見では合理的な説明はされていない。

 この点は、回答によっては、性加害を肯定していたととられかねない箇所であり、獲得目標とも関連するところであるが、防御ラインの設定が適切なのか気になるところである。

 

 次に、獲得目標であるが、こういう記者会見では、取引先や顧客の納得と取引の維持等に設定されることが多い。

 確かに、テレビや一部の雑誌などから、反省の姿勢が見えた等の報道がなされており、報道のタイミングと内容からメディアとの下交渉があったと感じた。さすが、テレビに強いジャニーズである。

 しかし、現在、ジャニーズ事務所所属のタレントを広告に起用することの見直す企業が連日報道されている状況であり、雪崩状態である。

 広告起用を見直す企業の多くは、同事務所の改革や再発防止の取り組みが不十分であることを指摘している。

 実は、今回の記者会見でジャニーズ事務所が示したのは、藤島氏の代表取締役継続、藤島氏の100%株主継続、ジャニーズの社名継続、タレントの移籍無し、企業の営業自粛無しの、まさかのゼロ回答である。これで取引先に納得してもらうのは難しいと感じていたところである。

 グルーミングカンパニーをスポンサードする会社ととられることはそれ自体企業にとってのリスクなのである。企業にとって、特に、海外に展開する企業にとって、この記者会見がどう理解されたのかは明らかであろう。

 もし、関係者がこの点を十分考えた上で、そういう企業には我が社の音楽は必要無いと考えていたのであれば、私は考えられない潔さである。

 

 以上が今回の記者会見の総括である。

 今回の記事を見て、戦略的思考に基づくPR活動に興味をもったお方は・・・・・

弁護士のためのPR(広報)実務入門

弁護士以外の人が読んでも面白いと思うので、ご購入お願いします。。

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