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2024/06/17

2024/06/17

てんプラ対策法

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案が5月24日に可決成立した。

今回の改正は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」から「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」に名前が変わるらしい。

改正前は「プロバイダ責任制限法」というのは法律名からなんとなくわからないではないが、今回は通称が「情報流通プラットフォーム対処法」「情プラ法」になるらしいが、どこからプラットフォームという用語が導かれるのかよく分からない。

改正内容であるが、今回も悪名高い「特定電気通信」「明白性」の要件は維持で、削除請求権も見送られている。これで、対処に関する法律というのは、看板に偽りがあるような気がするが、今回は、「大規模特定電気通信役務提供者の義務」が定められたのがウリのようである。

大規模特定電気通信役務提供者というのを定めて、削除申告窓口を公表させたり、削除申し出へ一定期間内に判断・通知をさせたりするらしい。

某社のように、いくら削除申請しても対応しないSNS等に対するカンフル剤にはなるかもしれないが、どれだけ実効性があるかは分からない。

 

ところで、最近SNSで著名人へのなりすました広告による投資詐欺の問題がある。

METAとフェイスブックJAPANを相手取って、前澤友作氏が訴訟提起したというのも話題になっている。

この投資詐欺に関して、総務大臣が情プラ法が施行されたら一定の効果が期待できると答弁している記事を見た。

しかし、プロ責法も情プラ法も「特定電気通信」によって「直接」被害が生じた事案に対象が限定されており、詐欺被害には使えない。

これは、平成23年の総務省の「プロバイダ責任制限法検証WG」が「プロバイダ責任制限法検証WG提言」で明確にしているところである(14頁以下参照)。そもそも、プロバイダ責任制限法WGで詐欺事案にも対応出来るようにするべきだと述べて、総務省から塩対応を受けたのは他ならぬ私なのである。


今回の総務省の説明は、よくある投資詐欺の事案は著名人の肖像権やパブリシティの侵害になるので、これらの著名人が頻繁に削除請求すれば、SNSも広告をテイクダウンしなければならなくなるという理屈の様である。

ただ、著名人が常時広告を監視して削除請求するというのは非現実的であり効果は期待できないし、そもそも、著名人の肖像等をつかわなければ情プラ法は打つ手なしである。。

投資詐欺の対策に対して、総務省が詐欺のような対策の説明をしているのは、悪い冗談でしかない。

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